最近、視聴者がコンテンツを消費する方法が大きく変化してきた。平均的な米国の家庭は、ネットに接続したデバイスを11台所有している。消費者の40%以上が、コネクテッドTV(CTV)デバイスを使用してコンテンツを毎日ストリーミ […]
最近、視聴者がコンテンツを消費する方法が大きく変化してきた。平均的な米国の家庭は、ネットに接続したデバイスを11台所有している。消費者の40%以上が、コネクテッドTV(CTV)デバイスを使用してコンテンツを毎日ストリーミングし、77%の世帯がCTV世帯と見なされている。それにもかかわらず、リニアTVが依然としてメディアを消費するための妥当なチャネルとして存在し続けている。ブランドは、キャンペーンの最適化を可能な限り効率的に行うために、デジタルとリニアの収束に備えて戦略を転換する必要がある。
数年前ならば、コネクテッドTVに関して ブランドが知っておくべき用語の辞書は完結していたように思われた。しかし、CTVの急速な成長につれて、バイヤーが戦略的で収益性の高い予算配分を決定するために理解すべき用語や新しいニュアンスが著しく増加してきた。
ここで新しい用語を詳しく見る前に、まず、よくある誤解を解いておこう。「CTV」と「スマートTV」は同義語ではないのだ。すべてのスマートTVにはインターネットジャックが組み込まれている。一方、デジタル動画をストリーミングできるすべてのタイプのTVが、CTVとしての条件を満たしている。すべてのスマートTVはネット接続されている「コネクテッド」だが、ロク(Roku)、Amazon Fire Stick、Apple TV、さらにはビデオゲームコンソールなどのデバイスからコンテンツをストリーミングできるTVも同様に「コネクテッド」なのだ。
さて、以下に、今日のCTVの文脈でバイヤーが知っておくべき用語を説明しよう。
消費モデルについて
ビデオオンデマンド(VOD)は、消費者がリアルタイムにストリーミングコンテンツを視聴したり、プログラムをダウンロードし、後日に視聴することが可能なインタラクティブTVテクノロジーである。消費者は、複数のネットワークを介して、このプログラムやコンテンツにアクセスできる。CTVに関して、以下の4つの主要なVODフォーマットを理解する必要がある。
- SVOD:サブスクリプション・ビデオ・オンデマンド(Subscription video on demand)サービスは、サブスクリプション料金と引き換えに、通常、無制限に消費できるストリーミング・ビデオ・コンテンツを視聴者に提供する。ほとんどのSVODサービスでは、広告配信はない。その例としては、Netflix、HBO Max、Disney +、Apple TV +が挙げられる。
- AVOD:広告動画オンデマンド(Advertising video on demand)サービスは、視聴者にストリーミング動画コンテンツを無料または割引価格で提供する。Huluは確実にSVODとAVODの境界線にまたがるサービスだが、広告によってサポートされた割引価格のサブスクリプション層を提供するサービスのひとつである。AVODモデルでは、広告収入がコンテンツの制作やその他のコストを支えている。
- BVOD:放送動画オンデマンド(Broadcast video on demand)は長編コンテンツを提供し、TV放送の後や前に、視聴者が裁量権をもって視聴するコンテンツである。コンテンツは、TV放送の体験を模倣するような、所定の広告番組用の小休止で、プレロール広告とミッドロール広告の両方によって資金が提供されている。
- TVOD:トランザクション・ビデオ・オンデマンド(Transaction Video on demand)によって、消費者はペイ・パー・ビュ方式でコンテンツを購入できる。例として、AppleのiTunesやAmazonのビデオストアが挙げられる。
機能
予算を最大限に活かすために、ブランドは、広告が消費者の注目を奪い合わないように万全を期す必要がある。同時に、パブリッシャーは、同じ広告の繰り返しで視聴者を退屈させないように万全を期す必要がある。フリークエンシーキャッピングや競合分離などの機能が重要なのは、このためである。
- フリークエンシーキャップ(Frequency capping):インターネットTVの視聴者が増えるにつれ、現在の繰り返し広告による荒廃がより大きな問題になってきた。技術的な方法によって、デジタル・ビデオ・プラットフォームがフリークエンシーを設定することが可能になり、フリークエンシーにキャップ(上限)を課すことによって、広告が事前に決めた回数以上に掲載されないようにできる。
- 競合分離(Competitive separation):この機能により、パブリッシャーの広告ポッド内で表示されるカテゴリとブランドの利害の衝突が起きたり、互いに競合したりするのを防ぐことができる。エンドユーザーにとって、この機能は、アド・ファティーグ(広告疲労)を軽減し、ブランドのメッセージをより強力な方法で消費者に届ける手段となる。
アイデンティティとターゲティング
マーケターとパブリッシャーは、正確なIDとターゲティングソリューションを提供し、デバイス全体でスマートなターゲティングと測定を可能にするテクノロジー・プラットフォームを必要としている。
