- 8月末に行われたGoogle Cloud Nextは、ジェネレーティブAIを中心にAI関連の新機能などが発表された。とくにGoogleのAIプラットフォームのアップデートやエヌビディアとの提携などが話題に。
- AI関連のスタートアップも活発で、新たな資金調達や買収の発表が相次いだ。ただし、CBインサイツ(CB Insights)の最新リポートによれば、2023年第1四半期に比べてAI全体の資金調達額は一時的に減少しているという。
- 大手企業もAIを積極的に活用し、AI関連の新たな取り組みが進行中。また、規制に関する議論も盛んで、AI技術の適切な利用と潜在的なリスクについての枠組みが検討されている。
Apple Event、セールスフォース(Salesforce)のDreamforce、Meta Connect、Adobe MAXなど、秋には主要なテックイベントがめじろ押しだった。
では、その少し前の8月末に開催された3日間のイベントGoogle Cloud Nextはどうだっただろうか? 当然ながら、ジェネレーティブAIが主役の座に躍り出た。しかしこれは、AIの構築と規制が猛スピードで進むなか、ニュースサイクルに湧き上がったAI関連の出来事のひとつにすぎない。以下では、同イベントの内容を振り返りつつ、最近のAI関連ニュースをまとめた。
Google Cloud Nextでの出来事
GoogleはVertex、DuetといったAIプラットフォームのアップデートをいくつも発表し、エヌビディア(NVIDIA)のような企業との新規提携や提携拡大も発表した。CEOのサンダー・ピチャイ氏は開会のあいさつで、「数万人の開発者がGoogleのVertexで100以上のAIモデルを使用しており、100万人以上がすでにGoogle WorkspaceでジェネレーティブAI機能を利用している」と述べた。
また、ピチャイ氏はAIの利点について語る一方で、AIが生成した画像に「透かし」を入れ、コンピューターがつくったものとそうでないものを区別できるようにするなど、リスクを軽減する方法も開発していると語った。
一方で、ゼネラルモーターズ(General Motors)、アイホップ(IHOP)、ボストン・レッドソックス(Boston Red Sox)、アーバン・アウトフィッターズ(Urban Outfitters)、エスティ・ローダー(Estee Lauder)、GEアプライアンス(GE Appliances)、FOXスポーツ(FOX Sports)など、数十社の幹部がGoogleとステージに上がり、それぞれのパートナーシップについて話した。シックス・フラッグズ(Six Flags)は、年内にGoogleのジェネレーティブAIツールをテーマパークのモバイルアプリとWebサイトに統合し、質問に答えたり、来場者に一日の過ごし方を提案したりするチャットボットを開発する計画を発表した。
スタートアップのニュース
Google Cloud Nextで新製品や協業を発表したジェネレーティブAIスタートアップであるジャスパーAI(Jasper AI)は、マーケターがGoogle DocsやGoogle Sheetsで直接ジャスパーを使ってコンテンツを作成、編集する機能など、Google Workspaceの新しい統合機能を発表した。同社は現在、さまざまなプラットフォームのタスク自動化を支援するメイク(Make)やザピアー(Zapier)、ビジュアル開発プラットフォームで直接ジャスパーにアクセスできるウェブフロー(Webflow)とも提携している。
ジャスパーのマーケティング責任者であるミーガン・キーニー・アンダーソン氏は、「相互運用性はジャスパーのスケールアップとプラットフォームの多様化の両方につながる」と述べ、「ソースやモデルの選択に関しては、ひとつにすべてを賭けたいとは思わないはずだ。しかし、そうした方が柔軟性は高い。絶え間ない革新、絶え間ないソースの多様化があれば、ユーザーはあらゆる面でよりよい成果を期待できる。具体的には、信頼性が増し、モデルの能力が多様化する」と話した。
一方、8月末から9月初旬にかけて、マーケティングに特化したAIスタートアップ数社が新たな資金調達や買収を発表した。テキスト生成スタートアップのAI21はGoogle、エヌビディア、サムスン・ネクスト(Samsung Next)などから1億5500万ドル(約228億2100万円)を調達。AIチャットボットでセールスフォースの設定を簡素化するスタートアップのスーパーフレーム(Superframe)は、新たに500万ドル(約7億3600万円)を調達した。[続きを読む]
- 8月末に行われたGoogle Cloud Nextは、ジェネレーティブAIを中心にAI関連の新機能などが発表された。とくにGoogleのAIプラットフォームのアップデートやエヌビディアとの提携などが話題に。
