TikTokのeコマースへの野望がより具体的になりつつある。そしてそれは、Amazon(アマゾン)のような米国のマーケットプレイスのリーダーにとって、大きな変化を意味するかもしれない。
ここ数年、TikTokは主要なソーシャルメディアアプリとしての地位を超え、コマースをけん引する存在となるためのさまざまな方法を試してきた。2021年、TikTokはインフルエンサーがライブストリームでショッピングイベントを行う方法を発表した。フィナンシャル・タイムズ紙によると、2022年初めには、英国やヨーロッパのほかの地域でマーケットプレイスを立ち上げる計画をほのめかしたが、この野望は撤回された。そして昨年11月、TikTokは米国でのショップ機能の展開を静かに開始し、それを支援するために、さまざまな企業に働きかけはじめたと報じられた。そして今、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、米国事業の新たな焦点は、中国のメーカーと提携し、それらの商品を米国の買い物客に発送・販売することだと報じている。この最新機能はTikTokショップ・ショッピングセンター(TikTok Shop Shopping Center)と呼ばれているという。
この最新の開発は、米国の買い物客に中国製品を売り込むアプリを、より正面から狙ったものだと見る向きも多い。eコマース代理店コマースキャナル(Commerce Canal)の創設者であるライアン・クレイバー氏は、これを「ティームー(Temu)、シーイン(Shein)、TikTokのあいだでバトルロワイヤルが始まる」と表現した。そして、米国のeコマース売上をもっとも顕著な原動力であるAmazonは除外されている。eコマースの巨人であるAmazonは、長い間デジタル販売のリーダーである。インサイダー・インテリジェンス社の推計によると、米国人口の61%がプライム・アカウントを持っている。そして現在、ティームー、シーイン、そして最近ではTikTokのような新興企業が、Amazonがまだマスターしていない「ソーシャルコマース」という分野でAmazonに対抗しようとしている。
「Amazonであれ、インスタグラム(Instagram)やメタ(Meta)であれ、米国の誰もが中国のようなソーシャルショッピング・ライブストリームを作ろうとしてきた」とクレイバー氏は述べた。「そして、誰もがかなり大きな失敗をしている」。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトです
TikTokのeコマースへの野望がより具体的になりつつある。そしてそれは、Amazon(アマゾン)のような米国のマーケットプレイスのリーダーにとって、大きな変化を意味するかもしれない。
ここ数年、TikTokは主要なソーシャルメディアアプリとしての地位を超え、コマースをけん引する存在となるためのさまざまな方法を試してきた。2021年、TikTokはインフルエンサーがライブストリームでショッピングイベントを行う方法を発表した。フィナンシャル・タイムズ紙によると、2022年初めには、英国やヨーロッパのほかの地域でマーケットプレイスを立ち上げる計画をほのめかしたが、この野望は撤回された。そして昨年11月、TikTokは米国でのショップ機能の展開を静かに開始し、それを支援するために、さまざまな企業に働きかけはじめたと報じられた。そして今、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、米国事業の新たな焦点は、中国のメーカーと提携し、それらの商品を米国の買い物客に発送・販売することだと報じている。この最新機能はTikTokショップ・ショッピングセンター(TikTok Shop Shopping Center)と呼ばれているという。
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この最新の開発は、米国の買い物客に中国製品を売り込むアプリを、より正面から狙ったものだと見る向きも多い。eコマース代理店コマースキャナル(Commerce Canal)の創設者であるライアン・クレイバー氏は、これを「ティームー(Temu)、シーイン(Shein)、TikTokのあいだでバトルロワイヤルが始まる」と表現した。そして、米国のeコマース売上をもっとも顕著な原動力であるAmazonは除外されている。eコマースの巨人であるAmazonは、長い間デジタル販売のリーダーである。インサイダー・インテリジェンス社の推計によると、米国人口の61%がプライム・アカウントを持っている。そして現在、ティームー、シーイン、そして最近ではTikTokのような新興企業が、Amazonがまだマスターしていない「ソーシャルコマース」という分野でAmazonに対抗しようとしている。
