マーケターによれば、 ゼロパーティーデータ は今やファーストパーティーデータのような存在になってきている。データの収集が、各ブランドや小売業者にとってさらに重要な注目分野となるにつれ、デジタル広告コンサルタントが、ゼロパーティーデータと呼ばれるものを収集するよう企業に促すことが増えてきている。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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マーケターによれば、ゼロパーティデータはいまやファーストパーティデータのような存在になってきている。
データの収集が、各ブランドや小売業者にとってさらに重要な注目分野となるにつれ、デジタル広告コンサルタントがゼロパーティデータと呼ばれるものを収集するよう企業に促すことが増えてきている。
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ゼロパーティデータという用語は、2017年にフォレスター(Forrester)によって広く知られるようになったもので、顧客が購入を行う前に、まったく自発的に提供するデータを意味する。この用語は、eコマースブランドがサードパーティデータへの依存を減らそうと試みるにつれ、さらによく使われるようになった。最近のiOSアップデートや、来年後半に迫ったGoogleのサードパーティ製Cookieの使用終了など、プライバシーポリシーの変化のなかで、ゼロパーティデータのトレンドが盛り上がりを見せている。
データ収集ステップの全貌
マーケターは、カスタマージャーニーのどの段階で情報を収集するか、また誰が収集するかに応じて、さまざまなデータ収集の方法を使い分けている。ファーストパーティデータは、企業が自社のウェブサイトやアプリを通じて収集する情報のことで、通常は、顧客が注文を行うか、ロイヤルティプログラムに登録するときに収集される。サードパーティデータは、顧客が取引を行う相手とは別の企業により収集される情報を指し、多くの場合はさまざまなソースからの情報がつなぎ合わせられる。たとえば、ユーザーがFacebookに対して、Facebook以外に訪問するウェブサイトの追跡を許可しているなら、企業はその情報を使用して、そのユーザーに対象を絞った広告を表示できる。これがサードパーティデータ収集の例だ。
小売業者が顧客に関するデータを収集する方法のうちもっとも代表的なものは、顧客がその業者から何かを購入するときだ。この時点で小売業者は、顧客が何を購入するかを知っているだけでなく、顧客の現在の郵送先、メールアドレス、電話番号まで把握している。しかし、データ収集が小売業者にとってさらに重要なツールとなるにつれ、顧客からより粒度の細かい情報を得ようと、どのような商品に興味を持っているかについてのクイズなど、別の方法を探し求めるようになってきた。ここで脚光を浴びるのが、ゼロパーティデータだ。
フォレスターのアナリストであるステファニー・リュー氏は、ファーストパーティやサードパーティのデータ収集とは異なり、「ゼロパーティデータはトランザクションの前に生成され、顧客がいつでも失効させられる」と、米モダンリテールに語った。この顕著な例のひとつは、美容品小売業者が化粧品のショッピング中に顧客の肌のトーンについて質問するときだ。「このデータは一般に、サードパーティのソースからは購入できない特定のデータでもある」とリュー氏は述べている。
ゼロパーティデータは実際に、カスタマージャーニーにおいて、どの商品を注文するかを顧客が決めるより前に重点を置いている。フットウェアブランドのアシックス(Asics)はゼロパーティデータの収集を試みている企業のひとつで、主に運動習慣やランニングへの興味について自社サイトへの訪問者に質問している。
プライバシーの転換への準備
広告代理店のベラルディ・ウォン(Belardi Wong)でデジタル戦略および統合マーケティング担当バイスプレジデントを務めているカラー・マーフィ氏は、Googleでサードパーティ製Cookieの使用が終了したとき、ゼロパーティデータの利用が拡大すると予測していると語る。
2023年末に予定されているサードパーティ製Cookieの使用終了は、ブランドや小売業者を危惧させている。これは、ウェブブラウザ市場全体の65%以上をGoogle Chromeブラウザが占めているためだ。サードパーティ製のCookieを廃止すると、ブランドは顧客がどのウェブサイトを訪問しているかを追跡する方法が制限される。この情報はこれまで、ブランドの広告のリターゲティングに不可欠だったものだ。
Googleは2020年1月の声明において、広告主がよりプライバシーに配慮した広告のリターゲティング用ツールを使用することを促進するため、サードパーティ製Cookieを廃止すると述べた。今年の時点でGoogleの代替プランは、広告主に対して、多くのファーストパーティAPIやインサイトツールを搭載した同社のプライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)スイートへのアクセスを提供することである。
「ある意味、これはiOSの変更を、Androidユーザーにも拡大するものだ」と、マーフィ氏は述べている。
これが、デジタルネイティブのブランドがゼロパーティデータのブームに飛びつく大きな理由だ。
調味料ブランドのスパイソロジー(Spiceology)のCEOを務めるチップ・オーバーストリート氏は、オンラインでの存在感を拡大しようとしている食料品業者にとって、ゼロパーティデータは特に重要だと語る。
