米国Amazonでは、6月から出品者が批判的なレビュー に対応するための新機能が追加されている。商品に星1~3つを付けたレビューに対し、出品者がAmazonの作成したメッセージを送信できるという機能だ。主な目的は、商品自体や配送プロセスで生じた不具合や問題、誤解を解決することにある。
米国Amazonでは、6月から出品者が批判的なレビューに対応するための新機能が追加されている。
商品に星1~3つを付けたレビューに対し、出品者がAmazonの作成したメッセージを送信できるという機能だ。主な目的は、商品自体や配送プロセスで生じた不具合や問題、誤解を解決することにある。出品者からすれば、ユーザーからの批判的なレビューを変える効果も期待できる。
このツールを使えるのは、今のところAmazonブランド登録を利用している出品者限定となっている。登録すれば、Amazonで販売している商品についてより詳細な分析や機能も活用できるようになる。また批判的なレビューに出品者が対応できる機会を与えるというのは、Amazonの戦略の一環だ。Amazonでは一部の出品者がレビュアーに報酬を与えてレビューを操作するという行為を行っており、Amazonはこういった「不正レビュー」の除去に力を入れてきた。批判的なレビューが誤解に基づいているのであれば、その誤解を解くことで、逆に前述のような不正レビューの削減にもつながる。
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ECグロースエージェンシーのベンドゥ(Vendo)でマーケティング担当VPを務めるニコラス・マルティネス氏は、「今回の新機能が普及すれば、ブランド側で問題を解決できるようになる。場合によっては、レビュアーが批判的なレビューを削除したり、星を増やしたりするだろう。それにより商品の評価が底上げされる可能性がある」と話す。「また、ユーザー側からの直接的な連絡に対する反応が鈍いブランドもあるが、そういったブランドに問題を訴える手段としてレビューを利用する機会が増えることも想定される」。
効果的かは、まだ不透明
ただし、今回の新機能が実際にどのくらい効果的かは、まだ不透明だ。というのも、出品者が批判的なレビューに対応しようとしても、Amazonから与えられる権限はあまり多くない。メールでレビュアーに連絡することになるのだが、そのときに使えるのはAmazon側が用意したテンプレートのみとなっている。米DIGIDAYの姉妹サイトのモダンリテール(Modern Retail)は、ある出品者からこのテンプレートのサンプルを入手したが、その内容は「ユーザーに全額返金または交換する」や、「レビュアーが指摘した問題点について出品者に確認する」などのオプションが用意されている具合だった。
Amazonはカスタマーレビューをコントロールしようとさまざまな手法を試みているが、上記もその一環と言える。同社は2021年の春から、中国の300以上の出品者について資格を取り消している。これらの出品者の総売上は10億ドル(約1100億円)を超える。Amazonは、この件についての詳細は公表しないとコメントしている。だが、あるセキュリティ研究グループによると、この措置は「肯定的なレビューと引き換えに金銭的な報酬を提供していることを裏付けるデータベースが流出した直後に」行われたという。よくある手口は(Amazonの利用規約に違反する行為だが)、レビューを書いたユーザーにギフトカードや割引オプションを提供するチラシを商品に同梱するというものだ。
不正レビューの分析を行っているフェイクスポット(Fakespot)のCEO、サイード・カリファ氏は5月、「Amazonサイトは、不正レビューと思われるものの割合が、この1年間で大幅に上昇した」と指摘する。同氏は、2021年5月時点におけるAmazonのレビューの実に約40%が偽物と推定している。これは前年比で3割増だという。
アルゴリズムが一番の課題
この記事を書くにあたってインタビューを行ったある出品者は、「批判的なレビューに対して、直接ユーザーとやり取りすれば解決できるようなものは、ほとんどない」と述べている。ただし、「ユーザーに届いた商品が偽造品と思われる場合や、これまで判明していなかった商品の欠陥と考えられるケースなどには直接連絡を取りたい」としている。しかしながら、Amazonの現在のテンプレートでは、ユーザーからの返信がないことにはその先に進めないという問題があり、解決できるか否かは不明な状況だ。
「このようにレビューへの返信が役立つケースはあるが、ユーザーがそもそも返信しない可能性があるうえ、レビューを変えるというのも現実的には稀だろう」と、この出品者は話す。「この種のやり取りを行ったところで、批判的なレビューを取り下げる人の割合は、せいぜい1割程度ではないか」。
また別にも、この機能が報酬でレビューを書かせるやり口に対して有効な解決ツールと言えない点がある。それはアルゴリズムだ。現在、Amazonのアルゴリズムは商品のレビュー数と星評価を重視している。この構造が変わらない限り、不正レビューの問題が解決に至ることはないだろう。
「Amazonのカスタマーレビューで本当に問題なのは、多数の出品者が堂々と利用規約を破っていることだ。ギフトカードを餌に好意的なレビューを書かせるといった手口が横行しており、我々が訴えたところで何も変わらない。ジャーナリストや有名人が声を上げなければ何もしないのだから」。
[原文:Amazon Briefing: Why Amazon is now letting sellers reply to negative reviews]
Michael Waters(翻訳:SI Japan、編集:長田真)