玩具ブランドのメリッサ&ダグ(Melissa & Doug)の創業者のひとりは、新しいウェルネスブランドであるライフラインズ(Lifelines)を立ち上げるにあたり、より従来型のアプローチを用いている。
メリッサ・バーンスタイン氏は30年以上前に、夫とともに子ども向け玩具企業を作り上げたが、ライフラインズでは断固としてD2Cを使用していない。その代わりに、シャワーディフューザー、アロマペンシル、エッセンシャルオイルブレンドなど、五感を刺激するツールを販売するライフラインズは、卸売、大手小売業者、マーケットプレイスでのみ商品を販売する。現在のところ、Amazon、ターゲット(Target)、コールズ(Kohl’s)、メイシーズ(Macy’s)、バーンズアンドノーブルカレッジ(Barnes & Noble College)が、同社の商品を扱っている。
ライフラインズの流通モデルは、新しい小売企業がブランドのけん引力を獲得し、顧客基盤を構築するために、自社ウェブサイトで販売を開始するという、ますます一般的になっている新興企業のD2Cモデルとは異なる。しかし、バーンスタイン氏が米モダンリテールに語るところでは、同社の戦略の一部は今までの習慣から生まれたものだ。同氏とその夫は1988年、オンラインショッピングが盛んになる前にメリッサ&ダグを立ち上げ、商品を家庭に届けるため小売業者とパートナーシップを結ぶ必要があった。実際、夫妻は店舗のオーナーと面談し、店舗でのイベント開催日を調整して、親と子どもたちが立ち寄って商品を試せるようにした。続きを読む
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
玩具ブランドのメリッサ&ダグ(Melissa & Doug)の創業者のひとりは、新しいウェルネスブランドであるライフラインズ(Lifelines)を立ち上げるにあたり、より従来型のアプローチを用いている。
メリッサ・バーンスタイン氏は30年以上前に、夫とともに子ども向け玩具企業を作り上げたが、ライフラインズでは断固としてD2Cを使用していない。その代わりに、シャワーディフューザー、アロマペンシル、エッセンシャルオイルブレンドなど、五感を刺激するツールを販売するライフラインズは、卸売、大手小売業者、マーケットプレイスでのみ商品を販売する。現在のところ、Amazon、ターゲット(Target)、コールズ(Kohl’s)、メイシーズ(Macy’s)、バーンズアンドノーブルカレッジ(Barnes & Noble College)が、同社の商品を扱っている。
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ライフラインズの流通モデルは、新しい小売企業がブランドのけん引力を獲得し、顧客基盤を構築するために、自社ウェブサイトで販売を開始するという、ますます一般的になっている新興企業のD2Cモデルとは異なる。しかし、バーンスタイン氏が米モダンリテールに語るところでは、同社の戦略の一部は今までの習慣から生まれたものだ。同氏とその夫は1988年、オンラインショッピングが盛んになる前にメリッサ&ダグを立ち上げ、商品を家庭に届けるため小売業者とパートナーシップを結ぶ必要があった。実際、夫妻は店舗のオーナーと面談し、店舗でのイベント開催日を調整して、親と子どもたちが立ち寄って商品を試せるようにした。
小売店とのパートナーシップにこだわる
メリッサ&ダグの商品は現在、ターゲットやウォルマート(Walmart)などの小売業者から販売されており、ままごとセット、学習用玩具、パズルなど多くのカテゴリーの商品を提供している。また、10月には、子ども向けエンターテイメント企業のスピンマスターコーポレーション(Spin Master Corp.)に9億5000万ドル(約1420億円)の現金で買収されることを承諾した。
同社を売却したことで、バーンスタイン氏は次の事業に乗り出す準備が整った。
80年代と比べ、ライフラインズで開拓できるチャネルは増えていると同氏は言う。しかし、同氏とその夫は、過去にうまく行った経験から、これからも小売店との提携にこだわりたいと考えている。さらに、現在ライフラインズの商品を取り扱っている小売業者の多くは、メリッサ&ダグの商品も扱っている。
「小売業者は、大きなプラットフォームを持っているし、非常に信頼されている。我々が自分のウェブサイトでそのような信頼を築くには何十年もかかるだろう」とバーンスタイン氏は話し、すべての買い物客が感覚に浸るというコンセプトになじんでいるとは限らないことを認めた。
実際のところ、D2Cを将来のビジネスモデルの一部とは考えていないと、同氏は米モダンリテールに語った。「小売店のパートナーを守りたいという気持ちが強い。パートナーたちは、我々のために多くの困難な作業を引き受けてくれ、ブランドを確立するために、評判を広めてくれた」と、同氏は述べている。
五感を刺激する「ライフラインズ」