2013年に設立されたスパイソロジーは、長年にわたりおもにシェフやレストランに商品を販売することで成長してきた。しかし、2020年にパンデミックがはじまって以来、同社は家庭での調理向けのマーケティングを重視しはじめた。これにより同社は、それらの消費者がどのような人々なのかを明確化することに本腰を入れるようになった。
「顧客インサイトに関して、当社は『多いほど良い』という考えで取り組んでいる」とオーバーストリート氏は説明する。現在のところ、同ブランドの買い物客の3分の1は、すでにサードパーティ製のCookieを無効にしているChromeユーザーだと、同氏は語っている。これにより同ブランドは、D2Cチャネルで成長するため、より多くのファーストパーティやゼロパーティのデータを入手することを迫られている。
スパイソロジーはまず最初に、もっとも基本的なデータとして、メールアドレス、電話番号、郵便番号の収集に注力したと、オーバーストリート氏は語っている。同社は最近、SMSの顧客リストを構築する試みをはじめた。これらの情報は、同社のファーストパーティデータである顧客プロフィールの一部として、登録時のウェルカムメールや購入後に収集されたものだ。
しかし最終的には、同社のサイトを訪問して注文しようとしている、すべての人の料理や調味料の好みなど、訪問者のより細かい味覚プロフィールを、クイズやアンケートを通して取得したいと考えている。同社はこの目的のため、シェフやレストランの顧客向けに別のウェブサイトを作成し、3月に公開する予定だ。一方、現在のサイトでは、自宅で調理を行う人々がさまざまなページを参照している際に、スパイソロジーの商品をいつ、どれくらいの頻度で使用する計画かを質問することに重点を置いている。
データの獲得
多くのSKUを持つ企業にとって、データの収集は今後のマーケティング作業を支援するだけでなく、さまざまなタイプの顧客がどのような商品を求めているかを把握するためにも重要だ。
これは、クイズやアンケートのポップアップなどのキャンペーンを利用して顧客の性格特性を測ることを意味すると、メディアコンサルティング代理店のバウンテアス(Bounteous)のシニアバイスプレジデントを務めるジリアン・テート氏は語る。同社はD2Cの石けんブランドのドクタースクアッチ(Dr. Squatch)やコンブチャブランドのジーティーズ・リビングフーズ(GT’s Living Foods)などの企業と、幅広い層をどのようにターゲティングするかについて取り組んでいる。
テート氏は次のように述べている。「いくつかのブランドは、顧客向けの将来のコンテンツを精選するため、一見して関係のない情報を求めている。クライアントには、BuzzFeedのようなパーソナリティクイズを自社サイトで実施し、性格特性を抽出することを勧めている」。たとえば、ゼロパーティデータを収集するため、ドクタースクアッチは、顧客に対して好きなカクテルやアウトドア活動をたずねる。「その顧客がスコッチとキャンプが好きなら、ウッド調の香りのウッジーソープ(woodsy soap)を勧める」。

好きなアクティビティをたずねるドクタースクアッチのクイズ
これに対して、ジーティーズ・リビングフーズは商品の懸賞を行ってゼロパーティデータを集めていると、テート氏は語る。同ブランドは今年初め、ユーザーが味についての好みとメールアドレスの情報を入力すれば、同社のシナジーコンブチャ(Synergy kombucha)商品の1年分が当たる懸賞にエントリーできるキャンペーンを行った。
初期段階
ゼロパーティデータは依然として応用の初期段階にある。
マーケティング代理店で、1-800-フラワーズ(1-800-Flowers)やジョンハーディ(John Hardy)と協力しているオーディエンス・エックス(AudienceX)で分析およびインサイトのディレクターを務めるベンジー・ヨアヒム氏は、「ゼロパーティデータの収集は、すべてのクライアントに最適なものではない」と述べている。
「そのコンセプトは依然として、マーケターたちが具体化している段階だ」と、ヨアヒム氏は述べている。同氏はさらに、ゼロパーティデータはただちに収益を生み出すものではないため、このデータを収集するための投資は、すべての消費者向けブランドやサービスにとって有意義とは限らない、としている。「ブランドによっては、当面はファーストパーティデータに集中するほうが有意義かもしれない」。
実際に、ゼロパーティ情報の収集は依然として黎明期にあり、マーケターはこれをブランドの戦略にどのように適用するのがベストかを見極めているところだ。
フォレスターのリュー氏によれば、ゼロパーティデータ戦略を実行するための秘訣は、「価値の交換について、顧客に対して極めて透明であること」だ。たとえばブランドは、顧客の行動の嗜好について質問するのは、商品をより正確におすすめするためだということを明確にする必要がある。これは、全世界でプライバシー関連の法律が変化し続けていることから特に重要となる。「この価値の交換は取引によるものではないので、重要なのは、それをデータ漁りのように扱わないことだ」。
[原文:Unpacked: Why zero-party data became the brand and retailer marketer buzzword du jour]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)