Amazonは、TikTokのバイラル性に傾倒している。今年4月、同社は「Internet Famous: The Latest To Go Viral(インターネットの有名品:最新のバイラル、の意)」と名付けた新たなコレクションを公開した。これにTikTokの名はないが、TikTokを参照したことは明らかだ。
Amazonは、TikTokのバイラル能力に傾倒している。
今年4月、同社は「Internet Famous: The Latest To Go Viral(インターネットの有名品:最新のバイラル、の意)」と名付けた新たな商品コレクションを導入した。同コレクションには、ポータブルカーペットクリーナーやフットピーリングマスクなど、最近TikTokで数百万もの再生回数を獲得した数十の商品が並んでいる。サイト上にTikTokの名は出していないが、AmazonがTikTokから集めてきたことは(外見的にも、品揃えからも)明らかだ。
この新コレクションは、TikTokが有力な商品発見チャネルになった事実を示す、さらなる重要証拠でもある。この1年余り、TikTokインフルエンサーは強大な商品推薦帝国を築いており、主に型に囚われない、斬新な商品を宣伝する動画を撮り、アフィリエイトリンクを通じてコミッションを手にしている。最近ではたとえば、ダッシュ(Dash)のワッフルメーカーやジ・オーディナリー(The Ordinary)のピーリング美容液(どちらもAmazonの新コレクションに含まれている)といった商品がバイラルになり、大いに注目を集めた。「あれはTikTokで売れ切れて、マーケター勢に『これはすごい、私らもやらないと』と思わせた最初の商品群のひとつだ」と、インフルエンサーマーケティングプラットフォーム、ステタスフフィア(Statusphere)を率いるクリステン・ワイリー氏はジ・オーディナリーについて語る。
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TikTokの販売能力を認めた証
TikTokは、急増する同アプリ利用者のAmazonにおける商品発見ツールになったわけだが、両者のこの新たな関係はこれまで、場当たり的なものだった。だがこのたび、TikTokでバイラルとなった商品をキュレートしたということは、AmazonがTikTokのリテールセールス促進力を、なかでも斬新とされる商品の売上増進力を、はっきり認めたということだ。
「TikTokがいわば購入窓口として多大な影響力を持っていることに、ブランド勢は気づき始めていると思う」と、Amazonのブランドマネジメント会社クイヴェア(Quiverr)の従業員で、TikTokで積極的に商品を勧めるひとり、ライアン・マルヴァニー氏は指摘する。そしてAmazonがTikTokの実力を認めたことで、たとえ後者の名前が明言されていなくとも、この流れはさらに加速する可能性があると、氏は言い添える。
Prime VideoおよびPrime Studentなどの広告をTikTokへ出稿はしているものの、Amazonはこの新しいソーシャルプラットフォームについて基本的に静観姿勢を取ってきた(対照的に、米小売大手ウォルマート[Walmart]はすでにTikTokでライブショッピングイベントを2回開催しており、昨秋には後者の買収まで試みている)。Amazonは実際、自社インフルエンサープログラムにTikTokを取り込んでさえいない。
ただ、距離を置いているからといって、AmazonにTikTokの影響が及んでいないわけではない。今年の1月と2月、Amazonにおける検索回数最上位のひとつは「TikTok レギンス」だった――これは、TikTokでのトレンドがAmazonの売上増へと転化を始めたことの兆候にほかならない。
両社の本格的な提携の第一歩
今回の「Internet Famous」コレクションは、Amazonが直接、TikTokのバイラルが生むエネルギーを取り込むための一助になるだろう。ワイリー氏によれば、TikTokでバイラルになる商品は少なくない数のコンバージョンを生んでいる(同氏のクライアント勢のウェブサイトでは、TikTokキャンペーン後、トラフィックに「有意な急増」が見られたという)。その一方、その場で購入はせず、バイラル動画をスワイプするだけの人もいまだ数十万単位でいる。そして、そんなユーザーこそ、このコレクションの最大のターゲットになると、ワイリー氏は言い添える。TikTokでバイラルになったワッフルメーカーの動画を何度か見たことのある人は、Amazonでそれを見かけたら、喜んで買う可能性が低くない、というのが同氏の理論だ。
ただ、目下のところ、TikTok由来のコレクションは象徴的なものでしかなく、TikTokに対するAmazonの姿勢に根本的な変化は見られない。また、Amazonが5月第4週の後半にホームページのバナーで同コレクションを宣伝したのは確かだが、その売上が最終的にどの程度まで行くのかは、現段階では何とも言えない。
実際、Amazonは近年、ほかにもショッピングコレクションを積極的にキュレートしており、Amazon自身が収集したものもあれば、スモールビジネスによるものもある。マルヴァニー氏いわく、自身の経験上、Amazonの商品コレクションはトラフィック数に大きなばらつきがあるという。「数字はかなり上下する」し、たとえば「(米国の人気テレビ番組で司会者兼プロデューサーを務める)オプラ・ウィンフリーのほしい物リストに商品が入っていれば、それこそ完売必至だ」と断言する。言い換えれば、すべてのコレクションが巨額の売上に繋がるわけではない、ということになる。「Amazonには常に、相当数のリストが掲載されている」。
マルヴァニー氏は今回の動きを、AmazonとTikTokとの本格的提携の第一歩と見ている。「AmazonはTikTokの実力を試しているし、広告も打っているわけで、僕としてはワクワクする。TikTokが[この先]強力なショッピングチャンネルになり得ることに、Amazonは気づいていると思う」。
[原文:Amazon is trying to cash in on viral TikToks]
Michael Waters(翻訳:SI Japan、編集:長田真)