今週は「Amazonの広告事業が、GoogleとFacebookの脅威になるか」だ。今週、米YahooとAOLの合併後の名前が「Oath」になり、収益では3位のプレイヤーになろうとしているが、Amazonは「GoogleやFacebookがもっていないものをもっている」のだ。
今週のトピックは「Amazonの広告事業が、GoogleとFacebookの脅威になるか」だ。米YahooとAOLの合併後の名前が「オース(Oath)」になると今週明らかにされた。オースは収益では3位のプレイヤーになるが、Amazonは「GoogleやFacebookがもっていないものをもっている」。
Googleは検索広告の強みについて、人々のインテント(意図)をとらえられると説明する。Facebookはその強みをデモグラフィック(属性)に基いたデバイスをまたいだターゲティングと説明する。 Amazonは「人がいつ何を買ったか」「どれくらいの頻度で買ったか」という重要なデータを集めている。
Amazonは20年間消費者の購買データを蓄積してきた。決済プラットフォームも提供しており、そこでも購買データがとれる。このデータをもとに魅力的な広告商品を生み出せる可能性がある。
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BUISNESS INSIDERによると、モルガン・スタンレーはAmazonの広告事業は2016〜2018年間で年平均37%で成長し、50億ドル規模になると予測。2020年には米デジタル市場シェアはGoogle41%(検索32%+YouTube9%)、Facebook32%に次ぐ、3位の4%になると、モルガン・スタンレーは予想する。
広告と販売手数料のバランス
アリババはひとつのモデルだ。アリババは販売手数料をぎりぎりまで減らし、サイト内検索広告、ディスプレイ広告などの広告収入に依存していた。eMarketerによると、アリババはeコマース事業者ながら、中国のデジタル広告収益の首位(2016年:予測値)。Googleに当たるバイドゥ、Facebookに当たるテンセントを上回っている。アリババでは一時、マーチャントの広告費が膨れ上がり、黒字のマーチャントが少数になったようだ(参考記事:FT-日経)。
マーチャントから広告収益を「徴収」する形での発展は、マーチャントから活発に取引する意欲を奪う可能性があり、闇雲にできない。いまやベイス(Base)のように誰でもECサイトを作成できるサービスがある。また、マーチャントが広告コストを販売価格に転嫁する状況も避けたいだろう。
Amazonにはプライムビデオ、プライムミュージック、Kindleなどの豊富なメディアがあり、Fireタブレット、Amazonエコーというデバイスもある。音声認識プラットフォームAlexaにも広告事業の可能性がある。Amazonは今週もアメフトの配信権を獲得したが、ストリーミングテレビ参入は常に噂されている。
ECや旅券・ホテルサイト / アプリでの検索という消費者行動が注目されている。効果的な製品があればGoogleの検索広告の牙城に挑戦するチャンスがある。
検索・ディスプレイで存在感
「Amazon Publisher Services」はヘッダー入札にも参入した。Facebookオーディエンスネットワークが複数のアドテクパートナーとヘッダー入札に参画した際には、パートナーに名前を連ねており、パブリッシャーパートナーにはジェフ・ベゾス氏が保有するワシントンポストが加わっている。
Googleのディスプレイ広告の牙城に食い込もうとしているように見える。この近辺や、デマンド側の「Amazon Advertising Platform」で、新しいプロダクトを開発していると噂されており、次の動きに注目だ。
以下今週のほかのトピック。
▼YahooとAOLの合併後の名称は「Oath」
ベライゾンが買収する米Yahooと、ベライゾン傘下のAOLが合併後の名称が「Oath」になると、AOL CEOティム・アームストロング氏が明らかにした。OathはYahoo、 AOL、 ハフィントンポスト、TechCrunch、 Engadgetなどの運営と広告配信を行うことになりそうだ。
Billion+ Consumers, 20+ Brands, Unstoppable Team. #TakeTheOath. Summer 2017. pic.twitter.com/tM3Ac1Wi36
— Tim Armstrong (@timarmstrongaol) April 3, 2017
▼YouTube ストリーミングTVを開始
YouTubeは「YouTube TV」をニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコで開始。50チャンネル以上、月額35ドルで、デジタルデバイスによる視聴が可能。
▼東南アジア広告プラットフォーム「AdAsia」が約13.6億円を調達
日本人アドテクチーム。AdAsiaではソーシャル、検索、DoubleClick、Facebook広告、リアルタイム入札(RTB)を一括で管理できる広告プラットフォームを提供。The Trade Deskの東南アジア版。
▼Amazonが今季のNFLストリーム権落札
Amazonが米国の超人気コンテンツであるNFLの「サーズデイナイトフットボール」のライブストリーム権を落札。昨年はTwitterが10ゲームを配信。AmazonはTwitterの5倍の5000万ドル(約55億円)を付けたと言われる。
▼WhatsAppがインドでモバイル決済開始
Facebook傘下のワッツアップ(WhatsApp)はインドでモバイル決済サービスを開始する。先行するアリババ出資のPaytmとの対決。WhatsAppの10億ユーザーの多くは新興国にあり、インドの後は他国にもサービス展開する可能性がある。
▼ビッグカメラがビットコイン決済
家電量販大手のビックカメラは5日、東京都内の一部店舗でビットコインでの支払いができるようになると発表した。ビットコイン取引所の「ビットフライヤー」がソリューション提供する。
▼日本にも最高デザイン責任者を
グッドパッチ代表取締役の土屋尚史氏。「日本企業は現状デザイン投資に対して欧米企業ほど熱心ではない。Appleを見習い、取締役会にCDO(最高デザイン責任者)を置くべき」。
Written by 吉田拓史
Photograph by GettyImage