ショッピファイのクロスボーダーツールは現在、現地通貨と支払方法、価格の変換、現地言語でのローカルウェブサイトのドメインを扱っている。9月にはこれらの機能が、ショッピファイマーケット(Shopify Markets)と呼ばれる集中制御パネルの中心に組み入れられた。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、小売業の変革の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
Shopify(Shopify)は、出品者が単一の店舗で全世界向けの販売を簡単に行えるようにすることで、国際的な成長を目指している。
同社はeコマースソフトウェア企業で、2018年からクロスボーダー(国境を超える)販売ツールを拡大。Adobe(アドビ)やイーマーケター(eMarketer)の推定によれば、全世界のeコマース市場は4兆ドル(約456兆円)にのぼり、そのほとんどは手つかずの状態で、同社はこの市場の獲得を目指している。現在のところ、Shopifyの出品者は英語圏の国々に強く集中している。2020年の時点で、同社のソフトウェアをオンライン販売に使用している170万の出品者のうち50%は米国、8%は英国、6%はオーストラリアに存在する。
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Shopifyのクロスボーダーツールは現在、現地通貨と支払方法、価格の変換、現地言語でのローカルウェブサイトのドメインを扱っている。9月にはこれらの機能が、Shopifyマーケット(Shopify Markets)と呼ばれる集中制御パネルの中心に組み入れられた。これは野心的な拡大計画の一部で、B2Bサービスへの新たな注力も含まれる。これらはすべて、成長が鈍化するなかで同社が拡大を目指す戦略となる。
次の飛躍への第一歩
国際的な小売に特化しているeコマース代理店は、Shopifyが国際市場を重視する結果として、より多くの出品者がプラットフォームをShopifyに乗り換えるだろうと、米モダンリテールに語った。Shopifyは、セールスフォース(Salesforce)やAdobeの保有するマジェント(Magento)のような、より上位のソフトウェアプロバイダからシェアを奪うことも可能だ。
ウィ・メイク・ウェブサイト(We Make Websites)のソリューションマネージャーであるルーシー・レイド氏は、「ビジネスは自社のeコマースウェブサイトを3年ごとに見直すべきだ」と述べている。同社は英国を拠点とするShopify Plus(プラス)代理店で、玩具メーカーのハズブロ(Hasbro)、アパレルメーカーのパンゲア(Pangaia)やジグソー(Jigsaw)などの国際的なブランドとも協力している。「しかし、去年までShopifyは、当社のクライアントがプラットフォームの変更先として考えるような域には達していなかった」。
この移行はある意味で、Shopifyをいくつかの最大手のレガシープラットフォームと競合させる試みだ。eコマースコンサルタントで、ゲームブランドのソニープレイステーション(Sony PlayStation)やシューズブランドのドクターマーチン(Dr Martens)とも仕事をしたことがあるポール・ロジャース氏は次のように述べている。「セールスフォースは特に、Shopifyよりもコストが5倍も高い。同社はGMVの1~3%を徴収し、開発者コストや代理店手数料もすべて高額だ。Shopifyマーケットにより、多くのブランドが短期間でShopifyに移行するだろう」。
これらの通知は、Shopifyからの悲観的な収支報告に続いて発表された。Shopifyの前年比の売上とGMVは第3四半期の時点でそれぞれ46%と35%増加したが、昨年見られた86%と96%の増加には及ばなかった。
無視されがちなEC市場
ショッピファイのクロスボーダー販売ツールは依然として開発中だが、同社が国際的な拡張において直面している最大の障壁のひとつを軽減できる可能性があると、代理店は語る。現在のところ、複数の地域で販売を希望する出品者は、高価な手数料を回避するため、操業する国ごとに新しいストアを作成する必要がある。これは手間のかかる作業で、翻訳やローカライゼーションに関する落とし穴が存在する。
レイド氏によれば、現地での支払い方法や言語の追加などのツールは、これらの問題にうまく対処できると考えられる。「大規模なビジネスは、10の店舗を作成することも、1つの店舗で運用することで発生する通貨交換手数料を支払うことも望まない。こんなやり方ではうまくいかない」。
ロジャース氏は次のように述べている。「(フィットネスアパレルの)ジムシャーク(Gymsharks)や(シューズの)オールバーズ(Allbirds)のような大きなブランドに対して、ショッピファイの最大の不満点は何かと質問すれば、4つも5つも店舗を持ちたくないと答えるだろう」。
クロスボーダー販売を目指しているのはショッピファイだけではない。ビッグコマース(BigCommerce)のようなeコマースソフトウェア企業も、同じような統合を多数導入することでローカライゼーションを簡素化している。この点についてビッグコマースは、もっとも多くの出品者が移行したのはマジェントからだと述べている。
代理店から見た改良の余地
代理店が改良の余地を見出している分野はいまだ数多い。ショッピファイのチェックアウトは「同社の最良にして最悪の点」とレイド氏は述べており、同社が国際市場に進出を希望するなら、海外の支払ゲートウェイプロバイダとのあいだでさらに多くのパートナーシップを締結する必要があると付け加えている。
ほかの問題点は、顧客向けのストアフロントがローカライズされても、チェックアウト処理は共通の可能性があるということだ。国ごとに固有の割引やプロモーションのような単純ながら重要な機能が同じバックエンドを経由するため、場所を問わず誰でもアクセス可能になってしまうと、レイド氏は語っている。氏はさらに次のように述べている。「ショッピファイはときに、ローカライゼーションしたという印象を与えているだけの場合がある」。
ロンドンを拠点とするeコマース用ウェブ設計代理店のチャールエージェンシー(Charle Agency)の創設者でCEOを務めるニック・ダン氏は、ショッピファイマーケットで言語のコントロール機能が改善されることを期待していると語っている。「いくつかのアプリプロバイダを使用して翻訳処理を自動化できるが、出品者がハブから直接コンテンツをコントロールできれば素晴らしいものになるだろう」と氏は述べる。
しかしながら、代理店によればショッピファイは正しい方向に向かっているという。「同社が向かっている方向は素晴らしい。これらのツールにより、クロスボーダー販売ははるかに簡単になる」とロジャース氏は述べている。
若い起業家にとって唯一無二
ショッピファイが競合他社に対して持つ主な優位点は、若い起業家にとってeコマースといえばショッピファイとほぼ同義であるということだと、レイド氏は語る。この要因の1つは、同社のオンラインとソーシャルメディアのマーケティングマシンによるものだが、その多くは同社の分かりやすいメッセージングに集約される。
氏は次のように述べている。「ショッピファイは自社を理解しやすく、非常に身近なものにしている。誰もがショッピファイの名前を聞いたことがある。ミレニアル世代やジェネレーションZが自分の寝室から商売を始めようとするとき、ショッピファイなら簡単にスケーリングが可能だ」。
[原文:Shopify’s latest features eye $4 trillion international market]
Saqib Shah(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)