メイシーズ(Macy’s)は、プライベート事業を拡大する計画を抱いて株式公開を進めている。
メイシーズは今年の初夏、2025年末までに4つの新しいプライベートブランドを発売すると発表した。最初のブランドであるオン・サーティーフォース(On 34th)は8月17日に、店舗、オンライン、およびメイシーズのアプリで正式スタートした。オン・サーティーフォースの靴は2024年の春に発売される。メイシーズは2024年、衣服からアクセサリーまで複数のカテゴリーに渡り、プライベートブランドを立ち上げる予定だ。
メイシーズは現在、アイエヌシー(I.N.C.)、アルファニ(Alfani)、チャータークラブ(Charter Club)、サン・プラス・ストーン(Sun + Stone)など25を超えるプライベートブランドによって強固なポートフォリオを保有している。2022年度の年間売上高の約16%はプライベートブランドによるものだ。パンデミックの前はこの割合が20%前後と現在より高く、長期的にこの割合を取り戻すことを目標にしている。CEOを務めるジェフ・ジェネット氏は2020年当時、2025年までに売上の25%をプライベートブランドにしたいと語った。プライベートブランドの刷新により、さらに多くの顧客を獲得し、この目標に近づくことをめざしているのだ。
メイシーズがプライベートブランドを作り上げる動機はほかにも考えられる。百貨店である同社は主に自由裁量のアイテムを扱っており、多くの買い物客は現在、お金を節約するためにこのカテゴリーを避けるか、必需品に消費を回している。2022年度には純利益が18%近くも減少し、株価は年度初頭から20%以上も下落した。大手小売業者やモールの小売業者が損失を埋め合わせる方法のひとつは、自社が直接コントロールできるブランドへの投資を増やすことだ。これによって生産や流通への発言力が強くなり、利益のうち多くの部分を得られるようになる。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
メイシーズ(Macy’s)は、プライベート事業を拡大する計画を抱いて株式公開を進めている。
メイシーズは今年の初夏、2025年末までに4つの新しいプライベートブランドを発売すると発表した。最初のブランドであるオン・サーティーフォース(On 34th)は8月17日に、店舗、オンライン、およびメイシーズのアプリで正式スタートした。オン・サーティーフォースの靴は2024年の春に発売される。メイシーズは2024年、衣服からアクセサリーまで複数のカテゴリーに渡り、プライベートブランドを立ち上げる予定だ。
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メイシーズは現在、アイエヌシー(I.N.C.)、アルファニ(Alfani)、チャータークラブ(Charter Club)、サン・プラス・ストーン(Sun + Stone)など25を超えるプライベートブランドによって強固なポートフォリオを保有している。2022年度の年間売上高の約16%はプライベートブランドによるものだ。パンデミックの前はこの割合が20%前後と現在より高く、長期的にこの割合を取り戻すことを目標にしている。CEOを務めるジェフ・ジェネット氏は2020年当時、2025年までに売上の25%をプライベートブランドにしたいと語った。プライベートブランドの刷新により、さらに多くの顧客を獲得し、この目標に近づくことをめざしているのだ。
メイシーズがプライベートブランドを作り上げる動機はほかにも考えられる。百貨店である同社は主に自由裁量のアイテムを扱っており、多くの買い物客は現在、お金を節約するためにこのカテゴリーを避けるか、必需品に消費を回している。2022年度には純利益が18%近くも減少し、株価は年度初頭から20%以上も下落した。大手小売業者やモールの小売業者が損失を埋め合わせる方法のひとつは、自社が直接コントロールできるブランドへの投資を増やすことだ。これによって生産や流通への発言力が強くなり、利益のうち多くの部分を得られるようになる。
データを収集してギャップを埋める
メイシーズは現在、3つの方針でプライベートブランドを推進している。新規ブランドを追加し、既存のブランドを再構築し、顧客の共感を集めなくなったものは廃止するということだ。
