[ DIGIDAY+ 限定記事 ]2年前にはじまったAmazonのインフルエンサープログラムは、いまだに成果を出せていないと、関係者は述べている。Amazonはこれまで、このプログラムについてほとんど言及していない。しかし、インフルエンサー数人は、プログラムへの参加を求められる人がここ数カ月で増えていると、人づてに聞いたという。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]2年前にはじまったAmazonのインフルエンサープログラムは、いまだに期待に沿った成果を出せていないと、ブランドやエージェンシー、インフルエンサーは述べている。
ほとんどの人はこのプログラムについて知らない。このプログラムは、有名人やマイクロインフルエンサー、そして場合によっては、中規模のフォロワーを有する一般人を、Amazon.com/shopのURLを持つ独自ページに登録するよう招待しているものだ。それらの人々は、おすすめ商品のリストをキュレートでき、それらのリストのリンクがAmazonのエコシステム内に張られる。「Stores」と呼ばれるこのプログラムは、アフィリエイトプログラムの機能を果たし、誰かがそうしたリンクを介してAmazonで商品を購入すると、インフルエンサーに報酬が入る。
Amazonはこれまで、このプログラムについてほとんど言及していない。この記事のためにDIGIDAYがインタビューしたインフルエンサー数人は、プログラムへの参加を求められる人がここ数カ月で増えていると、人づてに聞いたと語った。Business Insider(ビジネスインサイダー)の最近の記事では、プログラムへの参加を求められたことがあると述べる人々のソーシャルメディアへの投稿が増えていると言及している。
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普及していない理由
だが概して、このプログラムは、衣服であれテクノロジー機器であれ、Amazonが取り扱っているもののなかで、自ら使用している製品のリストを人々が作成し、紹介する方法になってきた。インフルエンサーは固定手数料ベースで報酬を受け取り、売り上げから取り分を得る。ブランドとエージェンシーのバイヤーが興味を抱いているのは、Amazonは望めば、これを強力なプログラムにできるからだ。マーケットプレイスが保有する信じられないほどの量のデータを、インフルエンサープログラムがもたらすリンクと直接結びつければ、これを真の機会にすることができる。
だが、故意か偶然か、そうなっていない。理由はさまざまだ。Amazonがプログラムについてほとんど黙っているので、多くの人に知られていないから。レポーティングの問題があり、インフルエンサーに返されるパフォーマンスに関するデータが、まだかなり乏しいから。それに全体的に、ブランドがどのような形で直接的に連携できるのか、少なくともいまのところはあまり明快ではないからと、いろいろ考えられる。
360iのインフルエンサーマーケティング担当責任者であるコリー・マーティン氏は、「インフルエンサーコマース」がインフルエンサーマーケティングの進化における次の大きな局面であり続けているため、Amazonの牽引力は失われていないという。「Amazonはそのために重要な役割をもっているが、まだその役割を果たせていない。だから私は、クライアントにそれを利用するよう推薦はしていない。まだ、それがたくさんのキャンペーンに織り込まれていないように見えるからだ」と、彼は語る。「その理由は、ブランドのニーズではなく、インフルエンサー自身の経済的ニーズに応えて進化しているからだ」。
インフルエンサーは、ブランドにとってリテーラーも兼ねていることが多く、インフルエンサーがAmazonを小売プラットフォームとして利用するところを見てみたいと、マーティン氏は語る。「直販に関して小売プラットフォームが作られる必要がある」。
インフルエンサーの声
インフルエンサープログラムに参加しているビンチェンツォ・ランディーノ氏は、プログラムでの全体的な体験はかなり有益だったと述べている。「何でも試してみたい」と、プログラムを利用して使用している機器へのリンクを張っている動画制作者の同氏はいう。「Amazonのリンクを人々に送るときに、強い影響力がある。自分をより良く見せ、Amazonのインフルエンサーだと人々にわからせることができる」。
