火曜日に公表された ワービー・パーカー の証券取引委員会S-1提出資料によれば、同社はニューヨーク証券取引所への直接上場による株式公開を計画している。同社はコロナウイルスの大流行の中で最大の販売高を記録し、会計年度2020年の売上は3億9370万ドル(約433億円)に達した。
この数年間で、従来型小売業者に姿を変えつつある、アイウェアブランドのワービー・パーカー(Warby Parker)が株式公開の準備を進めている。
8月24日に公表された同社の証券取引委員会S-1提出資料によれば、同社はニューヨーク証券取引所(New York Stock Exchange)への直接上場による株式公開を計画しているという。
ワービー・パーカーはD2Cブランドの先駆けとして、2010年に設立され、比較的安価な眼鏡のメーカーとして知られている。同社はコロナウイルスの大流行のなかで最大の販売高を記録し、会計年度2020年の売上は3億9370万ドル(約433億円)に達した。
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ワービー・パーカーは、来年株式公開を予定している多くの消費者向け新興企業のひとつで、ファストカジュアルのレストランチェーンであるスイートグリーン(Sweetgreen)やスニーカーメーカーのオールバーズ(Allbirds)も同様に株式公開を予定している。スクラブのブランドであるフィグ(Figs)や、オネスト・カンパニー(The Honest Company)も、最近株式を公開した。
ワービー・パーカーは、売上のすべてがeコマースによるものではなくなったという点で、ほかの多くのD2C新興企業とは一線を画している。実際に、同社の売上のほとんどは現在、この数年間で築かれた135店以上の実店舗組織で生み出されている。
ワービー・パーカーはS-1の全体を通して、自社の店舗がいかに「生産性が高い」か強調しているが、それらの店舗はまだ、継続的な利益をもたらすには至っていない。
ワービー・パーカーのビジネスの実情と、同社が成長を続けるための計画について、資料に従い解説する。
財務状況
現在のところワービー・パーカーは、ベンチャーキャピタルから30億ドル(約3300億円)と評価されている。同社の最新の資金調達ラウンドは2020年で、1億2000万ドル(約132億円)の現金を獲得している。
売上と評価額は増大しているが、ここ数年、ワービー・パーカーの収支報告は安定していない。会計年度の過去3年間、ワービー・パーカーは利益を上げていないか、年によっては数百万ドルもの損失を計上している。同社は、SEC提出書類で次のように述べている。「当社は過去に損失を出しており、収益を達成または維持できない可能性もある」。
同社は、2019年は損益なしだったが、会計年度2018年に2290万ドル(約25億円)、2020年には5590万ドル(約61億円)の損失を計上している。会計年度2018年と2019年に、ワービー・パーカーの売上はそれぞれ2億7290万ドル(約300億円)と3億7050万ドル(約407億円)であった。今年6月30日の時点において同社の売上は2億7050万ドル(約297億円)で、730万ドル(約8億円)の損失を計上している。
同社の提出書類のリスク要因セクションでは、同社の損失の累積は主にパンデミックに関係する要因、たとえば配送コストやサプライチェーンの中断が原因とされている。これらの問題点は、将来の売上と収益性にも影響する可能性がある。
同社は次のように述べている。「部品コスト、配送コスト、長いリードタイム、供給の不足、供給の変化により当社のサプライチェーンが中断される恐れがあり、賃金率の上昇やインフレなどの要因が当社のビジネス、財務状況、営業成績に重大な悪影響を及ぼす可能性がある」。
ビジネスモデルの変化
過去数年間にわたり、ワービー・パーカーは直接サービス、たとえば店頭での検眼技師による検査と、処方箋のリモート更新など関連サービスの成長に注力してきた。
ワービー・パーカーの初期のビジネスモデルでは、顧客に眼鏡のサンプルを送付して自宅で試してもらうことを中心としていたが、家庭でよりハイテクな体験を楽しめるように、AR試着ツールや仮想視力検査アプリなどのサービスが追加された。
しかし、キャスパー(Casper)やオネスト・カンパニー(The Honest Company)などほかの小売ブランドと比較して、ワービー・パーカーは依然としてほかのカテゴリへの多角化が進んでいない。2020年末の時点で、同社の売上高の95%は眼鏡によるもので、わずか2%がコンタクトレンズである。
ワービー・パーカーは、顧客を維持して売上を増やそうと計画している。同社は、ワービー・パーカーの製品を初めて購入した顧客のうち50%がリピート客になっていると強調している。
従来型店舗の重要性を強調
この数年間で、ワービー・パーカーはeコマースだけに特化したブランドから、販売の大部分を従来型の小売に頼るものに変化してきた。2019年において、同社の売上の65%は店舗でのものだ。現在は、合計で145を超える小売店舗を保有している。
同社によれば、その店舗利益率は増大しつつあり、平方フィートあたりの売上は約2900ドル(約32万円)に達している。同社はS-1で次のように主張している。「当社の小売店舗は開設からわずかな期間で利益を出しており、平均で20カ月以内に初期投資額を回収することを目指している」。
ワービー・パーカーは現在、従来型店舗をこのように重視しているが、小売店舗での雇用の課題が潜在的なリスク要因だと指摘している。
同社はS-1添付資料で次のように述べている。「検眼技師、眼鏡技術者、その他視覚ケアの専門家を自社の小売店舗で雇用できなければ、ビジネス、財務状況、経営成績に重大な悪影響を及ぼす恐れがある」。
そして、パンデミック中に多くのブランドからeコマース販売の急増が報告されたにもかかわらず、「当社は依然として従来型店舗に強い信頼を寄せている」と、今年初頭に共同創設者でCEOのデイブ・ギルボア氏が米モダンリテール(Modern Retail)に語っている。同ブランドは、2021年末までに35の新店舗の開設を予定している。
ギルボア氏は次のように語っている。「当社の店舗で購入するお客様も、多くは来店前に何らかのオンラインツールを使用している。2020年に当社の店舗を訪れるお客様の数は減少したが、パンデミック前よりも購入の意思が強いため、コンバージョン率ははるかに高くなっている」。
[原文:Warby Parker’s S-1: A digitally-native brand discovers the power of stores]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:戸田美子)