Shopify(ショッピファイ)エコシステムの最大手のの1社が、株式公開の申請を提出した。
クラビヨ(Klaviyo)はデータ収集とマーケティングオートメーションのプラットフォームで、主にShopifyの加盟店(マーチャント)向けのビジネスを行っているが、8月25日に株式公開を申請した。2012年に創設された同社は、6月30日時点で補正下着のスパンクス(Spanx)や、美容品のグロシエ (Glossier)、菓子のクランブルクッキーズ(Crumbl Cookies)など13万以上の顧客を抱えている。
同社のIPO(新規公開株)は、いくつかの理由で長きにわたって待望されてきた。今年のIPO活動は比較的低調で、株式市場への株式公開の数は前年比で減少している。また、Shopifyのアプリエコシステムを中心に成長したB2B新興企業として、はじめて株式を公開する企業のひとつでもある。今回のS-1(新規株式公開のための届出書類)によって、eコマース業界において、Shopifyでビジネスを構築する加盟店にサービスを提供することで、ビジネスがどれほど大きく成長できるかがようやく示された。
クラビヨと、インスタカート(Instacart)のS-1申請とともに、IPO市場回復の道筋を作り上げるかもしれない。クラビヨのS-1に、収益性と収益の着実な成長が示されているのは重要な点だ。クラビヨから強力なIPOが発行されれば、ベンチャーキャピタリストはeコマースビジネスに、そしてそれらのビジネスにサービスを行うクラビヨのような企業への投資に関心を持つようになるかもしれない。
以下は、クラビヨのS-1のハイライトである。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
Shopify(ショッピファイ)エコシステムの最大手の1社が、株式公開の申請を提出した。
クラビヨ(Klaviyo)はデータ収集とマーケティングオートメーションのプラットフォームで、主にShopifyの加盟店(マーチャント)向けのビジネスを行っているが、8月25日に株式公開を申請した。2012年に創設された同社は、6月30日時点で補正下着のスパンクス(Spanx)や、美容品のグロシエ (Glossier)、菓子のクランブルクッキーズ(Crumbl Cookies)など13万以上の顧客を抱えている。
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同社のIPO(新規公開株)は、いくつかの理由で長きにわたって待望されてきた。今年のIPO活動は比較的低調で、株式市場への株式公開の数は前年比で減少している。また、Shopifyのアプリエコシステムを中心に成長したB2B新興企業として、はじめて株式を公開する企業のひとつでもある。今回のS-1(新規株式公開のための届出書類)によって、eコマース業界において、Shopifyでビジネスを構築する加盟店にサービスを提供することで、ビジネスがどれほど大きく成長できるかがようやく示された。
クラビヨと、インスタカート(Instacart)のS-1申請とともに、IPO市場回復の道筋を作り上げるかもしれない。クラビヨのS-1に、収益性と収益の着実な成長が示されているのは重要な点だ。クラビヨから強力なIPOが発行されれば、ベンチャーキャピタリストはeコマースビジネスに、そしてそれらのビジネスにサービスを行うクラビヨのような企業への投資に関心を持つようになるかもしれない。
以下は、クラビヨのS-1のハイライトである。
1. 数値:2023年前半に売上高3億2100万ドル(約472億円)、利益1520万ドル(約22億3000万円)
Shopifyのエコシステムで、ビジネスはどれだけ大きくなれるだろうか。クラビヨのS-1は、優に億ドル単位の売上を示している。同社は2022年の前半に2億800万ドル(約306億円)の収益をあげ、2023年の前半には3億2100万ドル(約472億円)を叩き出した。2022年通期の収益は4億7300万ドル(約695億円)に達した。
また、今年の前半には黒字も確保した。ウォールストリートは成長だけでなく収益性も重視するようになっているため、これは重要なマイルストーンだ。2022年の前半には2460万ドル(約36億2000万円)の損失を出していたが、2023年の前半には1520万ドル(約22億3000万円)の純利益を計上した。
2. クラビヨのIPOによってShopifyはさまざまな点で大きな勝利を得る
クラビヨのIPOは、いくつもの理由からShopifyにとって重要なマイルストーンだ。クラビヨはShopifyのアプリストアで成長した最大のビジネスのひとつになった。Shopifyがアプリストアを初めて立ち上げたのは2009年のことで、Appleのような方法でエコシステムを構築し、多くの開発者にShopify加盟店向けのツールを製作してもらうことを目標としていた。
一方、Shopifyはクラビヨの出資者でもある。Shopifyがクラビヨに1億ドル(約147億円)を投資していたことは2022年に明らかとなった。しかし、今回の新たな申請書類によって、Shopifyのクラビヨにどれだけの出資をしているのか、そして、両社のパートナーシップがどれだけ密接かを明らかにした。
クラビヨのS-1には「Shopify」という単語が198回も登場している。Shopifyが新興企業に投資するための法人であるShopify Strategic Holdings(ショッピファイ・ストラテジック・ホールディングス)は、クラビヨの11.2%の権利を保有している。
