2017年4月19日に公開された国連の報告書によると、中国ではソーシャルペイメントがいまや3兆米ドル(約300兆円)に届く勢いだという。モバイルおよびSNS決済の分野は、中国が世界のけん引役だ。欧米はやや遅れをとっている。5つのグラフでWeChatやアリペイ、そしてその他の中国の決済市場の成功について考察する。
2017年4月19日に公開された国連の報告書によると、中国ではソーシャルペイメントがいまや3兆米ドル(約300兆円)に届く勢いだという。
モバイルおよびSNS決済の分野は、中国が世界のけん引役だ。欧米はやや遅れをとっている。WeChatやアリババのようなプラットフォームを利用した決済が追い風となり、2025年には中国のGDPを2360億米ドルほど押し上げると予想されている。
現在、国連の「ベター・ザン・キャッシュ・アライアンス(Better Than Cash Alliance)」は、多くの国が中国のケースに追随するよう望んでいる。中国同様、国民や中小企業にビジネスチャンスを開放することになるからだ。
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ベター・ザン・キャッシュ・アライアンスの研究責任者、カミオ・テレス氏は「中国という非常に限定的な国に関する調査とはいえ、これを見れば世界の顧客セグメント全般に共通する行動、特に支払いに関する行動がいかに変化しているのか、その実態がわかる」と話した。「中国で独自に成長したエコシステムは、SNSプラットフォームの活用方法、そしてそれらを使ってスケールからのメリットを得る方法を提示している」。
多くの金融系スタートアップや金融機関が、どんな機能をそれぞれの金融システムに統合しはじめたのか、中国は早い段階から把握していた。報告書によると、成功のためのカギはいくつかある。ひとつは、既存のeコマースプラットフォームやSNS上で決済サービスを構築し、新規顧客開拓を行ったことである。またほかには、あらゆるプラットフォームで機能するエコシステムを開発し、シームレスな統合をイノベーターに提供し、さらにはユーザーや企業がユニバーサルにアクセスできる、アプリケーションプログラミングインターフェイスのプラットフォームツールを公開したことも含まれる。
下記では、5つのチャートを使ってWeChatやアリペイ、そしてそのほかの中国の決済市場の成功について考察する。
アリペイとWeChatの独占

アリペイ、WeChat、その他のモバイル決済額の推移
モバイル決済は間違いなくアリペイとWeChatの独占市場だ。2012年には116億米ドルに届かなかったWeChatの決済額は、4年後の2016年には1.2兆米ドルに増加した。アリペイとWeChatを合わせた決済額は、2012年には810億米ドルを下回っていたが、2016年には約2.9兆米ドルまで増加した。
二極化するまでの推移
WeChatでは、主力のメッセージサービスより決済サービスの成長率のほうが高い。2011年にテンセント(Tencent)の子会社とした設立された同社は、2013年に決済機能を導入した。2012年には1.9億人だった、WeChatのデイリーユーザー数は2016年、8億人に届いた。
中国国内のインターネットや携帯電話の利用者が増えたことも大きく関係している。報告書によると、中国では過去5年間かけてスマートフォンへの移行が見られた。その間、モバイル決済機能はすでにおおむね存在していた。一方、アメリカやヨーロッパでは、決済機能が導入される前からユーザーのモバイルへの依存度は高かった。

中国のモバイル決済におけるシェア率の推移
決済面が急成長したWeChat
WeChatは決済機能を統合したことで急成長を遂げた。2015年、アリペイの月間アクティブユーザー数は4.5億人で、平均支出額は2921米ドルだった。一方、同年のWeChatユーザー数は6.9億人で、平均支出額は568米ドル。2016年には168%増の1526米ドルとなった。
テンセントのパートナーシップ戦略により、WeChatのユーザーはオンラインに限らず、原則としてどんな商品にも決済サービスを利用できるようになった。メーカーや販売店と関係構築したことから、実店舗でも販売促進の一環でWeChat決済取扱期間が設けられた。WeChat決済サービスを利用すれば携帯電話代金や公共料金の支払いも可能。航空券や電車、映画を予約することもでき、カラオケの予約まで入れられるのだ。

WeChatにおける個人の年間平均支出額(緑)とDAU(赤)の推移
いまだに決済の王座はカード
いまもなお、王者の座にはカードが君臨する。短期間で驚異的な成長を遂げたとはいえ、中国で携帯端末による決済は全体のわずか12%だ。オンライン決済が16%、現金が30%、そしてカードは41%を占める。しかし、中国市場は巨大で、12%といえど金額的にはかなり大きいといえる。

中国における決済方法別の小売消費額(左)とシェア率(右)
「Union Pay(中国銀聯)」は中国国内の主要なオンライン決済システムだ。カード決済に必要な販売時点管理システム(POS)端末を備えた販売店は、2670万を数える。デビットカードの普及率は1人当たり3.1枚で、さらに増えている。しかし、中国で新たに販売されるPOS端末はすべて、モバイル決済のための近距離通信技術を装備しなければならない。一方、アメリカではいまだにカードにICチップを入れるべきか、磁器ストライプを入れるか、という議論が行われており、ヨーロッパの大部分では10年前からチップが搭載されている。