「Amazonであれ、インスタグラム(Instagram)やメタ(Meta)であれ、米国の誰もが中国のようなソーシャルショッピング・ライブストリームを作ろうとしてきた」とクレイバー氏は述べた。「そして、誰もがかなり大きな失敗をしている」。
「ソーシャルコマース」に挑戦してきたAmazon
実際、Amazonは自社のプラットフォームにソーシャル機能を導入しようと何度も試みた。たとえば、2019年には写真共有機能「ポスト(Posts)」を発表したが、これは、「スパークス(Sparks)」と呼ばれる同様のプログラムを試みてから2年後のことだった。直近では、インフルエンサーと協力して、ライブストリーム動画をプッシュしている。実際、今年のプライムデーでは、クリエイターがショッピングのデモを行い、ユーザーを決済ページに誘導するという、TikTokに非常によく似た動画ストリームをアプリで紹介した。
しかし、これらはいずれも実際には主流になっていない。ほとんどの場合、米国では、インフルエンサーがYouTubeまたはTikTokに投稿し、そこからAmazonストアにリンクするというのが、ライブストリーム・コマースの主流の形だ。
しかし、アナリストたちは、最近の新しいコマースプラットフォームの爆発的な増加を受けて、米国のより多くの買い物客がオンラインで商品を購入するための新しい方法を試しはじめるかもしれないと考えている。カンターの北米メディア・ソリューション・リーダーSVPであるジェド・メイヤー氏は、「我々が目にしている大きなテーマは、ブランドがソーシャルメディアとインフルエンサーをどのように使って消費者とつながるか、ということだ」と語る。特に美容分野のブランドの中には、買い物客にソーシャルメディアを通じてオンラインで商品を購入してもらうためのさまざまな方法に取り組んでいる。メイヤー氏は、動画共有アプリをコマースエンジンとしてテストしてきたロレアルのTikTok戦略を例に挙げた。「もしあなたがロレアルの立場であれば、消費者に商品をまず買ってもらいたいと思うだろう」とマイヤーは言う。
TikTokマーケットプレイスの将来性
しかし、内部関係者のなかには、こうした最近の動きにもかかわらず、新規参入企業、特にソーシャル・スペースにおけるコマースの動きは、まだ販売の推進力であると証明されていないという者もいる。たとえばクレイバー氏は、昨年末にリリースされたTikTokショップス版を利用したことがあるという。「我々は、必ずしもTikTokを活用したわけでもなければ、大きなけん引力を見たわけでもない」。
代理店クランチグロース(Crunchgrowth)のCEOであるフィル・マシエロ氏は、新しい試みがうまくいくかどうかは疑わしいと述べた。「TikTokはすでにブランド向けのショッピングプラットフォームを持っていた。それは、悲惨な失敗に終わり、彼らはそれを取り下げた」。
マシエロ氏の考えでは、ここでの大きな問題は、米国の買い物客がソーシャルコマースに慣れていないということだけではない。「TikTokには信頼問題がある」 と同氏は言う。「彼らは娯楽のためにTikTokを訪問する。誰かが商品について話し、顧客がその商品に興味を持ったとき、彼らはウェブサイトでそれを探しに行くかもしれない」。しかし、Amazonで販売し、TikTokのようなソーシャルプラットフォームを活用している同氏のクライアントからは、買い物客がアプリ内での取引を快適に感じるという兆候はまだ見られないという。
TikTokによってバイラルが生まれた商品でさえ、アプリ内では売れなかったとマシエロ氏は言う。同氏は、シェフ・ピー氏が考案して話題をさらった調味料「ピンクソース(Pink Sauce)」を例に挙げ、「人々は彼女のリンクをクリックしなかった。ピンクソースを検索するためにTikTokを離脱してしまった」。
eコマースでは劣勢なのか
このように、TikTokがeコマースでの劣勢を証明するだけの力を持っているかどうかはまだわからない。そして、それは現在の報道よりも時間がかかるかもしれない。米モダンリテールがTikTokのeコマース展開に協力しているという関係者に聞いたところによると、同プラットフォームには解決すべき問題が山積しているため、このプログラムが日の目を見るのはまだ何カ月も先のことだという。
それでも、TikTokにチャンスがあるかもしれないと考える人もいる。「複数の参入企業が、中国から米国への出荷を、持続的に、つまり利益を上げながら行おうとしてきた。そして、いくつかの失敗があった」とクレイバー氏は述べた。そのなかで、もっとも顕著なのがウィッシュ(Wish)だ。「しかし、この最新のバトルロワイヤルを見るならば、TikTokがもっとも有利であると思う」。
[原文:Amazon Briefing: TikTok’s e-commerce ambitions point to U.S. weaknesses]
Cale Guthrie Weissman(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)