ソーシャル上の「UGCの海」から関連性の高いコンテンツを見つけ出せるのが、Adobeが5月に買収を完了したLivefyreだ。アドビシステムズ・Adobe Livefyre統括責任者ジョーダン・クレッチマー氏は無数のUGCの中から重要なコンテンツを見つけ、即座にコンテンツを製作することが重要だ、と語った。
デバイスやプラットフォームなどの進化で、人々が気軽にコンテンツをつくれる時代になった。ユーザー生成コンテンツ(UGC)は想像を超える速度で増加し、最近は動画により情報量が増している。企業にとって、この「UGCの海」から有益な情報をすくい取れるかが、顧客とのエンゲージメントを築くカギになっている。
ソーシャル上の「UGCの海」から関連性の高いコンテンツを「発見」できる機能をもつのが、Adobeが5月に買収を完了したLivefyre(ライブファイア)だ。Adobeのクラウド製品に統合され、今後も各種の機能との連携を予定している。Adobe Livefyre統括責任者ジョーダン・クレッチマー氏は無数のUGCのなかから重要な情報を見つけ、即座にコンテンツを製作することが重要だ、と語った。
消費者がモバイルで常時インターネットに接続されたいま、消費者のニーズがデバイスをまたいでダイナミックに動くのが「見える」ようになった。消費者が顕在化させたエモーションに即座に対応することが重要だ。「素早くコンテンツを製作することを、Adobeは『コンテンツベロシティ』と呼んでいる。ブランドにとって、ソーシャルの状況を察知し、コンテンツを製作し、マーケティングにつなげることは極めて重要だ」。
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1分で画像125万枚がアップロードされる時代
ただし、ソーシャルメディアを流通するUGCの数は膨大だ。60秒のあいだにFacebook、インスタグラム、Pinterest(ピンタレスト)、WhatsApp(ワッツアップ)、Snapchat(スナップチャット)だけで125万枚の画像がアップロードされているという。
Livefyreはここから画像の質、テキストの言葉使い、ハッシュタグなどから投稿の8割程度をフィルタにかけるという。「ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの大統領選討論会がいい例だ。討論会に関する投稿群は『ごちゃごちゃ』だ。数百万の投稿があるが、Livefyreは数千までフィルタをかけることができる」。この機能によりAdobeがLivefyreの買収を決めたという。
ブランドに関する投稿にはポジティブ/ネガティブの双方がある。「ポジティブなものに関してはプロモートするという選択肢がある。ネガティブなものにもフィルタはかけない。たとえば、レストランチェーンの場合は『この食事はうまくない』『しょっぱすぎる』などがあるが、ブランドはそれを知りたい。とても価値のある意見だ」。
反応速度とパーソナライズ
Livefyreを組み入れたAdobeのクラウド製品群により、ブランドは迅速に、個人が生み出しているUGCからソーシャルプロファイルをし、アクションをとれると語った。「たとえば、ある人が野球が好きで、私はロードレースが好きで、ロードレースのコンテンツを求めているとする。パーソナライズされたコンテンツを渡したい。ソーシャルプロファイルにより得た情報(ロードレース好き)をもとに、コンテンツをパーソナライズして提供することができる」。
クレッチマー氏は米新興メディア「Mashable(マッシャブル)」の取締役も務めており、コンテンツをどうオーディエンスに届ければいいかに精通している。MashableはBuzzfeedと同様に「シェア」を重視する戦略を取る米新興デジタルメディアの代表格。ソーシャル上で盛り上がる話題を見つけ出し、即座にそれをコンテンツに加工しソーシャル上に投稿。さまざまな戦術を用いてシェアを誘発させる。

「UGCに対応する速度が重要だ」と語るAdobe Livefyre統括責任者ジョーダン・クレッチマー氏
「Facebookでブランドがオーガニックにコンテンツを多くの人にリーチさせたいとき、シェアを獲得する必要が出てきた。マッシャブルがとるような戦略では、記事をたくさんつくって投稿する。それがトラクションを生み出すとアナリティクスツールで見極めた投稿に対し、素早くお金をつかってプロモートする。数十万円程度だろう」
「この戦略は資金が必要になることを意味している。素晴らしい点はその投稿が良いものであれば、以前よりも素早く拡散することだ。ブランドは以前より投稿を見てもらいやすくなった。ひとつのコンテンツを4カ月かけて作ることは奨めない。短い期間で40個のコンテンツを投入し、良いものをプロモートする方がうまくいく」
自動動画製作も見越す
UGCの海であるソーシャルは世代間での断片化が起きていることにも留意しないといけない。米国では近年Snapchatがミレニアル世代(1980〜2000年生まれの若年層)にみるみるうちに浸透した。「若いオーディエンスは皆、Snapchatをやっている。ブランドは皆、将来の消費者の心を掴んでおきたいからそこに投資する。常に新しいプラットフォームが現れる可能性はあるが、新しいのに完全に乗り換えるのではなく、同時並行で携わらなければいけない」。
ビデオ消費が爆発的に増えている。「ブランドは動画の画質に関して哲学をリセットしないといけない。いまのうちはクオリティは悪くてもいい。皆が10分間の美しいビデオをつくれるようにするツールは存在しないからだ」。クレッチマー氏は、Adobeは画像、Webストーリー、動画を簡単に製作できる「Adobe Spark」を開発していることに触れた。モバイルアプリからの操作も可能で「どこでも製作できる」と語った。「将来的には撮影内容のアクションに応じた自動的な編集、フレームに応じた自動的な切り取りやプログラマティックな編集を提供する可能性がある」。
Written by 吉田拓史
Photo by Thinkstock