2018年、Facebookはもしかしたらニュースフィードからニュースを分けてしまうかもしれない。これは完全に荒唐無稽なアイデアというわけではない。Facebookはこれまでにもエクスプローラフィード(Explore Feed)と名付けたニュース抜きのフィードを試している。
Facebookに対する不満を、パブリッシャーは多く抱えている。トラフィックやデジタル広告のコントロールから、動画戦略を次から次へと変えてしまうことまで、不満の種類は多様だ。だからといって、今後これが悪化しない、というわけではない。
2018年、Facebookはもしかしたらニュースフィードからニュースを分けてしまうかもしれない。これは完全に荒唐無稽なアイデアというわけではない。Facebookはこれまでにもエクスプローラフィード(Explore Feed)と名付けたニュース抜きのフィードを試している。これはアメリカの外の6つの国においてテストが行われ、パブリッシャーたちは慌てふためいた。(このテストをさらに広げることはない、とFacebookは述べている)。2017年、ビデオ視聴用のタブ「Watch(ウォッチ)」もローンチしている。また共通の趣味や特徴を持った人々がつながれるFacebookグループの優先度を上げた。ユーザー同士の交流は、ほかのメディアコンテンツから切り離すという方向性も強調してきている。
ユーザー満足度が目的
メディアやブランドのコンテンツとユーザー同士のメッセージを別にする動きは、ほかのプラットフォームでも見られている。Snapchatはユーザーのフィードとブランドのコンテンツを分けるデザイン変更を行った。インスタグラムはプライベートメッセージ用アプリをテストしている。これによってメインのアプリからユーザー間のチャットを切り離すかもしれない。Twitterにはモーメントタブが存在している。これはニュースとエンターテインメント記事だけに特化したタブだ。
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TwitterやFacebookが成功するための鍵は、ユーザーを満足させることにある。そのため、常にさまざまなテストを試してユーザー利用時間や頻度を高めようとしている。ニュースの多くがネガティブであったり、議論を呼ぶ類であることを考えると、ニュースなしのフィード(ユーザーによってシェアされたものは表示されるだろう)では炎上が減り、ユーザーたちもより楽しめるかもしれない。また炎上を嫌っている存在はほかにもいる。広告主たちだ。
ウェブ分析企業パースリー(Parsely)の共同ファウンダーであり最高技術責任者であるアンドリュー・モンタレンティ氏は次のように言う。「いとこの成人式などを(SNS上で)読んだあとに、非常に深刻な記事を読まされると、ユーザーのなかには非常に困惑したり、不快に思ったりする人がいる。フェイクニュースに関してプラットフォームたちが懸念しているのは、それによってユーザーからの信頼を失ってしまうことだ。こういった内容のコンテンツがあまりにも多い場合、ユーザーは問題だと思ってプラットフォームの使用を止めるだろう。そのため繊細なバランスを保たないといけない。『広告を表示し過ぎないし、スパム風コンテンツも表示し過ぎないようにします』という具合だ」。
フェイクニュースの余波
フェイクニュースにまつわる複雑な状況は、Facebookにとっての大問題へと発展した。これによって議員たちが規制を提案するようになっている。Facebookはフェイクニュースの取り締まりを厳重化することでこれに応えようとしたが、実際はこれが困難であることが分かった。ニュースの存在を小さくする、もしくはフィードから取り除いてしまうことは問題対策のひとつのオプションだ。
エクスプローラフィードのテストについて、Facebookは次のように発表している。「試験が行われている国以外へとテストを拡大する、もしくはニュースフィードやエクスプローラフィード上でのページ配信に課金をするといった計画は現在のところない」。ニュースフィードからのオーディエンス確保に頼っているパブリッシャーにとってこれは、ホッとするニュースであった。Facebookでのリーチが減少しているとしても、多くのパブリッシャーにとって重要なトラフィック源であることに違いはない。パブリッシャーたちにとっては、ここ数カ月(もしくは数年)、Facebookからのダイレクトなトラフィック流入は減少傾向にある。これはFacebookがユーザーによる投稿やビデオコンテンツをニュースフィード上で優先しはじめたからだ。
オーディエンス開発という点でFacebookと密接につながっており、Facebookの一挙手一投足をフォローしているパブリッシャーのなかには、「ニュース抜きのニュースフィード」という可能性を真剣に捉えはじめているところもある。大手パブリッシャーのエグゼクティブのひとりは「Facebookから膨大なトラフィックを得ていることから、この可能性は常に頭のなかに存在している」という。今後数年間を考えたときに、会社にとってのリスクとなっているとのことだ。「(ニュース抜きのニュースフィードが実行されると)非常に大きなシフトとなるだろう」と、ほかのエグゼクティブも語った。
「パブリッシャーのコンテンツがメインのニュースフィードから離されてしまった場合、深刻に捉える理由が存在する」と、Twitterの元ニュースエグゼクティブであるビビアン・シラー氏は言う。「(エクスプローラフィードの試験運用に関して)Facebookにとっての判断基準は、ユーザー体験だった。それが彼らのビジネスだ。しかし、それがパブリッシャーたちにダメージを与えないとは考え辛い」。
求められる適応力
Facebookがニュースをフィードから取り除くかもしれない理由はほかにもある。ニュースフィードにニュースを流すためにはパブリッシャーや広告主たちに課金をする、という制度を導入すればFacebookはさらに収益を上げることになる。メッセンジャーをサイトから外して独立したアプリにしたように、新しいプロダクトを試す機会にもなる。
もちろん、これらはどれも推測、想像の域を出ない。Facebookがニュースをキープする理由も存在している。ニュースフィードをスクロールして読みたい記事を見つける、というのは多くのFacebookユーザーにとっての日常的な習慣となっている。まさにこれがあるからこそ、Watchのビデオやマーケットプレイスといった、ほかのプロダクトをFacebookはプロモーションできているのだ。ニュースフィードからユーザーを別の場所へ移すのが難しい。
たとえニュース抜きのニュースフィードが実現しなかったとしても、パブリッシャーたちは常に適応し続けなければいけない。FacebookとGoogleは消えてなくなることはない。これまでの歴史を見てみれば、パブリッシャーにとってのメリットを必ずしもFacebookは追求してくれないことは明らかだ。パブリッシャーたちは自らで対策を講じ、オーディエンスと収益のチャンスを掴んでいかないといけない。
Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)