メイシーズのプライベートブランド担当シニアバイスプレジデントを務めるエミリー・エルーシャ・ヒレクー氏は、メイシーズには顧客に愛されているブランドがすでに存在すると、米モダンリテールに語った。同時に、「ポートフォリオを調べて、顧客プロファイル、またはテイストの観点から、我々が対応していなかったギャップを明らかにする」と、以前にターゲット(Target)のデザインディレクターを務めていた同氏は述べる。
既存のブランドの調整について、同氏はメイシーズの方法を改革にたとえている。「ポートフォリオ内のすべてに手を加え、顧客の新しい声を反映させる」と、同氏は説明している。また、ポートフォリオを縮小するときは、どのブランドが必要以上に重複が多いかをチェックすると、同氏は述べている。
メイシーズは過去2年間を、このプライベートブランド戦略を作り上げるために費やした。10万を超えるオンライン調査を行い、経営陣は、買い物客がプライベートブランドに何を望んでいるかを探るために、買い物客とともに何百時間もの時間を過ごした。小売コンサルティング企業スピッカーマンリテール(Spieckerman Retail)のプレジデントを務めるキャロル・スピッカーマン氏はこの方法を称賛した。「小売業者は多くのデータと優れたツールを保有し、それらを行動に活かすことができる。これは、メイシーズがやみくもに戦略を進めているわけではないという良い兆候だ。新しいプライベートブランドが良好な形でスタートできるように労力を注ぎ込んでいる」と、同氏は米モダンリテールに語った。
顧客が異なるブランド間でも同じサイズを買いたがっているという声を受け、メイシーズはフィット感に焦点を絞った。まず、男性向け、女性向け、子ども向けのフィットを分析した。次に、衣服をより一貫性のあるものにするため、何千もの人体スキャンを行ったファッションテクノロジー企業アルバノン(Alvanon)に依頼した。自社のデータポイントとアルバノンのデータを使用して、プライベートブランドの服をより普遍的なものに調整し、プライベートブランド全体でのフィット数を5つから2つに減らした。
メイシーズはほかにも、布地や構造の標準を調整したり、サプライヤーの数を絞るなどの変更を加えた。また、トレンドや最新のスタイルを反映するために、プライベートブランドを活用している。たとえばオン・サーティーフォースには、買い物客が簡単に着られるパンツやトップスなどワードローブの定番商品がある。同時に、「新しいプリントや柄、明るい色使い、洗っただけで快適に着られる夢のような布地を使って改善した」と、ヒレクー氏は述べる。
メイシーズの最初の新規プライベートブランドには750のSKU(在庫管理単位)があり、これらをうまく組合せることで、1000を超えるアイテムを作ることができるという。オン・サーティーフォースは女性向けで、価格は18ドル50セント(約2680円)から299ドル50セント(約4万3400円)だ。同社は店舗内のブランドショップや、オンラインの動画、デジタルランディングページ、および50人ほどが参加するインフルエンサーキャンペーンを通じて、この発売のプロモーションを計画した。
メイシーズはオン・サーティーフォースのオーディエンスを、「大人から、初老のライフステージ」にある人々、すなわち40歳から60歳までの人々とみなしているとヒレクー氏は語る。
「我々のプライベートブランドにとって、最大の成長機会があるのはこうしたオーディエンスだ。そして現在、商品の種類という点で、この層の顧客への対応が行き届いていない」と同氏は述べる。キャンペーンに参加するインフルエンサーの多くはこの年齢層に属している。
メイシーズにとって良いニュースは、美容品やフレグランスの部門において40歳から60歳のオーディエンスをすでに確保していることだ。これらの顧客に対して、アパレルのような利益率が高いほかのカテゴリーに移行するよう誘導する必要があると同氏は見ている。
「オン・サーティーフォースによって、これまでメイシーズで買い物をしていなかった人々やしばらくメイシーズで買い物をしていなかった人々の関心を集め、もう一度メイシーズを利用したり、初めてメイシーズを利用したりするようになるだろう」とヒレクー氏は述べる。「新しいメイシーズ、そして今後2年か3年のあいだにプライベートブランドがまったく異なる形で出てくるための枠組み作りや地固めを行っている」。
プライベートブランドのさまざまな結果
