Amazonはプライムデーを利用し、お手頃価格の電子機器製品という同社の従来の得意分野を超えた、多岐にわたる自社プライベートブランド商品を売り込んだ。特に今年はペット用品のWag(ワグ)やキッチン用品のPresto(プレスト)など、Amazonのほかのプライベートブランドのプロモーションが目立ち始めた。
Amazonはプライムデーを利用し、お手頃価格の電子機器製品という同社の従来の得意分野を超えた、多岐にわたる自社プライベートブランド商品を売り込んだ。
Amazonはもう何年も、Kindle(キンドル)、Alexa(アレクサ)、Ring(リング)からその他のさまざまな商品まで、自社ブランドの電子機器を大量に世に送り出し、初期の評判を育ててきた。2017年にはわずか30しかなかったAmazonのプライベートブランドは、現在では100を超える。最近追加されたものの多くは電子機器関係ではなく、ペットやファッションといった新しいカテゴリーのもので、Amazonが電子機器以外の分野に重点を移しつつあることがうかがわれる。その変化が特に顕著だったのが、ペット用品のWag(ワグ)やキッチン用品のPresto(プレスト)など、Amazonのほかのプライベートブランドのプロモーションが目立ち始めた今年のプライムデーだ。
「Amazonはデバイスだけではない」
プロフィテロ(Profitero)のCMO、マイク・ブラック氏は、プライムデーが「これまでもAmazonが自社の電子機器などを知ってもらうイベントだった」と話す。マーケットプレイスパルス(Marketplace Pulse)は、たとえば2019年の場合、Amazonがもっとも大々的に推していた48の商品のうちAmazonブランドの商品は7つだったが、そのほとんど(5つ)がAmazonブランドの電子機器であったと報告している。
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ところが今年、Amazonがサイト全体で推進していたプライムデーセールのメインのダッシュボードでは、電子機器のカテゴリーとほかのプライベートブランドを、わざわざ「Amazonデバイス」「Amazonブランド」と分けていた。ダッシュボード以外でも、ファッションなどの各商品カテゴリーのページで「私たちのブランド」や「Amazonブランド」といったタブが表示された。その結果Amazonのプライベートブランド商品は、同社が拡大を狙う「ホーム&キッチン」と「ペット」という2大重点カテゴリーで、売り上げランキングを大きく伸ばした。これは、Amazonがいかに電子機器以外の(頻繁なリピート買いにつながる可能性が高い)プライベートブランド商品を消費者の日常生活に入り込ませようとしているかを明確に示すものである。
ブラック氏は、今年のプライムデーに「電子機器以外のブランドを売り込もうという組織的な取り組みが少し強化されているように感じた」そうだ。たとえば、Amazonは自社のWagブランドのペット用品の広告を展開し、40%の割引を提供した。「消費者に対し『Amazonはデバイスで知られているが、それだけではない』と主張しているのだ」。
2日間のイベントで見られた現象
Amazon自身のブランドが好調だったのは、今年は特別な影響があったことも一因かもしれない。プライムデーを前にして多くのセラーが割引はしないと話し、割引をするセラーも、予想より少ない商品を対象としていた。突然の在庫制限で、サードパーティセラーが予定通りの量の商品を倉庫に保管できなかったからだ。
最終的にプライムデーには、Amazonブランドがいくつかのカテゴリーの売り上げランキングで大きな伸びを見せることになった。プロフィテロによれば、イベント開催の2日間で、次の現象が見られたという。
- 電子機器カテゴリーでは、売り上げランキングでもっとも大きく伸びた25の商品のうち9商品がAmazonブランドの電子機器だった。
- ホーム&キッチンカテゴリーでは、もっとも大きく伸びた25の商品うち5商品がAmazonベーシックの商品だった。
- ペットカテゴリーでは、プライムデー開始後の24時間にランキングが上がったトップ5商品のうちの3商品がAmazonのWagブランドの商品だった。
さらにニューメレイター(Numerator)によれば、商品を購入した人の36%がAmazonブランドの日用品を購入したという。これに対し、ほかのブランドから購入したという人は47%、わからないという人は17%だった。それでも、新しいカテゴリーが重点的に取り上げられるなか、Amazonの電子機器ブランドは依然として売れ筋トップの座を維持している。ニューメレイターの報告によれば、プライムデーでもっとも購入された上位5商品のうちの3商品は、Fire TV Stick、Echo Dot(第4世代)、Fire HDタブレットで、どれもAmazonの電子機器だ。
Amazonブランドをおなじみの存在に
プライムデーにAmazonが電子機器以外のカテゴリーに注力していたことは、それらの分野における同社プライベートブランドの重要性の高まりを浮き彫りにしている。ブラック氏は、具体的な例としてペットフードを挙げた。Amazonをペット用品ブランドと考える人は少ないが、同社のWagブランドはペットフード市場で急速にシェアを獲得している。Amazonにとって「電子機器は単なる売り買いで終わる可能性がある」が、ベビー用品やペット用品などのカテゴリーは「長期的なロイヤルティを推進できる」という。「ドッグフードやペットフードを買ってもらうことができれば、そこにかなりのロイヤルティが期待できる」。
プライムデーは48時間のみのイベントではあるが、Amazonが自社の商品とサードパーティのマーケットプレイスを今後どう持って行きたいかも示唆される。ブラック氏は「プライムデーは、単なるセールではない。Amazonにとっては、彼らのブランド全体を表す重要な表現なのだ」と述べる。そして今年のプライムデーで示されていたことがあったとすれば、Amazonが自社ブランドを家庭でもおなじみの存在にしようとしていることだ。スピーカーやインターホンがほしいときだけにAmazonの商品を求めるのではなく、日常的な必需品の多くをも、Amazonで買ってほしいのだ。
[原文:Amazon Briefing: How Amazon pushed its own products on Prime Day]
Michael Waters(翻訳:SI Japan、編集:長田真)