死と税以外に、小売の世界で確実なことは、どのブランドの商品も最終的にはオフプライス小売店に行き着くということだ。
有名ブランドも、安価の商品を販売する企業も、季節外れのコレクションを数十年にわたってオフプライス小売店に卸してきた。しかし、デジタルネイティブな企業やD2Cの企業はもともと、顧客とより密接な関係を作り上げる企業としてマーケティングを行ってきた。そのため、より効率的な計画を立案でき、かつてのブランドのように、セールやオフプライス小売店で在庫を処分することに抵抗があったのだ。
しかし、実際はそうではなかった。
年月とともに、多くのD2C新興企業は、ひっそりとではあるが、最終的に在庫の一部をオフプライス小売店に卸すようになっている。現在、オフマーケット(Offe.Market)やゴースト(Ghost)のような多くのオフプライス小売の新興企業は、ブランドが余剰在庫を目立たないように処分する、より現代的な方法を編み出すことで、オフプライスに付きまとう悪いイメージを払拭しようとしている。また、eコマースの創業者でさえ、一部のオフプライスチャネルは過剰在庫を処分するだけでなく、新規顧客を獲得する有効な手段になり得ると言う者もいる。
植物のD2C販売を行うザ・シル(The Sill)の創業者兼CEOのイライザ・ブランク氏は、「これらのチャネルは、我々がD2Cブランドであることを知らない顧客とも引き合わせてくれる。私にとっては何の問題にもならない」と語る。ザ・シルのプランターはオフマーケットで販売されている。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
死と税以外に、小売の世界で確実なことは、どのブランドの商品も最終的にはオフプライス小売店に行き着くということだ。
有名ブランドも、安価の商品を販売する企業も、季節外れのコレクションを数十年にわたってオフプライス小売店に卸してきた。しかし、デジタルネイティブな企業やD2Cの企業はもともと、顧客とより密接な関係を作り上げる企業としてマーケティングを行ってきた。そのため、より効率的な計画を立案でき、かつてのブランドのように、セールやオフプライス小売店で在庫を処分することに抵抗があったのだ。
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しかし、実際はそうではなかった。
年月とともに、多くのD2C新興企業は、ひっそりとではあるが、最終的に在庫の一部をオフプライス小売店に卸すようになっている。現在、オフマーケット(Offe.Market)やゴースト(Ghost)のような多くのオフプライス小売の新興企業は、ブランドが余剰在庫を目立たないように処分する、より現代的な方法を編み出すことで、オフプライスに付きまとう悪いイメージを払拭しようとしている。また、eコマースの創業者でさえ、一部のオフプライスチャネルは過剰在庫を処分するだけでなく、新規顧客を獲得する有効な手段になり得ると言う者もいる。
植物のD2C販売を行うザ・シル(The Sill)の創業者兼CEOのイライザ・ブランク氏は、「これらのチャネルは、我々がD2Cブランドであることを知らない顧客とも引き合わせてくれる。私にとっては何の問題にもならない」と語る。ザ・シルのプランターはオフマーケットで販売されている。
D2Cブランドもひっそりと販売
オフプライス小売店は、eコマースでのプレゼンスがとても小さいため、鋭い目を持つ買い物客は、お気に入りのD2C新興企業の商品を店頭で偶然見つけることが多い。そして、見つけたものをソーシャルメディアで紹介し、皆が欲しがっているブランドをT.J.マックス(T.J. Maxx)やホームグッズ(HomeGoods)などのアナログな小売店のどこで見つけられるかを他者に教える。特にTikTokユーザーは、オフプライス店舗に新しく入荷された、クイップ(Quip)、カルパック(Calpak)、ワイルドワン(Wild One)、キャラウェイ(Caraway)などのデジタルネイティブブランドの商品を含む、オフプライス店舗の最新入荷情報を入手するのに欠かせない情報源となっている。
米グロッシー(Glossy)は昨年、顧客が全国のさまざまなT.J.マックスの店舗でグロシエ(Glossier)の商品を見つけていると報じた。そのころ、新興企業のグロシエはセフォラ(Sephora)での取り扱いに向けて構造改革を行っていた。これはグロシエが2014年に創設されて以来最初の卸売パートナーシップだ。
D2Cブランドに生まれ変わった旅行かばんブランドのカルパック(Calpak)は、ホーム用品のオフプライス小売店TJXでの自社商品の取り扱いについてコメントを控えた。ワイルドワンはオフプライス店マーシャルズ(Marshalls)との契約について詳細を明かさなかったが、広報担当者はワイルドワンに代わって、「このチャネルで成功した」ことを認めた。一方、調理器具ブランドのキャラウェイは、TJXが運営する店舗で一部の商品を販売していることを認めたが、その経緯について詳しいコメントは出さなかった。
過剰在庫を処分する必要性
カーニー(Kearney)のパートナーで米国の小売リーダーであるマイケル・ブラウン氏は、小売店であれサプライヤーであれ、商品が販売しきれずに、オフプライスになってしまうケースは多々あると語る。また、アウトレットやオフプライス向けに作られる商品ラインもあると、同氏は付け加えた。「オフプライスに商品が送られるもうひとつの経緯は『ダーティ・バイ』、すなわち開梱されてから返却されたパッケージを清算する必要がある場合だ。D2Cの世界から送られる商品はこのケースが多い」と、同氏は述べる。
ブラウン氏は、オフプライスが長年にわたって主要な小売チャネルだったのは、小売店もバイヤーも需要の予測に失敗したためであり、この数年は需要の変動が激化したことで予測の失敗が増えていると語る。「小売店とそのサプライヤーが、短期的にも長期的にも正確な予測をできるようになるまでは、大規模なオフプライス市場が存在し続けるだろう」と、同氏は述べている。
