2日に東京都港区で開かれたマイクロソフトテックサミット。開発者を集めた本イベントで、日本マイクロソフトCTO(最高技術責任者)の榊原彰氏は「AIの民主化」を訴えた。データ量が指数関数的に増える中、あらゆるデバイスに埋め込んだり、クラウドを通じたりして、人々にAIを提供する構想だ。
2日に東京都港区で開かれた「マイクロソフトテックサミット」。開発者を集めた本イベントで、日本マイクロソフトCTO(最高技術責任者)の榊原彰氏は「AIの民主化」を訴えた。データ量が指数関数的に増えるなか、あらゆるデバイスに埋め込んだり、クラウドを通じたりして、人々にAIを提供する構想だ。
マイクロソフトはAI研究開発組織の「Microsoft AI and Research Group」を発足。全世界5000人以上のコンピュータサイエンティストおよびエンジニアで構成される。コンピュータビジョン(コンピュータによる視覚)の権威であるハリー・シャム氏がエグゼクティブバイスプレジデントに就任している。
榊原氏は、マイクロソフトのパーソナルアシスタントであるコルタナは120億の質問に回答し、1億3300万人のユーザーを抱えると説明した。アシスタントには強化学習という機械学習(マシーンラーニング)のひとつの方法が活用される。「認識作業を繰り返すことで、質問する人が置かれるコンテクスト(状況)を知るようになっている。カレンダーにスケジュールを入れていると思うが、それを含めて皆さんがそのとき何を考えるか知ろうとしている」。
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「より多くの人が使えば使うほどアプリケーションが賢くなる。データを蓄えることで、メールの内容を知り、仕事に優先順位をつけてどれに集中すればいいか、などを教えてくれる」。ビジネスをしているときの情報のほかに、ビジネスの外にも、CRMの一環として、Facebook、Twitter、LinkedInの情報も紐付けられたらどうだろう。もちろん、これらは個人情報をセキュアにしたままにされる。
インフラが強力なAIを育む
人工知能を世界のあらゆる場所に行き渡らせるためには、オープンソースの人工知能ライブラリとディープラーニング(深層学習)が必要とする莫大な計算量を支えるインフラがいる。マイクロソフトはマイクロソフト・コグニティブ・ツールキット(CNTK)を提案。CPU後のテクノロジーとして、製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路FPGA(Field-Programmable Gate Array)により深層学習の膨大な計算量をカバーする。
Googleは機械知能ライブラリのTensorFlow(テンサーフロー)をオープンにし、TPU(Tensor Processing Unit)と呼ばれるAI集積回路を開発している。マイクロソフト、Googleの激しい競争が垣間見える。
FPGAが活用されることなどにより、最大と言われるスーパーコンピューターの10倍とも言われる能力にAIは達するという。マイクロソフトはこの能力をクラウドという形で人々に提供することを目指している。
AIのスーパーコンピューター化
榊原氏は「常に透明性と説明責任が求められる。人々の福祉に反さない方法で活用していく」と語った。同社は今年9月、Amazon.com、Facebook、IBM、Googleと人工知能の普及とベストプラクティスを共有する非営利団体「Partnership on AI」を立ち上げている。
「AIのスーパーコンピューター化だ。この能力を民主化していく。将来、人間とコンピュータが協力しあい課題を解決する社会になっていく。そう信じている」。
Written by 吉田拓史
Photo by Thinkstock