この数年間に、多くの小売業者がプライベートブランドを立ち上げてきたが、その結果は悲喜こもごもだ。たとえばターゲットは45を超える直営ブランドを保有しており、そのひとつであるキャットアンドジャック(Cat & Jack)の時価は30億ドル(約4350億円)だ。スプラウツファーマーズマーケット(Sprouts Farmer’s Market)のCEOによると、昨年末、同社のプライベートブランド商品の売上は10億ドル(約1450億円)に達した。ウォルマートのエグゼクティブは2月、過去90日間にブランド付き商品よりもプライベートブランドを選ぶ消費者が増えたと述べた。
コストの上昇から、プライベートブランドを多く選ぶ買い物客が増えてきている。プライベートブランドはCPG(消費者向けパッケージ商品)のナショナルブランドよりも安価な傾向がある一方で、その多くはインフレに合わせて価格が引き上げられているか、コストを節約するために商品が小さくなっている。マーケットプレイス(Marketplace)によると、2021年にプライベートブランドの売上は20億ドル(約2900億円)近く増加し、プライベートブランド製造業協会(Private Label Manufacturers Association)の話では、プライベートブランドの食品ブランドは2022年に過去最高の業績を記録した。
しかし、すべてのプライベートブランドが成功しているわけではない。ベッド・バス・アンド・ビヨンド(Bed Bath & Beyond)は2020年、18カ月以内に10以上のストアブランドを立ち上げる計画を発表した。これらのブランドを発売するために、オクソー(Oxo)やオールクラッド(All Clad)などのブランドを縮小すると、ウォールストリートジャーナル(The Wall Street Journal)で報じられた。しかしこれは、ちょうどパンデミックが勃発した頃であり、出荷の遅れにより、これらのプライベートブランド商品の多くは配送されなかった。ようやく品物が到着したときには、顧客はすでに関心を失っており、以前からよく知っているブランドを求めていた。
Amazonも、2022年にプライベートブランド事業を縮小しはじめ、経営者は商品を減らすようチームに求めたと報じられた。ウォールストリートジャーナルによると、Amazonはこの1年間に、衣料品プライベートブランド全30ブランドのうち27ブランドと、家具プライベートブランドのすべてを廃止することを決定した。同社のプライベートブランドは、Amazonのプラットフォーム上で顧客に馴染みのあるほかの売り手と直接競合している。同社は、ほかの小売業者や起業家がすでに販売している商品のほぼコピーであるプライベートブランド商品を次々と売り出していることで非難を浴びた。連邦取引委員会(Federal Trade Commission)は現在、独占禁止法関連でAmazonを調査している。
プライベートブランドには利点と欠点があると、スピッカーマン氏は語る。「プライベートブランドは利益率が高く、差別化を促進し、小売業者はブランドの開発をより細かくコントロールできるようになる。欠点として、コントロールできることと引き換えに、責任も負わされる。プライベートブランドの商品が積み上がっても、小売業者は簡単にブランドを切り捨てることはできない」と同氏は述べる。
ヒレクー氏は、メイシーズの新しい戦略の成功が見込まれる理由として、4つの要因を指摘する。まずはブランド力だ。「当社が組織として言い続けていることのひとつは、過去にブランドをラベル、すなわち、美しいものを入れるための器として扱ってきたことだ。しかし現在、当社はブランドの強力なDNA、価値、目的を築き上げた。組織でこのような厳密さを持つことで、今後の活動が成功するという多くの自信を与えてくれた」と、同氏は述べている。
2番目の要因は、「戦略的なサプライヤーの基盤」と、メイシーズの商品の品質だ。3番目は、メイシーズが商品に関する決定のために「厳密で迅速なデータ」を使って商品を決定しているかという点だ。そして4番目は「独創的なデザイン」だ。
メイシーズは新しいプライベートブランドを発表したが、「可能性は無限大だ。まだ始まったばかりだ。2025年までの戦略を構築してきたが、正直なところ、2025年から2026年、さらにその先のことについても想像している」とヒレクー氏は述べる。
[原文:‘We’re just getting started’: Inside Macy’s plan to grow its private brands]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Macy’s