クラビヨのS-1には、2022年の契約の一環として、同社がShopifyと3つの個別の契約を結んだことも詳細に記されている。「提携契約と関連して、両社はレベニューシェア契約、普通株ワラント契約、株式譲渡契約という3つの個別の契約を締結した」。
レベニューシェア契約の一部として、「当社が提携契約に基づいて、Shopifyから受け取るマーケティングサービスの対価として、Shopify Warrants(ショッピファイワランツ)が発行された」。
3. しかし、Shopifyへの依存はリスクでもある
クラビヨのS-1によれば、2022年の年間次経常収益(ARR)の77.5%はShopifyプラットフォームを使用する顧客から得たものだ。しかし、顧客獲得のために有料マーケティングに強く依存しすぎていないことをウォールストリートに証明するために、クラビヨの提出書類には、これらの顧客の大半はインバウンドチャネルや、自社のマーケティング代理店パートナーなどほかの手段を通じて獲得したものであると述べられている。
また、クラビヨは顧客層の多様化も試みており、「2022年において、Shopifyのアプリストア(App Store)でクラビヨをインストールした顧客は、新しいARRの約10.6%である」と注記している。
それでもクラビヨは、Shopifyへの依存がリスク要因であることに言及しており、「当社のビジネスと成功は、サードパーティーのプラットフォーム、特にShopifyのようなeコマースプラットフォームと的確に統合することに一部依存している。これらのサードパーティープラットフォームとの統合や、サードパーティーのプラットフォームのプロバイダとの関係が途絶すれば、我々のビジネスは損害を受けるだろう」と記している。
4. クラビヨはさらに多くのエンタープライズ企業を獲得しようとしている
クラビヨは、ほかのShopifyのアプリと同様に、中小企業向けのサービス提供からスタートした。しかし、規模が大きくなるにつれ、比較的規模の大きなエンタープライズ企業へのサービスを増やしはじめた。その一部は、単に時間の副産物である。「クラビヨの顧客の規模が拡大し、ミドルマーケット企業に、そしてさらに大規模なエンタープライズ企業へと成長したことで、これらの顧客がクラビヨと提携して成功したという事実は、顧客とのより良好なエンゲージメントを促進したいと考える同規模の企業の関心を集めることになった」。
一方、クラビヨはこのようなミドルマーケットからエンタープライズ企業の顧客に注力するため、専任の販売チームも作った。「6月30日時点で、5万ドル(約735万円)を超えるARRを生み出している顧客が1458社存在し、前年比94%の成長率を示している」と提出書類では主張している。
より多くのエンタープライズ企業の顧客を集めるには、クラビヨ自身のビジネスが進化することも必要だ。「ラグジュアリー市場への移行を考えると、エンタープライズ企業の顧客との販売サイクルは、中小企業の場合より長くなることが予想される。また、販売努力の強化などにより、運用の規模を拡大する必要がある。それには多くの時間と経費が必要になる」と提出書類に記載されている。
現在のところ、販売サイクルの中間値は約6週間だ。最大の競合他社として、Adobeや、セールスフォース(Salesforce)、メールチンプ(Mailchimp)、ブレイズ(Braze)の名前を挙げている。
5. IPO以降のクラビヨの成長は、SMSやレビューなど、より多くのサービスを加盟店に利用してもらえるかどうかにかかっている
クラビヨは当初、主にデータ分析ビジネスを行っていた。しかし、着実にその枠を超えて拡大し続けてきた。何年ものあいだ、クラビヨの顧客の大半は、eメールでのコミュニケーションのためにプラットフォームを使用してきた。しかしここ数年、加盟店にとってeメールはより多くの人が使用するマーケティングチャネルとなり、それに伴いクラビヨのサービスも進化してきた。
具体的には、ブランドや加盟店が顧客にテキストメッセージを送信するための機能を追加した。11月にはブランドがより効率的にSMSキャンペーンを作成するためのAIツールを発表した。また、今年前半にはレビューツールを開始した。これにより、ブランドは同じプラットフォームで商品のレビューや顧客のデータを収集し、買い物客にメッセージを送れるようになった。
クラビヨのS-1書類には、「データプラットフォームやメールサービスとともに、SMSサービスによるクロスセル」が、同社の急速な収益拡大に不可欠だった」と記載されている。そして、「SMSとレビューなど、より多くのコミュニケーションチャネルやユースケースを追加することで、既存顧客からの売上がさらに拡大する」とも述べられている。
しかし、SMSを推進することは、クラビヨのほかの事業とカニバリゼーションを起こすリスクもある。「メールによるマーケティングは、当社のプラットフォームの主要なプロダクトであるが、SMSサービスは比較的新しいものであり、顧客は将来的に、メールによるキャンペーンよりも、SMSやプッシュマーケティングキャンペーン、または、ほかの新しいタイプのコミュニケーションチャネルを使用するキャンペーンを好むようになるかもしれない」とS-1書類は結んでいる。
[原文:5 things to know from Klaviyo’s S-1]
Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Klaviyo