ランディーノ氏は、プログラムにより、リンクを通じてAmazonで購入する人々から、月に約1000ドルを稼いでいる(手数料率はカテゴリーによって異なるが1~10%)。彼はまた、Amazonの独自商品についてのボタンを投稿することで取り分を得ることができる「報奨金(Bounty)」プログラムを通じて、収益の一部を得ている。現在は、「Amazonビジネスに登録(Sign up for Amazon Business)」ボタンを設けており、誰かが登録すれば15ドル稼げるという。「Amazonプライムパントリー(Amazon Prime Pantry)」「Amazonフレッシュ(Amazon Fresh)」「Twitch(ツイッチ)」、そしてAmazonプライムの30日間の無料体験といったほかのサービスに登録した場合は、3ドルの支払いとなる。
インフルエンサーには、Amazonギフト券か口座振り込みで支払われる(代わりに小切手を希望すると手数料が掛かる)。
Amazonは、データについてはあまり出しておらず、ダッシュボードはクリック回数やコンバージョン率、総収入を含むアフィリエイトとStoresのデータの両方を抽出している。
プログラムの問題点
「ミレニアル世代の基調演説者」で、iソーシャルファンズ(iSocialFanz)という企業の創業者、ブライアン・ファンゾ氏は、2年前からAmazonのインフルエンサーで、主にビデオカメラや三脚のような、自身が使用している機器の推奨や宣伝を行ってきた。「製品を利用している理由を共有できる本物の場ではなく、製品遊びのような感じだ。とても商業的であるように思える」。
ランディーノ氏と同様に、ファンゾ氏は、Amazonを利用する権限があるが、約300~500ドルしか稼いでいないと語った。「少し改善されれば、注力して集中できるので、我々にとっては残念だ。レポーティングがまだ不十分だ」。
ファンゾ氏とランディーノ氏はいずれも、自分たちのものと感じられるようにページをカスタマイズできず、ブランドへの売り込みの助けになっていないと指摘した。
「盛り上がらなかった。Amazonはそれでもっと何かできるからこそ、私は失望している」とランディーノ氏はいう。
この記事について、Amazonはコメントを避けた。
エージェンシーの意見
「これまで市場で多くは目にしていない」と、Amazon広告でブランドと仕事をしているマーケットプレイス・イグニション(Marketplace Ignition)のCEO、エリック・ヘラー氏はいう。「Amazonの最強のプログラムは、流れの中心にもっとも近いプログラムというのが私の意見だ。弾み車を大きくし、人々の買い物方法を強化するプログラムだ」。
一部のインフルエンサーエージェンシーはAmazonのインフルエンサーと提携しているが、全体的には取引が低迷していると、インフルエンサーマーケティングエージェンシー、コレクティブリー(Collectively)の創業者であるアレクサ・ トーナー氏は語る。
「基本的にはアフィリエイトプログラムだが、個々の商品にリンクを張るのではなく、おすすめ商品すべてが記載されているランディングページを用意できる」と、トーナー氏はいう。「インフルエンサーはたいてい個々の商品にリンクを張るので、フォロワーが購入しやすい。だから、ランディングページが実際に何をもたらしているのかわからない。Amazonはそれがメリットだというが、商品とAmazonサイトへの露出度が高くなって、Amazonに最大の利益をもたらしているように思える」。
中間層のインフルエンサー向け?
インフルエンサープログラムには、実業者のマーク・キューバン氏のような有名人など、大物も参加している。だが、このプログラムは、有名人ではない中間層のインフルエンサーにとって、収入を増やせる素晴らしいアドオンだ。ソーシャルメディアのおかげで成長してきた彼らは、たいていファッションやフィットネスのような特定カテゴリーを扱っている。
360iでeコマースを率いるウィル・マーガリティス氏によると、このプログラムは「Amazon Spark」を思い出させるという。Amazon Sparkは、プライム会員だけに公開される写真のソーシャルフィードで、おおかたの推測では失敗作だった。
「Amazonは、データの共有については一般に非常に用心深くて保守的なので、Amazonにとってこれが大事なものではなかった理由がわかる。プログラムの存在を知らないAmazon関係者と話したことがある」と、マーガリティス氏は語った。
Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)