Netflix の広告事業を待ちわびる、広告・メディアの幹部たち

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広告主は、ストリーミング大手Netflix(ネットフリックス)がいつか広告付きになると確信している。というか、少なくとも、そうなってほしいと心の底から思っている。

スピーカーブランドのボーズ(Bose)でグローバルメディア責任者を務めるジョルマ・クレムサー氏は、RTLグループ(RTL Group)が主催し、英DIGIDAYが司会を務める広告関係の公開討論会で、Netflixがいつか広告を導入するか、サブスクリプション料金の大幅値上げを行うと予想していると述べた。Netflixによるプレロール広告製品の導入は考えられると述べたが、ユーザー体験を損なうのを恐れてインタースティシャル広告を採用することには懐疑的だった。

広告・メディア業界のほかの幹部も、同様の意見を示している。別の公開討論会で、フランスのホテルチェーン、アコーホテルズ(Accor Hotels)のマーケティンググローバル戦略担当シニアバイスプレジデントであるアントワーヌ・デュボア氏は、Netflixがいつか何らかの広告製品を提供すると予想していると述べた。イタリアを拠点とする食品会社バリラ(Barilla)のメディア・広告制作・調達担当幹部のカルロ・アンドレア・パティチーニ氏は、ほかの選択肢が(おそらく2倍もの)料金値上げなので、Netflixはそうする必要が出てくるだろうと語った。

何百億ドルもの負債が要因

Netflixでの広告はこれまで、メディア・広告業界の会話でよく取り上げられる話題で、Netflixがいつか広告を提供しなければならなくなると確信している人々によって「大胆な要請」として用いられることが多かった。論拠はかなり明白だ。Netflixは何百億ドルもの負債を抱えており、負債額が増え続けている。オリジナルの映画やテレビ番組への見るからに果てしない供給に資金を出しているからだ。また、より料金に敏感な国際市場での成長に目を向けていることもあり、広告を受け入れることで売上と利益を大幅に増やすことが可能だ。

「財政状態を見てほしい。Netflixは、広告が必要になるか、料金を値上げしなくてはならなくなるかのどちらかだ」と指摘するのは、欧州の放送局RTLグループ(RTL Group)の広告販売部門RTLアドコネクト(RTL AdConnect)でマーケティングディレクターを務めるダニエル・ビショフ氏だ。

Netflixが当面は広告を導入しそうにない理由は、ユーザー体験に与える恐れがあるダメージやインフラ費用など、たくさんある。

Netflixは、広告付きバージョンのストリーミングサービスを導入する計画はないと断固として述べてきた。広告を決して入れないと長年述べてきたあとだけに、消費者の反発を恐れる気持ちが強い抑止力になっているが、広告はNetflixのユーザー体験を大きく変える可能性もある。

広告導入のコストは莫大

「消費者体験の適切なバランスを見つけるのが、きわめて難しくなる」と、ワーナー・メディア(WarnerMedia)のデータ戦略担当エグゼクティブバイスプレジデントであるジェシー・レッドニス氏は語る。「消費者は、絶え間ない純粋なコンテンツで『Netflixを見ながらいちゃつく(Netflix and chill)』ことを期待している。広告の導入はそうした流れと実行が最優先されることを混乱させる」。

そのうえ、さまざまな個別の市場で広告インフラを構築するとなると、費用とリソースを集約することになり、Netflixが広告付きの動画提供をすぐにはじめられることはなさそうだ。たとえば、広告運用企業を一から規模拡大するには時間が掛かり、広告運用技術ソリューションを拡大して既存のサブスクリプションのスタックに組み込もうとすると、さらに多くの時間がかかる。高い割合のビデオバッファリング(ホイール・オブ・デス[the wheel of death])も、コンテンツの読み込み中に行われる広告コールに結びつくと、レッドニス氏はいう。また、Netflixは現在、自社のシステムでサードパーティのトラッキングタグや広告コールに対応する必要がない。そうしたアーキテクチャーを組み込むために動画プレイヤーを再構築するのは「途方もない作業」だ、とレッドニス氏は付け加えた。

「現在、(Netflixの)エンジニア数千人が、動画の配信と消費者体験にかなり注力している」と、レッドニス氏はいう。「広告体験の追加や広告の決定、トラフィックの追跡、複数バージョンのクリエイティブ制作、レポーティング、サードパーティの認証などは、大きな妨げになってしまう」。

異なるマネタイズの可能性

これは、Netflixが広告を受け入れないことを意味するわけではないが、ブランドや製品とのタイアップといった非従来型の形式がますます多くなる可能性がある。

「クイア・アイ♂♀ ゲイ5のダサ男改造計画(Queer Eye for the Straight Guy)」のようなNetflixの番組内で、ブランドや製品とのタイアップを行ってきたブランデッド・エンターテインメント・ネットワーク(Branded Entertainment Network)で、マーケティングおよび戦略、インサイト担当シニアバイスプレジデントを務めるアーロン・フランク氏によると、Netflixは、外部のスタジオから独占的にライセンス供与されるより、独自のオリジナルの映画やテレビ番組をより制作しているのでなおさら、番組内でさらにタイアップを受け入れることを検討する可能性があるという(とはいえ、Netflixの非従来型広告の大半の形式はこれまで、Netflixに売却されたりライセンス供与されたりした番組向けにタイアップを売り込む外部のスタジオによるものだった)。Netflixはすでに、ヒットシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界(Stranger Things)」の次シーズンとタイアップした、コカ・コーラ(Coca-Cola)とのマーケティングでの提携により、この分野で実験してきた。ただし、ブルームバーグ(Bloomberg)の報道によると、コカ・コーラは、製品のタイアップのためにNetflixに費用を払わなかったという。

Netflixは負債を背負い続けるが、商品化やライセンス、さらにはビデオゲームに進出して、新たな収益源を作る可能性もより高いと、フランク氏は付け加えた。Netflixは昨年、ディズニー(Disney)の幹部であるクリスティ・フライシャー氏を雇用し、グローバル消費者向け製品担当チームを任せた。フライシャー氏の責務には、小売・ライセンスに関する提携やパブリッシング、双方向ゲーム、マーチャンダイジング、イベントの監督が含まれている。

Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)