Amazonが家具組み立てサービス事業に乗り出そうとしているという話がある。4月第3週のブルームバーグの報道によると、家具を家まで運ぶドライバーがベッドやソファ、洗濯機から食洗器までの組み立て・設置を行う有料オプションを、Amazonが試験的に試しているそうだ。
Amazonが家具の組み立てサービス事業に乗り出そうとしているという話がある。
4月第3週のブルームバーグの報道によると、家具を家まで運ぶドライバーがベッドやソファ、洗濯機から食洗器までの組み立て・設置を行う有料オプションを、Amazonが試験的に試しているそうだ。ドライバーのあいだでは、仕事や研修がさらに増えることを懸念する向きもあるという。しかしそれ以上に、この動きはeコマースの世界で付帯サービスがますます大きな役割を果たしはじめているということを示している。
Amazonは、Amazonホームサービス(Amazon Home Services)を通して、外部業者による家具組み立てサービスをすでに提供している。これは米国の一部の都市で外部契約業者に設置や組み立てなどの作業を依頼できるサービスである。新サービスでは(Amazonが本格的に展開を決めたらではあるが)、このサービスの内製化が進められるものと見られている。以前から宅配時の組み立てサービスを提供し、昨年から家具のオンライン売り上げを急激に伸ばしている、ウェイフェア(Wayfair)やウォルマート(Walmart)などの企業に対抗する動きでもあるようだ。
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組み立てサービスでCVRが向上
ほんの3年前でも、宅配時の付帯サービスはEC企業各社にとってAmazonとの差別化を図る手段だった。ウォルマート、ホーム・デポ、イーベイ(eBay)、ザ・コンテナ・ストア(The Container Store)は、2018年に家具組み立てとテレビなどの家電の設置を含む、各種組み立てサービスを立ち上げている。米DIGIDAYの当時の記事にあるように、これらはAmazonに向かう買い物客を自社に引き寄せようという試みだった。ほとんどの場合、組み立て・設置作業者を派遣するハンディ(Handy)やポーチ(Porch)などの外部契約業者と提携している。主な例外はIKEA(イケア)だ。同社では2017年にタスクラビット(TaskRabbit)を買収し、顧客にサービスを直接提供している。
これらのサービスの多くは、いまや業界では実質的に定番となっている。それどころか、商品に付帯して提供されるサービスの種類はむしろ増え、たとえばウォルマートとAmazonは宅配とガレージへの置き配の両方を提供するほか、ウォルマートでは試験的にクーラーボックスを利用した宅配も行っている。
現時点では「組み立てサービスは小売企業、EC専業企業が競っていくうえで必須のもの」と語るのはポーチの事業開発・経営企画担当バイスプレジデント、ポール・ディロン氏だ。ポーチは、ウォルマート、イーベイ、オーバーストック(Overstock)との提携実績を持つ組み立てサービス企業である。同氏の経験上、組み立てサービスがあるとコンバージョン率が向上するそうだ。
オンラインでの家具販売の躍進
小売に特化した調査会社、RSRリサーチ(RSR Research)の共同創設者ポーラ・ローゼンブラム氏は、組み立てサービス自体はさまざまな形で何十年も前からあるが、家具の購入方法の変化に伴って組み立てサービス企業の株価上昇が見られると語る。組み立て式家具――ばらばらの状態で製造、出荷される家具――は、特に家具業界においてECが台頭するなかで主流になりつつある。ローゼンブラム氏は「できあがった家具を配送するより」、別々の箱で「平たい形状のものを配送した方が安い」と説明する。
同氏は、組み立てサービスの有無で購入先を決める人が少なからずいるのではないかと考えている。これが、ウェイフェアなどAmazonに競合する企業の存在感を後押ししている可能性があるのだ。この現象を示唆する事例もある。IKEAはインドに進出したとき、ハイデラバードだけでフルタイムの組み立て作業員を150人雇った。同社がウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)に語ったところによると、組み立てサービスの有無が購入を決める際の重要な要素であることが調査で示されたという。
一方でAmazonの組み立てサービスは、家具市場の拡大が認識されていることも示している。ここ1年で家具については特にオンライン販売に躍進が見られており、コアサイト(Coresight)によると、全体的に前年に比べ41%と大きく伸びているそうだ。IKEAなどの企業はその伸びをとらえるためにアプリ戦略を刷新し、アウター(Outer)などのスタートアップ企業はその波に乗ろうと投資を行っている。Amazonも、家具に再び焦点を当てることでその波に加わろうとしている。
二次的なおまけのようなもの
「事業のシェアを伸ばしたければ、そのサービスを追加しなければならない。ある意味それだけの話」とローゼンブラム氏は述べる。家具などのECサービスが小売業者にとって魅力的なのは、比較的デメリットが少ないからでもある。同氏によると、家具組み立ては利益率が高い。だが同氏は、追加サービスによる利益が重要ではあるものの、それでも二次的なおまけのようなものだとも付け加えた。「そこでも利益を得られるのなら、それはそれでいいことだ」。
Amazonが本格的に家具組み立てサービスを開始するのであれば、同社は比較的後発組となる。しかも家具組み立てに新たに関心を示しているのは、家具ECの領域で主なライバルであるウェイフェアへの対抗手段であるようだ。2020年、ウェイフェアは顧客数を3120万人へと54%伸ばしている。1010dataから得た数字によると、ウェイフェアは同市場のトッププレイヤーで、家具の全オンライン販売の42%を占める。Amazonは2位で34%(Amazon.comのマーケットプレイスの出店業者は除く)である。
家具組み立てに投資することで、「Amazonは好調なウェイフェアから少しシェアを奪おうとしているだけだと思う」とローゼンブラム氏は見ている。
[原文:Amazon Briefing:The e-commerce services war escalates]
Michael Waters(翻訳:SI Japan、編集:長田真)