2016年は、アドテク業界にとって悲喜こもごもの1年だった。いずれにしても、多様なアドテク業界では、好むと好まざるとにかかわらず、いくつかの企業が注目を浴びることとなった。2016年のアドテク業界で目立った勝ち組と負け組を紹介しよう。
2016年は、アドテク業界にとって悲喜こもごもの1年だった。
アドテクに投資するベンチャーキャピタルは勢いが衰えたものの、合併や買収の件数は増加した。また、虚偽ニュースがメディア業界でもっともホットな話題のひとつとなり、虚偽ニュースを広めて利益を上げるアドテク企業の存在がかつてないほどクローズアップされたが、一方で、虚偽ニュースサイトに広告が配信されないようにしようとする企業もあった。いずれにしても、多様なアドテク業界では、好むと好まざるとにかかわらず、いくつかの企業が注目を浴びることとなった。
2016年のアドテク業界で目立った勝ち組と負け組を紹介しよう。
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Winners / 勝ち組企業
測定や評価を手がける企業:虚偽ニュースの増加は、ブランドイメージを守るベンダーにとって絶好のPRのチャンスとなった。怪しげなコンテンツが急速に広まり、Facebookが測定のミスを繰り返すなかで、広告測定を手がけるモート(Moat)、トラストメトリクス(Trust Metrics)、インテグラルアドサイエンス(integral ad science)といった企業に対するニーズが高まっている。
「測定や評価を手がける企業は、関心のある顧客を見つけるのに苦労しないはずだ」と、アドテク企業のアンダートーン(Undertone)の共同創設者であるエリック・フランキ氏は言う。
パーチ(Purch):「トップ・テン・レビューズ(Top Ten Reviews)」や「ライブ・サイエンス(Live Science)」を運営するテクノロジー系サイトネットワーク企業のパーチは、取引戦略を強化するためにデータサイエンスティストの人数を増やした。また、サーバー・トゥー・サーバーの採用を早くから進めたほか、読者のエンゲージメントを測定する新しいスコアを開発し、古くさいページビューの利用をやめた。
「パーチはアドテクの自社開発に投資している数少ないメディア企業のひとつであり、うまく進んでいる」と、デジタルアドネットワークのバイセルアズ(BuySellAds)でCEOを務めるトッド・ガーランド氏は述べている。
トレードデスク(Trade Desk):トレードデスクは、2016年に新規株式公開(IPO)を行った唯一のアドテク企業で、同社のIPOは大きな影響を与えた。投資銀行ルマ・パートナーズ(Luma Partners)のレポートによれば、トレードデスクのIPOがなければ、アドテク企業の株価(下のグラフのオレンジ色の線)は対前年比で下落していたはずだ。

トレードデスクを抜いた、アドテク企業の株価推移(オレンジ)/出典:ルマ・パートナーズ
だが、トレードデスクを含めると、アドテク企業の株価は上昇する(下のグラフのオレンジ色の線)。同社のIPOは「株式を公開しているアドテク企業にとって唯一の明るい材料であり、これに続く企業が現れる兆候だといえる可能性がある」と、レポートには書かれている。

アドテク企業の株価推移(オレンジ)に、トレードデスクを加えると、2016年後半に盛り上がりができる/出典:ルマ・パートナーズ
中国の投資家:スマアト(Smaato)、メディアネット(Media.net)、アップラビン(AppLovin)は、2016年に中国の投資家に買収された大手アドテク企業だ。
「(中国の)テクノロジー(投資家)は、自分たちが勝者になるための手段を手に入れた。これからは、彼らが何をもたらすかに関心が集まるだろう」。
Losers / 負け組企業
コンテンツレコメンドエンジン:アウトブレイン(Outbrain)、タブーラ(Taboola)、レブコンテント(Revcontent)は、虚偽ニュースサイトに利益をもたらす役割を果たしたとして、大統領選挙後に突然注目を浴びることになった。
フランキ氏の言葉を借りれば、「大きなビジネスになってはいるが、彼ら(レコメンドベンダー)は非常に大きなプレッシャーにさらされている」となる。
オペラ・ソフトウェア(Opera Software):オペラ・ソフトウェアにとって2016年は重要な年になるはずだった。だが、規制とプライシー上の懸念から、中国企業グループへの売却は承認されなかった。ブラウザ事業など一部の事業を売却することは認められたものの、会社全体の売却には失敗したため、同社の株価は下落した。いまだに株価は、買収失敗前の7月より低い状態だ。
ルビコンプロジェクト(Rubicon Project):ルビコンの株は、1月には1株あたり約15ドルで取引されていた。だが、12月中旬の時点で、1株あたり7.90ドルにまで下落している。同社が犯した最大の失敗のひとつは、ヘッダー入札の採用が遅れたことだった。
ルマ・パートナーズのブライアン・アンデルセン氏は次のように述べている。「(パブリッシャーにとって)ヘッダー入札への移行は徐々に起こるように思われた。だが、ルビコンの失敗は、(ヘッダー入札への移行が)予想より大きく進んだことを示している」。
米ヤフー(Yahoo!):2016年に入り、米ヤフーにとって大きな問題は、かつての企業価値を大きく下回る価格でベライゾン(Verizon)に買収されようとしていることだった。パフォーマンスマーケティングプラットフォームを手がけるアクイジオ(Acquisio)のCROであるデーブ・マキニンチ氏は、「米ヤフーが買収されてベライゾンの一部となることは、期待はずれと言うよりむしろ不可避だった」と述べていた。
だが昨年9月、米ヤフーは少なくとも5億件のアカウントがハッキングされたことを発表。そして12月には、それとは別のデータ漏えいにより、9月の2倍にあたる数のアカウントがハッキングされたことを明らかにした。
12月の発表のあと、ウェブルート(Webroot)のアナリスト、タイラー・モフィット氏はガーディアン(Guardian)の取材に対して次のように語っている。「今の段階で、ヤフーに信頼を置いている人はだれもいないはずだ」。
Ross Benes(原文 / 訳:ガリレオ)
Image from Thinkstock / Getty Images