- IFA:OS端末の広告識別子(Identifier for Advertising)は、デバイスIDを提供すると同時に、エンドユーザーが、広告主やアプリによってアクセスされるデバイスおよび消費者情報を制限する機能を提供する。IAB Tech Labによると、IFA自体に加えて、広告および測定プラットフォームは、IFAやIFAタイプのソースを識別する必要がある。これは、デバイスで生成される(したがって、アプリ全体で使用される)、パブリッシャーやSSPによって提供される、または一時的IFAやセッションIFAの場合がある。このコンテキストがないと、IFAの有用性には限界がある。
- 確定ID vs. 確率ID(Deterministic vs. probabilistic IDs):確定IDは、認証されたサービス間でリンクされたサブスクライバー・データに基づいている。確定IDによるマッチの利点は、顧客IDを検証できることだ。確率グラフには多くの場合、より大きなスケールがあるが、主に過去の動作と統計分析に基づいてモデル化されているため、精度と正確さが低い可能性がある。
- 行動ターゲティング(Behavioral targeting):バイヤーは、検索履歴やその他の手段で利用できる過去の行動や興味に基づいて消費者にリーチし、それらのメッセージと関心の高いユーザーを照合する。
- 動画コンテンツのメタデータ(Video content metadata):コンテンツの長さ、配信タイプ(VODやストリーミング)、ジャンル、番組のタイプ(映画、シリーズ、イベントなど)など、広告リクエストの前、最中、または後に動画コンテンツを説明する情報。
- 一意のアプリ識別子(Unique app identifier):一意のアプリ識別子は、広告主が購入しているアプリを識別して理解するための標準化された方法を提供する。これまで、動画やCTVのバイヤーがこれを利用することはできなかった。このような識別は、広告ターゲティングの観点から重要であり、インベントリーのコンテキスト識別もサポートする。
- 世帯別ターゲテイング vs. デバイス別ターゲティング(Household vs. device-based targeting):アドレス指定可能なテレビと同様に、世帯別ターゲティングとは、広告が世帯に基づいて消費者にリーチすることを意味する。ふたつの家庭がCTVを介して同じ番組を見ている場合でも、さまざまな識別子に基づいて、異なる広告を見る可能性がある。デバイス別ターゲティングとは、広告主が、視聴者が使用しているデバイス(CTV、携帯電話、デスクトップなど)に基づいて視聴者にリーチできることを意味する。
クロススクリーン キャンペーンの考慮事項
クロススクリーンキャンペーンによって、ブランドは1回のバイイングでテレビとデジタルの両方で同じ視聴者にリーチし、パフォーマンスを理解するための有意義な分析とインサイトを得ることができる。このようなキャンペーンは、バイヤーが測定可能な方法で主要なオーディエンスに大規模にリーチするために不可欠である。
- オムニチャネルでの視聴者リーチ(Omnichannel audience reach):広告主は、すべてのデジタルデバイスを横断して視聴者のエンゲージメントを追跡できる。これらの広告主は、CTVクロスデバイス キャンペーンからリーチした固有のデバイスを測定することができ、Webサイトへのアクセスやオンライン購入などのオンライン・コンバージョンをそれらのキャンペーンにアトリビューションできる。
- クロス デバイス アトリビューション(Cross-device attribution):この実施では、オンライン、オフライン、モバイルアプリまたはフットトラフィックを介して、すべてのデジタルデバイスを横断してコンバージョンを特定のキャンペーンにアトリビューションする。クロスデバイス・アトリビューションは、ブラウジング、位置、視聴率のデータを組み合わせて、CTV、モバイル、デスクトップなどのデバイス間でストリーミングするオーディエンスにリーチする。
- TVとデジタルの統合(Converged TV and digital):有料TVの視聴者が減少し、メディア消費が断片化するにつれて、バイヤーとセラーは、集約されたインベントリーソースのすべてのフォーマットとすべての画面を横断して広告を計画・購入・測定する機能を求めて、TV広告とデジタル動画広告を統合する予定だ。
CTVの用語とそれらの定義(また、そのすべての要素)がこれまで変更されてきたように、新しい用語とそれらが表す概念は今後も新たに出現し続けるだろう。CTVが視聴者の注目と注意をますます抱き込むように成長するにつれて、マーケターと広告主たちは視聴者にリーチする方法を拡げつつある。そのすべてにおいて確実なことがひとつある。それは、マーケターや広告主が必要とする辞書が、ますます大きくなっていくことだ。
[原文:A buyer’s guide to new CTV terminology]
Written by Xandr EMEA動画市場開発責任者 オースティン・スコット