バーンスタイン氏がライフラインズのアイデアを思い付いたのは、4年前、とりわけストレスの多い日に散歩をしているときだった。ある瞬間に、鳥のさえずりが聞こえ、咲いている花の匂いがすることに気づいた。そして、これらの音や匂いに気づくことで、考えごとから解放され、穏やかな気分になった。そこで、ストレス反応をかき消し、今この瞬間に戻ってくるのに役立つような、五感それぞれのためのツールを作る可能性について考えはじめたのだ。
ライフラインズの最初の商品バッチは嗅覚に特化しているが、将来的には味覚、視覚、触覚、聴覚、そして想像力を中心とするアイテムも発売する予定だ。手はじめに、5つの香りのファミリー(かんきつ園(Citrus Grove)、新鮮な山の空気(Crisp Mountain Air)、森林浴(Walk in the Woods)、花盛り(In Bloom)、スパイスラッシュ(Spice Rush))のエッセンシャルオイルのブレンドと、4つのウェルビーイングブレンド(平穏(Calm)、活力(Energy)、集中(Focus)、歓喜(Joy))を提供している。顧客はこれらを混合して、たとえば「花盛り」と「平穏」とのブレンドなどを選ぶことができる。
ライフラインズでは、シャワーディフューザー、バスディフューザー、アロマストーン、エッセンシャルオイルを拡散するペンも販売している。商品の小売価格は5ドル(約745円)から29ドル99セント(約4470円)だ。ライフラインズは、エッセンシャルオイルに使用するプレシジョンポンプを含め、商品ついて16の異なる特許を出願中だとバーンスタイン氏は言う。嗅覚をベースとする最初のアイテムは、キャンドルやエッセンシャルオイルなどの家庭用品と同じ棚で販売されると同氏は見ている。将来的には、ほかの商品が別の棚で売られるかもしれないし、まとめて置かれることもあるかもしれないと同氏は述べている。
顧客はライフラインズのウェブサイトを訪問し、商品の背景にある科学について詳しく知ったり、レビューを読んだりできる。しかし、ウェブサイトには商品を購入したり、カートに入れたりする方法は用意されていない。その代わりに、顧客が郵便番号を入力すれば、商品を扱っている近くの店舗を検索できる「お店で探す」セクションがある。このウェブサイトはAmazon、ターゲット、コールズ、メイシーズにもリンクしている。
大学の書店でも販売
バーンスタイン氏がもっとも期待しているパートナーのひとつが、米国全体にわたって大学のキャンパスで書店を運営しているバーンズアンドノーブルカレッジだ。「若い人々のあいだで不安とストレスが蔓延している」と同氏は述べる。しかし、「大学の書店は伝統的にウェルビーイング商品を取り扱わない」。
バーンズアンドノーブルカレッジは6月、フィジェット・トイや、ビタミン剤、キャンドルなどのウェルネス商品を厳選したコレクションなどを販売する「Be Well. Be You(元気に、自分らしく)」という新しい取り組みを発表した。ライフラインズは、このコレクションの最初の公式パートナーだ。バーンスタイン氏とライフラインズのチームは、今後数カ月間にこのコレクションをキャンパスで宣伝する予定だ。
インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)の小売およびeコマース担当のプリンシパルアナリストを務めるアンドリュー・リプスマン氏は、メリッサ&ダグの成功を考えれば、バーンスタイン氏が大手の小売業者との関係を続けるのは理に適っていると、米モダンリテールに語った。
D2Cブランド「2000万ドル」の壁
今日では、D2Cで事業を開始した多くのブランドが、売上を拡大するのに苦労していると、リプスマン氏は語る。「多くのブランドは、収益が1000万ドル(約14億9000万円)か2000万ドル(約29億8000万円)に達したところで、壁に突き当たる傾向がある」と、同氏は述べている。バーンスタイン氏とライフラインズの場合、「小売業者とのあいだに30年間で築かれた良好な関係があるため、規模の問題は解決している。そのため、流通は問題にならない」と、同氏は付け加えた。
しかし、小売で成功するブランドを作り上げることの価値のひとつは、そのブランドが十分に強くなったとき、人々がそのブランドから直接商品を買いたがるということだと同氏は指摘した。「やがて、そのブランドがより普遍的になるにつれ、D2Cウェブサイトを保有することの利点が出てくるだろう。しかし、急速に規模を拡大するために既存の流通網を活用することに注力している理由は理解できる」と同氏は述べた。
今後について、バーンスタイン氏は小売業者と協力し、嗅覚以外の感覚に向けた多くの商品を発売することに熱意を抱いている。
「これは最初のカテゴリーにすぎない。これから何百もの商品を作り出すつもりだ。いつか店舗にライフラインズの商品専用のコーナーを作ってもらえることに期待している」と、同氏は述べている。
[原文:Why Melissa & Doug’s co-founder is using a traditional retail model to launch her new wellness brand]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Lifelines