アドテクの価格はこれまで、メディアが表示される割合、つまりCPM(インプレッション単価)モデルによって決められてきた。このやり方は、テレビ、ラジオ、印刷物でブランドを知ってもらうアウェアネスに基づいて広告を購入することに慣れているブランドやエージェンシーにとって、理にかなっていたのだ。
だが、アドフラウド(広告詐欺)がはびこり、ボットのトラフィックが業界で数十億ドル分のお金を無駄にしている現在、アドテクは、メディアベースの価格決定モデルから、パフォーマンスベースのモデルや定額制モデルに移行する必要がある。
アドテクの価格はこれまで、メディアが表示される割合、つまりCPM(インプレッション単価)モデルによって決められてきた。このやり方は、テレビ、ラジオ、印刷物でブランドを知ってもらうアウェアネスに基づいて広告を購入することに慣れているブランドやエージェンシーにとって、理にかなっていたのだ。
だが、アドフラウド(広告詐欺)がはびこり、ボットのトラフィックが業界で数十億ドル分のお金を無駄にしている現在、アドテクは、メディアベースの価格決定モデルから、パフォーマンスベースのモデルや定額制モデルに移行する必要がある。
「CPMは、デジタルが生み出せる付加的なメリットをすべて反映しているとはいえない」と語るのは、マーケティングコンサルティング企業のジュングループ(Jun Group)でマーケティング担当シニアディレクターを務めるコーエン・アスラテイ氏だ。「CPA(成果あたりのコスト)などパフォーマンスに基づいて対価を払い、またメディアミックスの一環として、オプトイン式でユーザーに嫌がられないやり方を取り入れるブランドが増えている」。
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将来的には、アドテクはマーケティングテクのようになる必要があるだろう。マーケティングテクでは、SaaS(ソフトウェアとしてのサービス)を広く採用することで、テクノロジー部分の料金を算出してメディアの実際の価格を明らかにしていると、プログラマティック広告プラットフォームを手がけるサンダー(Thunder)のビクター・ウォンCEOは指摘する。
「メディアアービトラージ(テクノロジー料金が明確にならない、すべてをまとめる価格方式)は長期的なソリューションにはなりえない。この方式は結局のところ、人々に十分な価値を提供しないのだ」と、ウォン氏は語る。「これが成り立つのは、市場が価格のミスマッチに気づき、ミスマッチを解消するまでのあいだだけだ。業界は今後、インプットを新しい製品に転換する方法を学ぶことが必要になる」。
成果へのフォーカス
アドテクは統合の真っ最中だが、インプレッションやビューといったソフトな指標を頼りにしていた企業にとってはもっと大きな問題がある。アドテクは、売上やクレジットカードの登録など、ユーザーのエンゲージメントやビジネスの成果を示す、よりハードな指標を利用する必要がある、と指摘するのは、アドテク企業のパフォーマンスホライズン(Performance Horizon)で、マーケティング担当バイスプレジデントを務める、エリック・ミキスク氏だ。
クリテオ(Criteo)やメディアマス(MediaMath)など急成長するアドテク企業にとっては、パフォーマンスへのフォーカスが有効であることは証明されている。クリテオはCPC(クリックあたりのコスト)モデルを採用しているが、コンバージョンを最適化しており、クライアントはコスト1ドルあたり14ドルの売上を上げていると同社は説明するのだ。メディアマスは広告費あたりの増加利益を表す指標を採用し、広告費と実際の売上(さらには粗利益)を比較している。
「(広告の費用対効果は)もっとも純粋なマーケティング指標だ。クリック数を重視するベンダーのほとんどは、CPCに基づいて価格を決めているが、CPCは実際の売上には必ずしも関連していない。人々は広告をクリックするが、購入することは決してないのだ」と、メディアマスのシニアバイスプレジデント、ダン・ローゼンバーグ氏はいう。「また、CPCは簡単に捏造できる。ボットはクリックをシミュレートすることができる。ただ、実際に支払われる金額をシミュレートすることはできない」。
モバイルでは、広告主が目的の成果に対してパブリッシャーに対価を払うCPAビジネスモデルがうまく機能すると述べるのは、モバイルアドテク企業のビッドモーション(BidMotion)でマーケティングおよびコミュニケーションの責任者を務めるアマンダ・メータラ氏だ。CPAの指標になりうるのは、タクシー呼び出しアプリの新しい乗車あたりのコストや、旅行アプリの予約あたりのコスト、eコマースサイトの収益分配モデルなどだという。
「このような、価値を重視するビジネスモデルがアドテクの未来だと我々は確信している。モバイルマーケターが量を重視する指標から離れ、広告の費用対効果を正確に測定することの必要性をますます自覚しているからだ」と、メータラ氏は語る。
SaaSモデルの採用を進めるアドテク企業
インベントリベースの価格決定モデルは別として、メディアアービトラージでは、マージンをテクノロジーの料金のなかに隠してしまうことができる。ミレニアルメディア(Millennial Media)、ユーミー(YuMe)、ロケットフューエル(Rocket Fuel)といった第1世代のアドテク企業は、アドネットワークモデルとメディアのアービトラージモデルを採用しており、将来の収益の確認や予測が難しいことから世間的にイメージの悪い企業になってしまったと、マーケティング自動化ソフトウェアを手がけるパブマティック(PubMatic)のラジャエフ・ゴーエルCEOは述べる。
だが、アービトラージモデルから離れようとするアドテクプラットフォームが増えている。ルビコンプロジェクト(Rubicon Project)、トレードデスク(Trade Desk)、メディアマスなどの企業は、テクノロジーの料金をマージンと一緒にしないで、クライアントが確認できるようにするため、SaaSモデルを採用しているのだ。
「SaaSによって市場の透明性が高まる可能性がある。広告主は、すべてが含まれた最終的なメディアコストやデータコストではなく、テクノロジーの料金や仲介業者の手数料を確認できるようになる」と、アドテクの開発を手がけるクリアコード(Clearcode)のマシエフ・ザワジンスキCEOは述べる。
企業幹部らとの会話でわかったことは、アドテクがSaaSに向かっている理由は、透明性を拡大できるだけでなく、ベンチャーキャピタリストが、広告運営サービスの収益より経常収益に関心を抱いているからということだ。多くの企業がSaaSモデルによって成長しているが、ターン(Turn)のような企業は、このフレームワークに偶然行き着いた。SaaSの大きな問題のひとつは、マーケターは通常、キャンペーンごとにマーケティング予算を組むため、テクノロジーをライセンス利用するための追加予算を捻出できないことにある。
「エンタープライズソフトウェアはCMOにとって、まだ比較的新しいものであるため、我々は、マーケティング予算に合わせて調整しやすい方法で価格を設定している」と、メディアマスのローゼンバーグ氏は述べる。「CIOとCTOは、SaaSの価格決定モデルに基づいて予算を割り当ててきた経験が豊富なため、SaaSのことをよくわかっている」。
エージェンシーやブランドがこのモデルに適応するまでには、長い時間がかかるだろう。問題は、エコシステムのほんの一部の企業だけがこのテクノロジーをベースに課金を行い、残りの企業がメディアベースの価格設定を続けるなら、マーケターにとっては、浪費や詐欺をなくすインセンティブを持たない機能不全のエコシステムしか存在しなくなることだ、とクリアコードのザワジンスキ氏は語った。
Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)
Image from Thinkstock / Getty Images