Shopify(ショッピファイ)では今後、Shopifyでストアフロント(自社のWebサイト)を使用していないエンタープライズ規模(大規模)の小売企業であっても、Shopifyの人気決済機能であるShop Payを使って取引を完了できるようになる。
テック大手企業であるShopifyは6月21日、Shopifyを利用していないエンタープライズ規模の小売企業が、Shop Payを利用できるようになると発表した。Shop Payは、Shopifyでの支払い情報を保存できるデジタルウォレットで、全世界で1億人以上の買い物客が利用している。エンタープライズ規模の小売企業は、Shopifyが1月に発表した、エンタープライズ企業向けのコンポーザブルスタック「コマース・コンポーネンツ・バイ・Shopify(Commerce Components by Shopify)」を通じてのみ、Shop Payを利用できる。これまで、大手のB2B小売企業は、Shop Payをスタンドアロン型のコンポーネントとして組み入れる方法がなかった。
今回の発表は本質的に、Shopifyが1月に発表した内容の延長線上にあるものだ。同社はセールスフォース(Salesforce)やコマースクラウド(Commerce Cloud)といった競合との競争力を高めるための手段として、エンタープライズ規模の小売企業を獲得しようとしている。同社のサービスはこれまで、小規模でデジタルネイティブな新興企業をサービスを対象としてきたが、現在の目標は、大手の小売企業がShop Payを簡単に使用できるようにすることだという。しかし、Shop Payの利用範囲を拡大するにはさらに多くのエンジニアリングの支援が必要となる可能性がある。同社は昨年後半から、Shopify以外の複数のeコマースプラットフォームでShop Payのライブバージョンをテストしていると説明した。
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Shopify(ショッピファイ)では今後、Shopifyでストアフロント(自社のWebサイト)を使用していないエンタープライズ規模(大規模)の小売企業であっても、Shopifyの人気決済機能であるShop Payを使って取引を完了できるようになる。
テック大手企業であるShopifyは6月21日、Shopifyを利用していないエンタープライズ規模の小売企業が、Shop Payを利用できるようになると発表した。Shop Payは、Shopifyでの支払い情報を保存できるデジタルウォレットで、全世界で1億人以上の買い物客が利用している。エンタープライズ規模の小売企業は、Shopifyが1月に発表した、エンタープライズ企業向けのコンポーザブルスタック「コマース・コンポーネンツ・バイ・Shopify(Commerce Components by Shopify)」を通じてのみ、Shop Payを利用できる。これまで、大手のB2B小売企業は、Shop Payをスタンドアロン型のコンポーネントとして組み入れる方法がなかった。
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今回の発表は本質的に、Shopifyが1月に発表した内容の延長線上にあるものだ。同社はセールスフォース(Salesforce)やコマースクラウド(Commerce Cloud)といった競合との競争力を高めるための手段として、エンタープライズ規模の小売企業を獲得しようとしている。同社のサービスはこれまで、小規模でデジタルネイティブな新興企業をサービスを対象としてきたが、現在の目標は、大手の小売企業がShop Payを簡単に使用できるようにすることだという。しかし、Shop Payの利用範囲を拡大するにはさらに多くのエンジニアリングの支援が必要となる可能性がある。同社は昨年後半から、Shopify以外の複数のeコマースプラットフォームでShop Payのライブバージョンをテストしていると説明した。
Shopifyにおける決済の重要性
ShopifyのCOO兼商品担当バイスプレジデントであるカズ・ネジャシャン氏は、大規模マーチャント(加盟店)のいくつかがShop Payを利用してこなかった理由のひとつは、スタックを完全にShopifyに移したくなかったからだという。「大手小売企業のCEOからもっとも多く問いかけられる質問は、『当社はShop Payを利用できるか?』だった。この質問に、ようやく『できる』と回答できるようになった」とネジャシャン氏は述べた。
