楽天が購買データやテレビ視聴データを活用した広告ターゲティングサービスの提供を開始するなかで、Amazon Advertising Platform(AAP)のプログラマティック広告責任者が来日。DIGIDAY[日本版]は10月25日、AAPのサービス内容や現況、競合他社への意識や今後の目標について話を聞いた。
Amazonの閲覧・購入履歴データに基づき、アルゴリズムによってオーディエンスの好みに合わせた商品の広告を配信する。そんな広告配信を世界で唯一実現できるデマンドサイドプラットフォーム(DSP)が、Amazon Advertising Platform(AAP)だ。
AAPは2012年に公式ローンチし、メディアに「眠れる巨人、ついに目覚める」などと表現されるほど、業界に大きなインパクトをもたらした。またアドエクスチェンジャー(AdExchanger)の2017年3月の記事によると、米国のエージェンシーおよびブランドのマーケター800人を対象として2016年に実施された調査で、AAPはGoogleのDoubleClick Bid Manager(DBM)を抜き、現在アメリカでもっともよく利用されているDSPになっているという。
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そんななか、DIGIDAY[日本版]はAmazonのグローバル広告プラットフォームディレクター、サウラブ・シャーマ氏に取材する機会を得た。10月25日、東京・目黒にあるアマゾンジャパン合同会社のオフィスにて、AAPのサービス内容や現況、競合他社への意識や今後の目標について話を聞いた。
——AAPが提供しているソリューションの詳細を教えてください。
AAPは広告主を2つのカテゴリに分け、それぞれにソリューションを提供している。すなわち、Amazonで商品を販売している広告主と、そうではない広告主だ。後者の例としては自動車メーカー、金融サービス、エンターテインメント、旅行代理店などを挙げることができる。
AAPはAmazonの閲覧・購入履歴に基づき、個人を特定できない形でターゲティングセグメントを作成している。これにより、Amazonで商品を販売する広告主もそうではない広告主も、あるカテゴリや属性の商品に興味があるオーディエンスに向けて、カスタマイズされた広告を配信することができる。商品をAmazonで販売する広告主は、広告にeコマース機能を埋め込むことも可能だ。ワンクリックで商品をカートに落とせるカートボタンを組み込んだり、カスタマーレビューやレーティングを表示することで、Amazonの内外にかかわらずeコマース体験を提供できる。
Amazonではブランディング目的とパフォーマンス目的の両方でソリューションを提供している。ブランディング目的では、たとえば「AAPビデオ」というサービスにより、アウトストリームとインストリームの動画広告在庫を提供している。これはローンチ以来、ブランド認知度の獲得や向上に役立つという評価を得ている。そしてパフォーマンス目的では、ダイレクトレスポンスが必要なキャンペーンを実施している広告主のために、機械学習による自動最適化を利用してCPA(Cost Per Action)を下げている。また広告主のWebサイトにピクセルを貼り、訪問者のリターゲティングを実施することで、メッセージの訴求力を深められる。さらにサプライサイドで、買い付けている広告在庫を最適化する仕組みも用意している。
——広告配信の品質保証のために、どんな対策を取っていますか?
ブランドセーフティやアドフラウドなどに関して、AAPで採用している施策をいくつか紹介する。
まず、Amazonは、広告主や一般消費者からの信頼を決して裏切らないことを指針としている。そのため特に十全な透明性の提供に努めており、たとえば我々のDSPの運用コストに関する情報を広告主や代理店と共有している。また、やはり広告主が希望する場合は、認定されたサードパーティーのベリフィケーションベンダーによるサービスを利用できる。
またAmazonは直接パブリッシャーとも契約して広告在庫を買い付けているため、オープンなエクスチェンジからの買い付けに比べるとより高品質な広告在庫を提供している。ちなみに、プライベートマーケットプレイス(PMP)とは少し異なる仕組みだ。
——AAPにおける現在のトレンドについて教えてください。
世界全体においては、Amazonで商品を販売しない事業者がAmazonに広告を出稿することが増えている。これは自然な流れのように思われるかもしれないが、かつては当の事業者にとってピンと来るものではなかったようだ。現在、これが大きく伸びている。また、動画広告は現在欧米で急速に伸びているので、日本でもこれから成長していくという前提で、ビジネスチャンスと捉えている。
——テレビ広告については、どんな展望を持っていますか?
Amazonは現在、全米フットボールリーグ(NFL)の試合のデジタル放映権を取得してAmazonプライム・ビデオで配信しており、そこでのデジタルテレビ広告も提供している。この試みは始めたばかりだが、広告主からさっそく高く評価されていることがある。それは広告効果測定だ。実例を挙げると、米P&Gの剃刀製品ブランド、Gillette(ジレット)の広告を見たオーディエンスが、実際にAmazonで剃刀を購入した割合などについて、データに基づくレポートを出せる。こうしたレポートは従来型のテレビ広告では難しかったものであり、我々にとってはもちろん、広告主にとっても興味深い。ショッピングジャーニーのループが閉じられるということで、好評を得ている。
——競合他社への意識と、今後の目標について聞かせてください。
競合他社については、率直に言うとあまり意識していない。Amazonは顧客起点でサービスや事業を開発しているからだ。まずはこうして来日し、広告主や代理店からのフィードバックを直接聞き、顧客にとっていま何がニーズや課題とされているのかをベースに、プロダクトや事業戦略を考えている。
今後はより多くの広告主からの利用を促進するために、多様なニーズに応えていく。たとえば、動画広告などの対応フォーマットを増やす。さらに、我々のサービスを運用する代理店にとっての使い勝手を、改善していきたい。
——最後に、いま広告主に訴えたいことは何ですか?
AAPは比較的新しいDSPと位置づけられているかもしれないが、Amazonの広告在庫を使える唯一のDSPだ。Amazonの閲覧・購入履歴を使っての配信も、AAPでしかできない。グローバルなスケールもあり、日本でも十分なリーチを提供できると自負している。前述の直接の買い付けのメリットもある。まずは知っていただき、使っていただきたい。
Written by 原口 昇平
Interview by 長田 真
Photo courtesy of アマゾンジャパン