- AI関連のスタートアップも活発で、新たな資金調達や買収の発表が相次いだ。ただし、CBインサイツ(CB Insights)の最新リポートによれば、2023年第1四半期に比べてAI全体の資金調達額は一時的に減少しているという。
- 大手企業もAIを積極的に活用し、AI関連の新たな取り組みが進行中。また、規制に関する議論も盛んで、AI技術の適切な利用と潜在的なリスクについての枠組みが検討されている。
Apple Event、セールスフォース(Salesforce)のDreamforce、Meta Connect、Adobe MAXなど、秋には主要なテックイベントがめじろ押しだった。
では、その少し前の8月末に開催された3日間のイベントGoogle Cloud Nextはどうだっただろうか? 当然ながら、ジェネレーティブAIが主役の座に躍り出た。しかしこれは、AIの構築と規制が猛スピードで進むなか、ニュースサイクルに湧き上がったAI関連の出来事のひとつにすぎない。以下では、同イベントの内容を振り返りつつ、最近のAI関連ニュースをまとめた。
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Google Cloud Nextでの出来事
GoogleはVertex、DuetといったAIプラットフォームのアップデートをいくつも発表し、エヌビディア(NVIDIA)のような企業との新規提携や提携拡大も発表した。CEOのサンダー・ピチャイ氏は開会のあいさつで、「数万人の開発者がGoogleのVertexで100以上のAIモデルを使用しており、100万人以上がすでにGoogle WorkspaceでジェネレーティブAI機能を利用している」と述べた。
また、ピチャイ氏はAIの利点について語る一方で、AIが生成した画像に「透かし」を入れ、コンピューターがつくったものとそうでないものを区別できるようにするなど、リスクを軽減する方法も開発していると語った。
一方で、ゼネラルモーターズ(General Motors)、アイホップ(IHOP)、ボストン・レッドソックス(Boston Red Sox)、アーバン・アウトフィッターズ(Urban Outfitters)、エスティ・ローダー(Estee Lauder)、GEアプライアンス(GE Appliances)、FOXスポーツ(FOX Sports)など、数十社の幹部がGoogleとステージに上がり、それぞれのパートナーシップについて話した。シックス・フラッグズ(Six Flags)は、年内にGoogleのジェネレーティブAIツールをテーマパークのモバイルアプリとWebサイトに統合し、質問に答えたり、来場者に一日の過ごし方を提案したりするチャットボットを開発する計画を発表した。
スタートアップのニュース
Google Cloud Nextで新製品や協業を発表したジェネレーティブAIスタートアップであるジャスパーAI(Jasper AI)は、マーケターがGoogle DocsやGoogle Sheetsで直接ジャスパーを使ってコンテンツを作成、編集する機能など、Google Workspaceの新しい統合機能を発表した。同社は現在、さまざまなプラットフォームのタスク自動化を支援するメイク(Make)やザピアー(Zapier)、ビジュアル開発プラットフォームで直接ジャスパーにアクセスできるウェブフロー(Webflow)とも提携している。
ジャスパーのマーケティング責任者であるミーガン・キーニー・アンダーソン氏は、「相互運用性はジャスパーのスケールアップとプラットフォームの多様化の両方につながる」と述べ、「ソースやモデルの選択に関しては、ひとつにすべてを賭けたいとは思わないはずだ。しかし、そうした方が柔軟性は高い。絶え間ない革新、絶え間ないソースの多様化があれば、ユーザーはあらゆる面でよりよい成果を期待できる。具体的には、信頼性が増し、モデルの能力が多様化する」と話した。
一方、8月末から9月初旬にかけて、マーケティングに特化したAIスタートアップ数社が新たな資金調達や買収を発表した。テキスト生成スタートアップのAI21はGoogle、エヌビディア、サムスン・ネクスト(Samsung Next)などから1億5500万ドル(約228億2100万円)を調達。AIチャットボットでセールスフォースの設定を簡素化するスタートアップのスーパーフレーム(Superframe)は、新たに500万ドル(約7億3600万円)を調達した。
また、顧客データプラットフォームのハイタッチ(Hightouch)は、データブリックス(Databricks)から新たに出資を受けたと発表。データブリックスはジェネレーティブAIプラットフォームのモザイクML(MosaicML)を買収したばかりである。
