TikTok は、なぜ 教育コンテンツ へ17億円も投資するのか? :「成熟へのシフトのため」

この1年間、Z世代の大きなユーザー基盤が情熱を注ぎ込み、人気を博している突飛な短編ダンス動画のおかげで、TikTokの成長は著しくなっている。分析企業のセンサータワー(Sensor Tower)によると、2020年第1四半期だけでインストール回数が3億1500万回に達し、アプリとして史上最高のダウンロード回数の記録を作った。

TikTokは現在、新しいスキルの説明や指導を行う人々の動画がそうした成長をテコ入れし、将来的にもっと大きな役割を果たすと見込んでいる。

TikTokは、欧州のTikTokで教育動画をキュレートする「#LearnOnTikTok」の正式ローンチに1300万ポンド(約17億3400万円)を投入しようとしているという。このハッシュタグはもともと、2020年初頭にアプリのユーザーが作ったもので、料理レッスンや科学的事実、歴史のような新しいスキルを教える動画を集めるのに利用された。TikTokの投資は、アプリ向けにさらに多くの教育的なコンテンツを人々に作成させる一種の助成金となる。

「教育分野に幅広く種をまく」

投資の一部は、司会者で数学者のレイチェル・ライリー氏や俳優のショーン・サーガー氏のような有名人に回され、それぞれレギュラー動画で数学や演技に関する情報が共有される。残りの資金は、ケンブリッジ大学のような組織や英国各地の史跡、さまざまな分野で活躍するほかのプロフェッショナルな専門家に充てられる。

ゆくゆくは、数百人の教育者や現実世界で使われるスキルの生みの親、#LearnOnTikTok向けにコンテンツを作成する非営利団体が現れると、TikTokの欧州担当ゼネラルマネージャーを務めるリッチ・ウォーターワース氏はいう。そうした制作者の一部は、TikTok社内のクリエイティブチームと直接協力して動画を制作し、ほかの制作者は独自に動画を制作する。

「この投資を利用して、教育分野に幅広く種をまく」と、ウォーターワース氏は語る。「この数週間で、#LearnOnTikTokの動画の視聴回数は、100万強の動画で70億回を超えた」。

広告主にとっても魅力的な可能性

教育コンテンツは、インターネットがもたらす大量の常軌を逸した動画を警戒する広告主にとっても、一段と魅力的な可能性がある。実際、ロックダウン中にTikTokが軽い気晴らしやエンゲージメントを獲得した経緯に興味を惹きつけられているプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やケロッグ(Kellogg’s)のマーケターに、増加中であるその多くの若いオーディエンスは注目されている。ウォーターワース氏が説明したように、「教育コンテンツによって広告主から見てもっと魅力的になれるよう願っているのは確かだ。広告主は、TikTokから信じられない水準のエンゲージメントを獲得できる手段に注目しており、教育コンテンツはその延長であり得る」。

「TikTokは、1500万ドル(約16億円:平均で制作者1人当たり150万ドル[約1.6億円])の投資により、教育に焦点を当てた高品質のコンテンツクリエイターを厳選した。量よりも才能の質に対する真の投資総額だ」と、メディアエージェンシーのゼニス(Zenith)でグローバルディレクターを務めるアンドリュー・ ジュード・ラジャナサン氏はいう。「モバイル時代に合わせて考案された、さらなるイノベーションや新しいエンターテインメント企業にとって、機は熟している」。

教育コンテンツは常にTikTokの視野に入っていた。人々はますます、料理やライフハックなど、新しいスキルを学ぶためにTikTokを利用している。こうした使い道は十分に顕著で、TikTokはインドで教育プログラムを開始したところ、2億人を超えるユーザーが集まった。TikTokは当時、プラットフォーム上のより教育的なコンテンツに資金を出すと述べていた。だが、ステイホーム中にそうしたコンテンツを視聴する人が急増し、TikTokの幹部は計画を加速しようと考えた。事実、金額は5000万ドル(約53億円)だが、米国で教育ビデオに同様の出資を開始しつつある。

プラットフォームとしての成熟

「TikTokによるこうした動きは、プラットフォームにとって成熟への移行、つまり、選ばれたソーシャルプラットフォームのポートフォリオ内で大手になる方向へのシフトのように感じられる」と、インフルエンサーエージェンシーのザ・プロジェクツ(The Projects)でアカウントディレクターを務めるジェームズ・シルバーストーン氏は語る。

シルバーストーン氏は次のように付け加えた。「マーケティングの視点から言えば、プラットフォーム上のコンテンツを多様化すると、単に商業的なものではなく、コンテンツをめぐるより戦略的な提携の可能性や、本物の適切なやり方でユーザーがブランドと関わる機会、ブランドが助けになって役に立つコンテンツを制作する機会が開けるものだ」。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)