ストリーミング戦争で、広告の高騰を懸念するバイヤーたち

ストリーミング業界の争いは、広告業界に不安をもたらしはじめている。Netflix(ネットフリックス)、ディズニー(Disney)、ワーナーメディア(WarnerMedia)が広告なしのストリーミングサービスに主にフォーカスするなか、広告バイヤーたちはこの争いに巻き込まれて、大きなオーディエンスにリーチしようとするとコストが高くなるのではないか、と心配しているのだ。

カリフォルニア州パームスプリングスで最近行われた米DIGIDAY主催のビデオアドバタイジングサミット(Digiday Video Advertising Summit)では、ブランドやエージェンシーのエグゼクティブたちとの会話において、ストリーミング業界の争いが広告在庫へ潜在的にどのような影響を与えるか、が話題として何回も上がった。広告バイヤーたちのあいだで広がりつつある懸念の最前線がここにある。従来のテレビ視聴が引き続き衰退しているなか、自宅の大画面を見つめる大勢のグループを対象に広告を見せる、という機会が不足しつつあるのだ。

現在進行形のストリーミング競争の激化がこの傾向を加速させるのかどうか、そしてどのような結末が待っているのか、がバイヤーたちの関心だ。グループ・エム(GroupM)によると、昨年と比較して今年のテレビ広告収益は7%減少すると予想されており、広告支出の投入先としてストリーミング業界も機会を提供しているものの、テレビ広告収益の減少を相殺する規模ではない。

広告バイヤーらの懸念の背景

広告サポートをしていない在庫がどのようなプレッシャーをOTTに与えているのか、それが長期にわたってどのような形でまとまっていくのか。現状ではリニアテレビの方が大きなスケールを持っているが、最終的にはそれも移行する。しかし、その際に、どのように移行するのか?」と、多くの広告バイヤーたちの疑問と声を揃える形で、ひとりのエージェンシー・エグゼクティブは語った。

すでにマーケットに存在している、もっとも人気があるストリーミングサービスのなかにはNetflixやAmazonプライム・ビデオ(Amazon Prime Video)のような広告なしのサービスが存在する。しかし、ひとりのエージェンシー・エグゼクティブによると、広告をサポートしているオプションから、これらのプラットフォームがどれだけ視聴者を吸い上げているとしても、動画広告の予算に影響を与えるにはまだ至っていない、とのことだ。「しかし、まだ初期段階にあると、私は思う」と語った。

オーディエンスが広告をサポートするテレビから、広告なしのストリーミングへとメインの視聴体験を移行させるのではないかと広告バイヤーたちは心配している。そして、それが広告価格に与える連鎖的な影響を懸念している。Hulu(フールー)の広告なしプランよりもコマーシャル付き限定サブスクリプションの方が人気であることからも、今後も継続して広告の機会は存在し続けるだろう。しかし、こういった機会はストリーミングのプレイヤーたちがテレビネットワークと比較すると、広告の数を減らし、価格を高く保っている点からも、限定的になるだろう。コネクテッドTVの広告価格はすでに一般的にはケーブルTVの広告価格よりも高くなっている。コネクテッドの場合は20ドルから40ドル(約2200円から約4400円)のCPM、ケーブルテレビの場合は10ドルから12ドル(約1100円から約1320円)だ。eマーケター(eMarketer)の推計では、米国の広告主たちは2020年にコネクテッドTVの広告支出を28%増加させるとなっている。需要が増加し、供給が限られることでさらに広告価格が上がる可能性がある。

NBCユニバーサル(NBCUniversal)は、OTTサービスのピーコック(Peacock)によってストリーミング業界へ参入する。ピーコックは主に広告をサポートする予定だ。しかし、NBCのテレビ放送と比べると番組ごとの広告の数は少なくなるだろう。一方で、Huluは従来とは異なる広告フォーマットをプッシュしている。一時停止の際に表示される広告がその一例だ。これは今後数年以内に広告収益の半分は「番組視聴を邪魔しない形での広告」由来にしようとする取り組みの一環だ。そしてAmazonはプライム・ビデオにおけるプレミアリーグ(Premier League)のライブストリームの広告読み込みを削った。その一方で、従来のテレビと比べての広告のコストを増加させている。

Netflixとディズニーの攻防

Netflixが広告を導入する展開は、広告主たちが混乱のなかで描く夢でしかない。2019年7月にもNetflixは広告をサポートするプランを導入する計画はないと明言しており、これまでも何度も明らかにしてきたことだ。しかし、ディズニープラス(Disney+)やApple TV+と言った他社と競合するなかで、Netflixはいずれ考えを改めなくてはならないだろう、と広告バイヤーたちは論じ続けている。ディズニープラスもApple TV+も、どちらもNetflixに人々が通常支払う金額の半分以下に利用料金を設定している。さらにディズニーはディズニープラス、Hulu、そしてESPN+をセットにして13ドルで提供している。これはNetflixのもっとも人気のサブスクリプションプランと同じ値段だ。

「ディズニーは参入して、マーケットに爆弾を投げこみ、これが今後の値段設定になるんだ、と宣言した形だ。(ほかのプレイヤーたちは)広告を持ってなければ、生き残ることはできない」と、もうひとりのエージェンシーエグゼクティブは語った。エグゼクティブの大袈裟な表現は広告バイヤーたちがどれだけ不安を抱えているかを反映している。

Tim Peterson(原文 / 訳:塚本 紺)