YouTubeの広告配信の透明性について、激しい論争を巻き起こした報告書が発表されてから1カ月が経ったころ、広告主はオンライン広告スペースの販売では最大規模を誇るGoogleに、さらなる説明を求めていた。 事の発端は、「 […]
YouTubeの広告配信の透明性について、激しい論争を巻き起こした報告書が発表されてから1カ月が経ったころ、広告主はオンライン広告スペースの販売では最大規模を誇るGoogleに、さらなる説明を求めていた。
事の発端は、「YouTubeの広告枠を購入した場合に、同社のオーディエンス拡張ネットワークによって計り知れないほどのブランド毀損リスクにさらされる可能性がある」と主張する、リサーチ企業アダリティクス(Adalytics)の報告書だった。
報告書の発表と同日の6月27日に、Googleは調査結果に対して強い論調の反論を発表し、その後は「YouTube Measurement Program」(YouTube測定プログラム)によるブランドセーフティ保証があるという主張を唱えた。だが、広告主側はそのような声明を額面通りには受け取っていない。米DIGIDAYでは、広告業界最大手が名を連ねる複数の業界団体が、さらなる説明を求めるつもりであることを確認した。
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Google側の主張
アダリティクスの調査によって浮かび上がった懸念は、主に全米広告主協会(The Association of National Advertisers、以下ANA)とその英国版であるISBA、および世界広告主連盟(World Federation of Advertisers)を通してGoogleに伝えられている。
この3団体の代表者たちは、7月にGoogleとの対話を開始した(個々の広告主がYouTubeに投じる広告費を見直し、さらには返金を要求している)。とくに懸念の焦点となっているのは、Google動画パートナー(GVP)ネットワークだ。Googleは対話に応じ、質問があれば何でも答えるとしているが、公式回答がいつ出てくるのか、また、かなりの金額に上る返金が実際に行われるかについては、依然として不透明なままだ。
ANAのデータ・テック・測定・アドレサブルメディア担当グループEVPを務めるビル・タッカー氏は、「質問状を提出し、アダリティクスの調査によって提起された問題について説明を求めている」とし、「この問題がどれほどの規模なのかを知りたい」と話す。
また、「Googleは、今後回答する内容に関わり、対応すると保証してくれた。Googleが調査についてブログで行った反論では十分な理解はできなかったが、Google側もそれは認めてくれている」とタッカー氏は続けた。
その後、米DIGIDAYに伝えられた公式回答で、Googleの広報担当者はアダリティクスの手法に「不備」があり、それが広告業界に誤解を生んでしまったという同社の見解を繰り返した。公式回答では、「当社は業界の代表者と広告エージェンシー、広告主とも会い、事実関係を明らかにして誤解を解き、質問に答えている」と言い添えている。
ブランド棄損とインベントリ不当表示の疑惑
アダリティクスの報告書は、広告主が懸念すべきさまざまな問題のなかでもとくにYouTube固有の問題として、何百万にも上るアプリや広くWeb上に広告を配信してオーディエンスを拡張するTrueViewを巡る、ブランド毀損リスクと広告インベントリに関する不当表示を挙げている。
たとえば、あるインフラストラクチャの大手ブランドでは、TrueView広告の6%だけがYouTubeで流れ、その予算が何万にも上るサードパーティから成るGVPネットワークに分散されていたそうだ。
「重要なことに、YouTubeとGoogle自身のポリシーに、TrueViewのインストリーム広告は音声付きかつスキップ可能であり、視聴者のアクションによって開始されなければならないと記述されている」と、アダリティクスの報告書は記し、「一部の広告キャンペーンでは、TrueViewのインストリーム広告費の42%から75%が、Googleの基準に満たないGVPサイトに割り当てられていた」と続ける。
加えて、「海賊版コンテンツを含むサードパーティのWebサイトや偽情報の発信で知られるサイト、Playストアから削除または登録申請を却下されたアプリなどへのTrueView広告の配信が観測された」と、アダリティクスは主張する。
最初の反論のなかで、Googleのグローバルビデオソリューション部門ディレクターであるマーヴィン・レナウド氏は、GVPインベントリーのビューアビリティが90%以上であるとし、さらにダブルベリファイ(DoubleVerify)やIntegral Ad Science(以下、IAS)などのサードパーティ認証企業との提携を強調した。
レナウド氏は最初のブログ投稿を7月13日付で更新し、「キャンペーンごとに設定は微妙に異なるかもしれないが、ピクサビリティ(Pixability)によると、同社が調べた動画キャンペーン全体のうち11%のみがGVPに配信されていた。IASの調査では、GVPはキャンペーンの21%を占め、それにはYouTubeとGVPの両方のインベントリーが含まれる」と書いている。
問題はMRC認定の有無か
このような保証に対し、米DIGIDAYが連絡をとったメディアエージェンシーの情報筋(報道関係者と話す許可がなく、公にGVPに異議を唱えることでYouTubeとの関係が悪化することを懸念し、全員が匿名を希望)は懐疑的な姿勢を示した。
数名のメディアバイヤーは、アダリティクスの最初の調査方法に問題があるという申し立てがあるのはさておき、「報告書のおかげでYouTube側からは決して取り上げられることのない問題について認識が高まったことは確かだ」と、米DIGIDAYに語った。
ある独立系メディアエージェンシーの情報筋は、6月27日の発表後にYouTubeのスタッフと話すとき、彼らがレナウド氏の主張を繰り返す一方で、GVPのトラフィック測定について「メディアレーティングカウンシル(以下MRC)の認定を受けたサードパーティベンダーが存在しないことは、あまり触れたくないようだった」と話す。
「YouTubeのスタッフが台本を読み上げているような印象を受けた」とその情報筋は語る。「YouTubeはブランドセーフティについてMRCの認定を受けているが、それはGoogleだけの話で、これができるサードパーティはない」。
Googleは「問題」を認めず
別の複数の情報筋からも、メールで説明を求めたときにGoogleの担当者たちがそのような問題の存在を書面で認めたがらなかったという話があった。
「多くのチームが技術的な専門知識のレベルに驚いたと思う。一部のチームではデータを抽出して、そのデータでどうしようか考えていることを暗に認めている」と、業界大手ホールディングカンパニーの別の情報筋も語った。
Google側は、「MRC認定のサードパーティプロバイダーが、GVPキャンペーンを測定していると述べたことは一度もない」とし、YouTubeとGVPのインベントリーに関する同社のデータ収集とアドデータハブ(Ads Data Hub)経由のデータ送信は、無効なトラフィック検出目的のビューアビリティに関するMRC認定を受けていると指摘している。
[原文:Advertisers further probe ad buying transparency on YouTube, despite platform’s protestations]
Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)