ティンバーランド (Timberland)が1月10日に開始したティンバーループ(Timberloop)は、循環型サステナビリティプログラムで、顧客が古い商品を寄贈し、同社がそれを修理して再販売またはリサイクルし、顧客は次回の購入で10%の割引を受けられるというものだ。
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ティンバーランド(Timberland)は1月10日、ティンバーループ(Timberloop)と呼ばれる、循環型サステナビリティプログラムを開始した。これは、顧客が古い商品を同社へ寄贈し、それを修理して、再販売またはリサイクルするという内容だ。その顧客は次回の購入で、10%の割引を受けられるようになっている。
1952年にボストンで設立されたティンバーランドは、さまざまなアウトドア用フットウェアとアパレルを販売しているが、新しいティンバーループプログラムではこれらの商品すべてが対象となる。数カ月の寄贈期間を経て、春には顧客が中古商品を割引価格で購入できる再販専用サイトを公開する予定だ。ティンバーランドのグローバルコミュニティエンゲージメントおよびアクティベーション担当ディレクターであるアトランタ・マクルレース氏は、このプログラムは、2030年にすべての商品の完全循環を実現するという同社の目標達成に貢献し、サステナビリティにますます関心を抱くようになっているアウトドア愛好家にもアピールできるものだと語っている。
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再販専用サイトをローンチ
米国のティンバーランドの消費者は、古い商品を店舗でもオンラインでも引き取ってもらうことができる。摩耗の比較的少ない商品はあとで再販売され、使用により大きく損傷しているものはジッパーやハトメなどの部品レベルでリサイクルされると、マクルレース氏は説明している。商品を寄贈した顧客は、引き換えとして次に店舗またはオンラインで購入を行うとき10%の割引を受けられる。このプログラムは、リサークルド(Recircled)とのパートナーシップにより行われる。
「ティンバーループプログラムは、当社が2030年にネットポジティブな商品を作り出すという目標を達成するための重要なマイルストーンだ」とマクルレース氏は述べている。
カーボンポジティブな商品という目標を達成するため、同ブランドは循環型やクローズドループモデルにより、すべての商品を再販売またはリサイクルし、2回目、3回目のライフサイクルを与えることを推進している。さらに、ティンバーランドは「再生型農業」により得られた100%天然素材の商品を作り出すことも計画している。再生型農業は、被覆作物や耕地削減などの技法により、農業をカーボンニュートラル、さらにはネットポジティブにすることをめざすものだ。
マクルレース氏は、春に行われる同ブランドの再販専用サイトのローンチがどのようなものになるかを語るのはまだ早いと語る。しかし、ティンバーランドは委託販売という大きなトレンドに力を得ており、自社のアウトドア志向の消費者はこのモデルを受け入れると信じている。
「当社の消費者の多くは、アウトドアに関する当社の情熱を共有しており、我々と同様に自然環境の保護を望んでいる」と同氏は述べている。
循環型モデルを構築する価値
2021年にはサステナブルな慣行、または少なくともサステナブルなマーケティングへの関心が高まった。たとえばGoogleトレンド(GoogleTrends)によれば、2018年の11月から2021年の11月にかけて、「サステナブルな商品(sustainable products)」という用語のGoogle検索指標は185%も増加した。
しかし、ティンバーランドはパタゴニア(Patagonia)、L.L.ビーン(L.L. Bean)、ザ・ノース・フェイス(North Face)などの歴史あるアウトドアブランドと比べ、多くの点において再販売のゲームで後れをとっている。パタゴニアは2017年に無償修理プログラムを、ザ・ノース・フェイスは2017年にリサイクリングプログラムを開始しており、L.L.ビーンは防水ビーンブーツなどの商品の修理を80年代から続けている。
ティンバーランドは今のところ、商品を修理して顧客に返すサービスを行っていない。しかし、マクルレース氏はそのモデルの開発が「当社がたしかに熱望するもの」だと述べている。
新しい消費者向け商品のレビューサイトであるシングテスティング(Thingtesting)の創設者のジェニー・ギランダー氏は、循環型モデルは単にグリーンの名を騙ったマーケティングを行うのとは異なり、真にサステナブルなブランドに変貌するための「正しい第一歩」だと語る。
「各ブランドは、世に送り出す商品に責任を持ち、その商品の最終的なライフサイクル全体を考慮すべきだ」と、ギランダー氏は述べている。
エヌピーディーグループ(NPD group)のファッションフットウェアとアクセサリーのアナリストであるベス・ゴールドステイン氏は、循環型プログラムが「投資回収をすぐに数量化することは困難かもしれない」としながらも、最終的には「この方向に進まないことのリスクはあまりにも大きい」と述べている。
この戦略は、ブランドがサステナビリティの目標に到達するためだけでなく、アパレルの再販ブームを活用したものでもあると、ギランダー氏は語っている。ボストンコンサルティンググループ(Boston Consulting Group)によれば、アパレルとアクセサリーの再販市場は、今後5年間にわたって毎年15%から20%増加すると予測されている。
「別の方法として、ブランドの品物や商品をほかの中古品プラットフォームで売ることも考えられる」とギランダー氏は述べている。ブランドが自社独自の再販プログラムを使用すれば、新品と中古品とで一貫したエクスペリエンスを生み出すことができ、商品のライフサイクルを通じて消費者を囲い込むことができるとも、同氏は付け加えている。
循環させることを前提とした商品づくりも
この新しいティンバーループプログラムに加えて、ティンバーランドは循環性を念頭にデザインされた新しい「ティンバーループ・トレッカー(Timberloop Trekker)」ハイキングブーツをアースデイ(4月22日)に発売することも予定している。たとえば、ほかのティンバーランド製のブーツと比べて靴底を簡単に外せるため、リサイクルを簡単に行える。将来的に、ティンバーランドは分解しやすさを念頭に置いてデザインしたスタイルをさらに増やしていくと、マクルレース氏は語っている。
ティンバーランドは今後、新たなサステナビリティのための活動を強調したマーケティングにも投資していくことを計画している。同ブランドは、特にアースデイや春の大掃除など、サステナビリティを主眼としたイベントの際に、ソーシャルメディアや電子メールによるマーケティングを通じてティンバーループをプロモートする計画だ。店舗の従業員はティンバーループをプロモートするボタンとTシャツを着用し、店舗には引き取り専用のスペースを設ける。
「あらゆる消費者が簡単に参加できるようなポイントを必ず設けるようにする」とマクルレース氏は述べている。
[原文:Timberland launches recycling program for footwear and apparel]
Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Timberland