毎年大きな注目を集めるAmazonのセールイベント「プライムデー」。今年の開催は6月21日、22日と発表された。プライムデーは、世界でも最大規模のセールとして知られる。匹敵するのはアリババが毎年「独身の日」に開催しているイベントくらいだろう。本稿では、プライムデーに向け注目すべきポイントをいくつかご紹介しよう。
毎年大きな注目を集めるAmazonのセールイベント「プライムデー」。今年の開催は6月21日、22日と発表された。プライムデーは、世界でも最大規模のセールとして知られる。匹敵するのはアリババが毎年「独身の日」に開催しているイベントくらいだろう。
プライムデーは例年、7月中旬に開催されてきたが、ここ2年は2020年に10月、2021年は6月と時期をずらしている。Amazonの出品者のあいだでは例年より前倒しでの開催に驚き、イベントに向け在庫の確認など、準備に奔走することになりそうだ。
Amazonは6月開催の理由を公表していない。だが、米国では実店舗の客足がパンデミック以前の水準まで回復しつつあり、そのタイミングでのイベントとなる。実店舗を含め、水着やアパレル、美容商品など、コロナ禍で消費が落ち込んでいた商品の売上が大きく伸びると期待されているなかで、プライムデーに売上の一部が流れると考えられる。
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本稿では、プライムデーに向け注目すべきポイントをいくつかご紹介しよう。
在庫が問題になる可能性
2021年のプライムデーで、大きな問題になるかもしれないのが在庫だ。
5月末にかけて、サードパーティの販売業者のあいだで「在庫の上限数が突如減らされた」という声が相次いだ。つまり、各社が倉庫にストックできる在庫数を、Amazonが減らしているのだ。Amazonの卸売販売代理店コンサルタントであるサプライキック(SupplyKick)でブランド管理ディレクターを務めるエイミー・シー氏は「クライアントのサプライチェーン管理や、卸売部門を通じて自社の在庫管理を行っているが、5月末までに20ポンド(約3000円)を超える商品の在庫上限数が6割程度にまで減らされている」と話す。
この問題に直面している販売業者の実数は不明だが、彼ら(販売業者)のFacebookグループでは不満が噴出している。このニュースはフォーブス(Forbes)でも取り上げられ、「7万6000から3万4000に減らされた。何も(Amazonの倉庫に)送れない状況。理由がわからない」という声が伝えられている。シー氏によると、サプライキックの顧客の半数以上がこの問題に頭を抱えているという。
Amazonは、フルフィルメント by AmazonでIPIという在庫関連の指標を測定している。通常であれば、最大在庫数が減らされるのはこのIPIが悪化したときのみだ。今回は多くの販売業者がこのIPIスコアが正常なまま、最大数を減らされたと報告している。Amazonに問い合わせたところ「在庫数については、過去の販売実績や将来予測、現時点での在庫数、新商品、フルフィルメントセンターの利用可能数など、さまざまな要因をもとに継続的な評価と更新を行っている」との回答が返ってきた。
もちろんこれは、販売業者のプライムデー戦略に大きく影響する。倉庫に十分な在庫を確保できないのであれば、販売する商品点数を絞るしかない。ただし、これはAmazonマーケットプレイスの広告数も減ることになり、Amazonにとってもマイナスの結果になるはずだ。
「追加の在庫を確保できないというのは、かなり痛い」とシー氏。「プライムデーでせっかく跳ね上がったトラフィックを、その後に十分に活かせないことにつながりかねない」。
プライムデーの早期開催で新学期セールも前倒しに?
2020年まで、プライムデーは欧米の新学期シーズンに合わせて開催されてきた。特に米国においては、新学期シーズンは1年で2番目の書き入れ時となっている。7月中旬に開催されてきたプライムデーは、ほかの大手によるセールの呼び水ともなってきた。
だが、2020年には10月の開催となり大きな変化が生じた。セール情報を提供するリテイルミーノット(RetailMeNot)の調査によると、小売業者の66%が「10月開催によって新学期シーズンの売上が落ち込んだ」と回答している(とはいえ、パンデミックの影響もあるため、プライムデーの開催時期のみを切り離して評価するのは難しい)。
2021年は6月21日、22日の開催となったことで、この状況が変わるかもしれない。リテイルミーノットの小売およびブランドソリューション担当SVPを務めるローレン・クーリー氏は、「プライムデーが前倒しになったことで、新学期のセールスがより長く続く可能性がある」と指摘する。「消費者のあいだで、プライムデーと新学期シーズンの結びつきは強い。2021年のプライムデーは、新学期セールの始まりを告げるイベントにもなる」。
リテイルミーノットの調査によると、米国の消費者の実に92%が、新学期に向けた買い物をプライムデーとあわせて6月中旬に始めると回答している。米国では例年、6月中旬は売上が伸びない時期だったが、ここからもプライムデーの影響の大きさが見て取れる。
ほかの小売企業への影響
ウォルマートは6月2日、Amazonのプライムデー発表から数時間後にショッピングイベントの「ディールス・フォー・デイズ(Deals for Days)」開催を発表した。同イベントは6月20日から23日で、プライムデーをはさんで2日長く行われる。一方、ターゲット(Target)も6月20日から22日までの3日間、「ディールデー(Deal Day)」を開催すると発表した。
これまでも各社は、こうしたプライムデー対抗策を講じてきた。セール単体でAmazonに打ち勝つことはできずとも、つねに一定の成果は上がる。店舗の客足分析を行うプレイサー・ドット・エーアイ(Placer.ai)によると、2019年にウォルマート、ターゲット、ベストバイ(Best Buy)はプライムデーにぶつけてセールを行った結果、客足が増加している。
また、ニューメレーター(Numerator)が2020年に行ったプライムデーの調査によれば、同年のプライムデーにおけるAmazonの売上は全米のCPGの14.8%を占めた。しかし実のところ、10月の売上の自体は、ほかの月に比べ0.7%の増加にとどまった。
一方で、プライムデーによって一番大きな打撃を受けているのが中小の小売企業だ。2020年10月、消費財分野でAmazonやウォルマートなどが売上を大きく伸ばしたが、中小の小売企業の売上シェアは1.6%減少となっている。
[原文:Amazon Briefing: 3 trends to watch on Prime Day 2021]
Michael Waters(翻訳:SI Japan、編集:長田真)