VANS(バンズ)はこの数年間にわたり、自社の商品が販売される500を超える店舗のマーチャンダイジング方法を劇的に変化させ、アナログからデジタルのプロセスへの転換を行ってきた。同社のビジュアルマーチャンダイジングマネージャーを務めるポール・ルーパート氏に訊いた。
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VANS(バンズ)はこの数年間、自社の商品が販売される500を超える店舗のマーチャンダイジング方法を劇的に変化させ、アナログからデジタルのプロセスへの転換を行ってきた。
スケーターとスニーカーのブランドとして1966年に設立され、2004年に3億9600万ドル(約451億円)でVFコーポレーション(VF Corp)に買収されたVANSは従来、マーチャンダイジング用のフロアセット(陳列の配置)を物理的に決めていた。毎月、どの商品をどのように展示するかを紹介するデモ用店舗モデルを作成して撮影し、店内チームに計画資料を送付して、各自の店舗で実行してもらうというものだった。
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VANSの高級小売店のビジュアルマーチャンダイジングマネージャーを務めるポール・ルーパート氏は、このプロセスには通常、設定に5日から6日、写真撮影と資料作成にさらに5日から6日を要すると述べている。しかしパンデミックが発生した当初、店舗の計画と店舗への訪問の両方がより複雑化した。そこでVANSは、両方のプロセスをデジタル化する方法を模索することになった。
VANSは、長年にわたるパートナーだった小売ソフトウェア会社のIWDに、店舗のコンセプトをデジタル化し、店舗とチームのコミュニケーションを簡素化するよう依頼した。IDWの「ディスプレイ(Display)」ソフトウェアを使用することで、VANSは仮想の3D店舗レンダリングを作成し、フロアリニューアルの設定にかかる時間を25%削減することができた。一方、IWDの「ネットワーク(Network)」ソフトウェアは、VANSの店舗内チームが最終的な店舗の写真をアップロードし、VANSの経営陣とバーチャルでコミュニケーションするのに役立っている。
ルーパート氏は、パンデミックの禍中におけるマーチャンダイジングの複雑性、VANSの進化する店舗コンセプト、VFコーポレーションの幅広いブランドポートフォリオにおけるマーチャンダイジング知識の共有方法について、米モダンリテールに語った。以下の対談内容は簡素さと明瞭さを考慮し、編集を加えたものである。
◆ ◆ ◆
──マーチャンダイジングのプロセスをデジタル化することで、ワークフローがどのように迅速化されたか?
「ディスプレイ」プログラムの機能をフルに活用するまでは、模擬店舗で毎月フロアセットを組んでいた。すべての部門や店舗のコンセプトを物理的に設定するには通常で5〜6日、すべてのアセットをコンパイルして陳列の新配置に関する資料を作成するにはさらに5〜6日が必要だった。
フロアセットのマーチャンダイジングにディスプレイを使用するようになってから、2日から3日分の作業が不要になり、フロアセットにおける作業負荷が平均25%減少した。我々には、フロアセットの資料で特に重視している店舗コンセプトが3つある。
──3つの店舗コンセプトとはどのようなもので、互いにどのような相違点があるのか?
最初のコンセプトは伝統的なもので、当社のもっとも古い店舗の形式だ。2番目のコンセプトは「新規コンセプト」と呼ばれ、当社の小売店舗の大部分を占める。そして数年前に、当社は3.0コンセプトの店舗を設立しはじめた。これは、当社が今後の店舗のコンセプト計画と見なしたものだ。
3.0は外観も雰囲気もよりモダンで、当社の従来型のコンセプト2つよりもクリーンな印象だ。さまざまなタッチポイントにおいて、ストーリーテリング、マーケティング、そして消費者とのつながりに重きを置いている。
──IWDのネットワーク機能についてもう少し話してもらえるだろうか? なぜ新しい通信プラットフォームを使ってほかの社員とつながろうと思ったのか?
私はビジュアルマーチャンダイザーとして、店舗の写真をもらえると非常に嬉しく感じる。出張が少なくなり、市場訪問の回数も減っているのが現状だ。そのため我々にとって、店舗の環境がどうなっているかを可視化することが、従来にも増して重要になってきている。「ネットワーク」は、こうしたマーチャンダイジングの最新情報を現場チームと共有するためのプラットフォームだ。
当社は2018年の1月以来、店舗チームの手によって2万3000枚以上の写真をプラットフォームに追加し、8つの店舗環境で毎週平均約150枚をアップロードしている。これは、その月を通して我々の小売環境がどのようなものであるかを見るための手段として使われている。
──VANSはザ・ノース・フェイス、ティンバーランド、ディッキーズなどのブランドの親会社であるVFコーポレーションの傘下になった。御社のポートフォリオに含まれるほかのブランドは、これらの機能を使用するのか? そしてVANSと姉妹ブランドとのあいだで、マーチャンダイジング分野における知識の共有はあるか?
VANSはIWDプラットフォームのパイオニアだったが、姉妹ブランドのいくつかはディスプレイの機能を採用しはじめている。また、当社のいくつかのブランドがネットワークの利用を検討していることも知っている。現在、我々VANS側では、これらの姉妹ブランドとのあいだで小規模で機能横断的な関係を築いている。今後はIWDとのパートナーシップに我々の全企業が参加することに、より大きな重点を置くことになる。
[原文:‘We’ve eliminated two to three days of workload’: How Vans digitized its merchandising process]
Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Vans × IWD