「現実には、あらゆるブランドが過剰在庫を抱えている」と、オフマーケット創業者のレイチェル・ギャノン氏は述べる。オフマーケットは2022年に設立されたオフプライス小売店で、ブランドから余剰品として買い取った商品をローテーションで販売している。同社によると、顧客はブランドの小売標準価格の30〜80%オフで商品を購入できる。「小規模ブランドの場合、キャッシュフローが在庫に直結するため、早く商品を売り払えば、少なくとも金額の一部を回収でき、いくらかは元が取れる」と同氏は言う。
メイシーズ(Macy’s)やギルトグループ(Gilt Groupe)のルーララ(Rue La La)でバイヤーを務めた経験を持つギャノン氏は、ザ・シルやチャンクス(Chunks)などのデジタルネイティブブランドを含め、ファッションやライフスタイル関連の企業と直接取引し、過剰在庫を買い取っている。過剰在庫には、キャンセルされた小売店の注文、売れなかった季節商品、間違ったパッケージや古いパッケージの注文など、さまざまな種類の商品がある。
ギャノン氏はオフプライスについて、小売業界のほとんどが苦戦する時期にも繁盛している「けん牢なモデル」であるが、負の印象が付きまとっているという。「これは、ブランドイメージの問題だ。通常、安価な商品の横に並べれることになるのからだ」。このため、若くて流行のブランドは、特にビジネスが低迷しているときには、経済的に魅力的であるにもかかわらず、T.J.マックスのような小売店と提携することを恥ずかしがることが多いのだ。
「オフプライス小売店は迅速なネット支払いで大量の商品を注文し、多くの商品を動かすのを助けてくれる」と、ギャノン氏は述べている。
オフプライスに解決策を見いだす
このような悪評を振り払うため、ギャノン氏はオフマーケットを「オフプライスへのキュレーション・アプローチ」と位置づけ、オフプライスを試してみたいブランドを引き付けているという。
ザ・シルのブランク氏は、オフマーケットとともにオフプライスに参入することを決定した理由について、2020年と2021年の在庫不足の後に入荷が遅れた結果だと答えた。
「その事実を隠す代わりに、顧客に手厚い割引を提供するために、こうしたほかのチャネルで顧客に注力した」と同氏は述べる。ザ・シルはサンプル販売も試しており、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市で、サンプル販売のショールームを運営している会社、260サンプル(260 Sample)で3回目のセールを行った。
もちろん、オフプライスは危険な道でもあるとブランク氏は言い、「このようなアウトレットでそのブランドを見かけたからといって、そのブランドが苦境に立たされているとは限らない」と付け加えた。同氏は、デザイナーズブランドが、価格に敏感な顧客向けにアウトレット店舗を保有していることを指摘している。
ダイレクトチャネルの難しさ
ホームグッズなどのオフマーケットチェーンへの参入について、ブランク氏は、将来的にはそのようなチェーンに対応するために特別なラインを作ることも検討するだろうと述べた。また、新興ブランドの余剰商品の処理に協力するため、さらにベンダーやマーケットプレイスが増えることにも期待している。
2022年にスタートしたeコマースプラットフォームのカムバックグッズ(Comeback Goods)もそのようなサイトのひとつだ。同社のビジネスモデルは、「優れたブランドから、高品質だが欠点がある商品を救い出し」、その節約分を買い物客に還元するというものだ。現在、キャラウェイや、D2C加湿器のキャノピー(Canopy)、およびフルトン(Fulton)の靴の中敷きを販売している。
シリーズBラウンドで3000万ドル(約44億1000万円)を調達したばかりのB2B余剰品マーケットプレイスのゴーストもまた、売れ残った商品をデジタルで目立たずに売却する方法をブランドに提供しようとしている。また、小売企業が余剰商品をほかの小売店や卸売バイヤーに販売することで、ひそかに清算することを可能にしている。
ゴーストの共同創設者であるジョシュ・カプラン氏は、ブランドが以前のようにダイレクトチャネルを通じて商品を迅速に販売することが難しくなってきていると、米モダンリテールに語った。
「新興ブランドが、オフプライスストアで販売していることを宣伝したくないのは当然だと思う」と、同氏は述べる。実際のところ、ゴーストという社名は、小売店に対して、在庫をできるだけこっそりと処理できるよう支援する方針を示唆するものだ。
D2C業界の変曲点を示している
しかし、多くのデジタルネイティブなブランドは、従来型のブランドが長年にわたって行ってきたように、オフプライスやアウトレットとのチャネルミックスを念頭に置いてこなかったと、同氏は述べる。「余剰品に付きまとう悪いイメージを払拭し、若い企業にとって優れた在庫処理の方法を作り上げたい」と同氏は述べる。現在ゴーストを使用している新興ブランドやデジタルネイティブブランドが存在することを同氏は認めているが、具体的な会社の名前は明かしていない。「米国のブランドが海外市場をターゲットとする傾向も強まっている」と、同氏は説明する。
このチャネルの使用について、「今のところ、ほかの選択肢はない」とブラウン氏は述べる。D2Cウェブサイトであまりに大きな割引を行うことは、中核の顧客に対してブランドの価値を損なうことになるからだ。「オフプライスにより、得られる売上が大幅に減少するとしても、過剰在庫を抱え込むよりは、売り払う方が得策だ」。
これは多くの点で、D2C業界が変曲点に到達したことを示唆しているが、一部の企業はそのことをまだ認めていない。「今やD2Cはある種の禁句で、どこで販売するかについての期待が変化しつつある。現在のeコマースの情勢からして、オフプライスを立派な流通チャネルとして受け入れるブランドは増えていくだろう」と、ブランク氏は述べている。
[原文:‘We want to change the stigma around surplus’: DTC brands are warming up to off-price retail]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)