このようにジェネレーティブAIの盛況にもかかわらず、CBインサイツ(CB Insights)の最新リポートによれば、AI全体の資金調達額は2023年第1四半期から第2四半期にかけて38%減少し、総額94億ドル(約1兆3840億円)にとどまった。
レッドブリック(Redbrick:AI動画ジェネレーターのアニモト[Animoto]を8月に買収)のCMOマルコ・ピメンテル氏は、「データに関してはスタートアップが大企業に対抗できるかどうか不透明なため、マーテクスタートアップに資金を提供したがらない投資家もいると聞いている」と話し、「すべてがものすごいスピードで動いている。データに依存しているのであれば、これらのスタートアップが守る価値のある企業に成長するのは本当に難しいと思う」と諭した。
その他の巨大企業のニュース
ジェネレーティブAIを搭載した企業向けツールを発表した巨大テクノロジー企業は、Googleだけではない。オープンAI(OpenAI)はGoogle Cloud Next開幕の前日、企業が独自のデータを保護しながら新しい機能を利用できるChatGPT Enterpriseを発表した(データに関する企業の懸念が主なリスク要因として挙げられているが、ChatGPTは提供開始から1年足らずでフォーチュン500[Fortune 500]企業の80%に採用されているとオープンAIは述べている)。
一方、IBMとセールスフォースの新しいパートナーシップについてはどうだろうか。両社はIBMコンサルティング(IBM Consulting)の専門知識を統合するとともに、セールスフォースのEinsteinをIBMのwatsonxプラットフォームと統合し、データマッピングなどのタスクやセールスフォースのSales Cloud、Marketing Cloud、Slackとの統合を実現。多くの面で両社の能力を組み合わせることを目的としている。
セールスフォースのパートナーアライアンス管理担当シニアバイスプレジデントであるエイミー・ハースト・コドゥル氏はこのパートナーシップについて、「セールスフォースが過去の技術進化にアプローチした方法と非常によく似た動きだ」と説明している。「このテクノロジーの適切なユースケースを見つけ、迅速に採用できるようにするため、業界に精通し、顧客と深い関係にあるパートナーの専門知識を活用するということだ」。
ブランド、エージェンシー、メディアのAIニュース
オンライン・ニュース・アソシエーション(Online News Association)の年次総会では、マーシャル・プロジェクト(Marshall Project)やマークアップ(Markup)といったパブリッシャーが、ニュースルームでどのようにジェネレーティブAIをテストしているかを説明した。
ボートハウス(Boathouse)などのエージェンシーは分散型のアプローチでAIの実験を続け、一方でバーチャルインフルエンサーの台頭は、AIブームにもかかわらず、まだ勢い付いていない。
小売業界では、ウォルマート(Walmart)がオフィス勤務の5万人にジェネレーティブAIアプリを提供し、新しいAIツールの展開を始めている。また、Amazonはホールフーズ(Whole Foods)などに導入している生体認証リーダー「Amazon One」に、ユーザーの手のひらを認識する方法を学習させるため、ジェネレーティブAIを使っていると話した(Amazonは8月にも、商品レビューを要約するジェネレーティブAIツールなどを発表している)。
規制に関する話し合い
米国のチャック・シューマー上院議員は9月、主要テクノロジー企業の経営陣を集め、非公開のAIフォーラムを開催。しかし、招待者リストの大部分がテクノロジー企業の幹部で占められており、研究者や消費者、労働者の代表が少なすぎるという指摘もあった。
英下院はAIの規制方法に関する50ページの報告書を公開した。プライバシー、バイアス、知的財産、労働市場の混乱、AIの透明性に関する具体的な提言が含まれているという。
米著作権局は、AIが知的財産に与える影響について懸念を表明するためのパブリックコメント募集を行った。このほど発表された著作権局の長い発表資料では、利害関係者に4つの重要な点について意見を求めている。すなわち、AIモデルの学習に著作物を使用すること、AIが生成した素材の著作権を認めること、AIシステムが著作権を侵害した場合の責任、人間のアーティストのアイデンティティーやスタイルを模倣したAI出力の取り扱いだ。
[原文:AI Briefing: Tech giants build new enterprise tools and partnerships while startups race to compete]
Marty Swant(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:島田涼平)