アドテク企業 スーパーオーサム は、なぜいま注目なのか?:「子ども」中心の広告ソリューション

いま、アドテク業界のある分野では、壁の崩落が起きている。だが、その一方で、ニッチな課題に明確なソリューションを提供する企業や、予測可能な収入または利益を得られる企業を中心に、いまも業績を伸ばしているアドテク企業がある。その直近の事例が、プライバシー対策に重点を置く、子ども向けのテクノロジー企業、スーパーオーサム(SuperAwesome)だ。スーパーオーサムは、1月27日、マイクロソフト(Microsoft)のベンチャーファンドM12が主導する資金調達ラウンドで1700万ドル(約18.6億円)を調達したと発表した。

2013年に設立され、米国に本拠を置くスーパーオーサムは、米国の「児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)」と欧州の「一般データ保護規則(GDPR)」に準拠しながら、子ども向けのウェブサイトとアプリに広告を配信するためのテクノロジーを広告主に提供している(COPPAとGDPRはいずれも、特定の児童のプロフィールに対して直接広告配信することを禁じている)。

スーパーオーサムの広告プラットフォームはアプリやサイト内のコンテンツを分析し、それを適切な広告と照合する。そのアプローチは、広告とユーザープロフィールの照合にサードパーティCookieを利用しがちな大人向けのアドテクプラットフォームとは一線を画する。

スーパーオーサムは現在、マテル(Mattel)、カートゥーンネットワーク(Cartoon Network)、レゴ(Lego)など、300社以上の企業と連携。最高経営責任者(CEO)のディラン・コリンズ氏によると、同社はこれまでに総額3700万ドル(約40億円)の資金を調達してきたといい、2019年には5500万ドル(約60億円)の収益をあげ、さらに昨年は黒字転換を果たした。

投資家にとって「奇妙な盲点」

広告事業(同社の最大の収入源)とは別に、スーパーオーサムはポップジャム(PopJam)という子ども向けのコンテンツプラットフォームと、キッズウェブサービシーズ(Kids Web Services)という親の同意管理プラットフォームも提供している。

さらに、子ども向けコンテンツのクリエイター向けに、ルッカズ(Rukkaz)という動画ストリーミングプラットフォームも開発。1月初頭、YouTubeは子ども向け動画へのターゲット広告の配信を停止しはじめた。スーパーオーサムの経営陣は、この措置によって生まれた空隙を埋めるために、コンテンツクリエイターたちがこの新しいプラットフォームを利用してくれればよいと考えている。YouTubeのポリシー変更の背景には、同社が子どもの個人データを親の許可なく違法に収集したという米国連邦取引委員会(FTC)とニューヨーク州司法長官の訴えに対して、1億7000万ドル(約186億円)の制裁金を支払って和解したという経緯がある。この金額は、児童オンラインプライバシー保護法の執行に伴う制裁金としては過去最高額とされる。COPPAとGDPRはともに、児童の個人情報を親の同意なく利用することを禁じている。

スーパーオーサムに対するM12の投資は、マイクロソフトが子ども向けの人気ゲーム「マインクラフト(Minecraft)」や、ビデオゲームのライブストリーミングプラットフォーム「ミクサー(Mixer)」を所有していることを考えると、ことさら刮目に値する。

5歳から15歳の個人が全インターネットユーザーの40%を占めるとコリンズ氏は言い、その事実にもかかわらず、「キッズ分野への投資はあまりに少ない」と指摘する。そして「キッズテック」は投資家たちにとって「奇妙な盲点」となっていると言い添えた。コリンズ氏が言及する40%という数字は、PwCがスーパーオーサムの委託で行った2019年の調査「2019年子どものためのデジタルメディアに関する報告書」を根拠としている。

ブランディングできたベンダー

スーパーオーサムの事業は、広告主によるプライバシー規制の遵守や、フリクエンシーキャップのような追加的な安全措置の実装を助けることにより、「広告主たちがプレミアム価格を支払うかなり有望な市場」の整備に貢献する。こう指摘するのは、ピュブリシス(Publicis)傘下のメディアエージェンシー、ゼニス(Zenith)でグローバルディレクターを務めるアンドリュー・ジュード・ラジャナサン氏だ。ラジャナサン氏はこれまでも、レゴ、ハズブロ(Hasbro)、マテルのようなキッズブランド向けに、広告の買付を行ってきた。

「多くのハイテク企業は、ロゴを隠せば、みな同じに見える」とラジャナサン氏は言う。「だがスーパーオーサムは、ブランド広告主にとって非常に明確[かつ有効]で、大きな収益機会を握っている」。

スーパーオーサムの資金調達のニュースの直前には、アプリ広告の効果測定サービスを提供するアップスフライヤー(AppsFlyer)がシリーズDラウンドで2.1億ドル(約231億円)を調達したと報じられた。このような投資ラウンドは、昨今のアドテク部門に見られる支配的な語り口とは逆行する。ネット専業のアドテク企業に対するベンチャーキャピタルの関心はすっかり冷え込み、このところいくつものアドテク企業が投げ売り倒産の憂き目に遭っている。

Cookie規制とはほぼ無縁

しかも、Googleが今後2年以内にChromeでのサードパーティCookieのサポートを終了すると1月半ばに発表してからこちら、アドテク企業幹部たちの動揺はいまだ冷めやらない(コリンズ氏によると、子ども向けのデジタルプライバシー環境は法的拘束力を持つ「完全にゼロデータ」規制に沿って運営されるため、スーパーオーサムの事業はChromeのCookie規制の発表とはほぼ無縁という)。

「市場で質の高い製品やサービスを提供する企業は、十分なスケールと適正なバランスシートさえあれば、誰でも生き残り、順調に成長できるし、そうでなければそれまでだ」と、スーパーオーサムのコリンズ氏は語る。「キッズ関連の事業はまったく勝手が違う。キッズ領域のルールが大人の領域のルールとはまったく逆であるからだ」。

Lara O’Reilly(原文 / 訳:英じゅんこ)