同氏によると、Shop Pay拡大の動きは、Shopifyに対する多くの大規模マーチャントからの需要が増加していることによるものだという。英国発ファッションブランドのテッドベーカー(Ted Baker)や、カナダ発のドーナツチェーンであるティムホートンズ(Tim Hortons)、ファミリー向けeコマースマーケットプレイスのズリリー(Zulily)などのブランドが、第1四半期にShopifyのコマースコンポーネントに加入した。同氏は、「コマースコンポーネントへの需要が極めて大きかったため、その需要に対応するために営業チームの規模を拡大している」というが、販売チームの規模が実際にどの程度拡大したのかは明らかにしていない。
さらに広く捉えると、この動きはShopifyにおける決済の重要性をさらに強めるものだ。「支払いは常にShopifyの最重要課題だった。同社の収益の大部分はそこから生み出されるからだ」と、eコマース開発代理店のネタリココマース(Netalico Commerce)の創設者マーク・ウィリアム・ルイス氏は語る。「同社は明らかに、Shopifyのほかの部分を使用しない人々でも、Shop Payを利用できるようにしたいと考えている。同社が取引を処理できれば、彼らがその手数料を受け取れるからだ」と同氏は付け加えた。
ファネル下部でのコンバージョン
ShopifyがShop Payを初めて立ち上げたのは2017年のことで、それ以来何年にもわたり、機能追加とパートナーシップ拡大によって徐々に成長してきた。たとえば、2020年にアファーム(Affirm)と提携し、Shop Payに後払い機能を追加した。しかし、はじめてShopifyからShop Payを技術的に切り離したのはメタ(Meta)社で、同社がFacebookやインスタグラムのアプリ内決済にShop Payを使用したときだったとネジャシャン氏は述べた。
Shopifyがエンタープライズ規模の小売企業にShop Payを採用するよう説得する際に訴求しているのは、コンバージョンを向上させる能力だ。同社はこの点に関するマーケティングを強化しており、Shop Payによってどれだけコンバージョンが増えるかを示すための調査を委託し、その調査結果を提示してきた。
「顧客獲得コストが増加しつつある現在、ファネル下部でのコンバージョンは勝負どころであり、もっとも重要な部分だ。つまり、ストアフロントを訪れた買い手に対するファネル下部でのコンバージョンが大切だ」と、ネジャシャン氏は述べている。
流通取引総額の増加を期待
ニューヨークを拠点とするeコマース代理店ネッサショッピファイ(Nessa Shopify)の創設者兼CEOのフマユン・ラシッド氏によれば、大手のマーチャントにShop Payを提供することで、Shopifyは最終的には流通取引総額をより迅速に増やせるようになる。
「年間5000万ドル(約71億5000万円)から1億ドル(約143億円)を超えるような取引を行っている大手エンタープライズブランドをターゲットにすれば、取引の数量は膨大になる。長期的に、Shopifyの収益が大幅に増加する可能性がある。これによって同社が対応できる市場が拡大し、同社の決済ソリューションを使用するマーチャントの数も増加し、全体的な取引数も増加するからだ。これは大きな優位点だろう」と、ラシッド氏は語った。
オムニチャネル戦略を採用しているエンタープライズ規模の小売企業にとって、Shopifyへの移行には、社内のデジタルチームに頼るか、大規模な代理店を雇う必要があっただろうとラシッド氏は付け加えた。しかし、Shopifyのストアフロントを利用していないマーチャントでもShop Payを利用できるようになったことで、テストや学習が非常に容易になる。
「これは賢い戦略だと思う。企業はコンバージョン率の高いShopifyの決済を試し、収益の可能性を高めることができるのだから」とラシッド氏は語った。
アディエンとのパートナーシップ
ルイス氏はShop Payのより広範な運用開始に関して、どちらかというと冷静な見方をしている。Shopifyは1月、エンタープライズ規模の小売企業を対象にしたコマースコンポーネントによって、Shopifyのどの機能を使いたいかを選べるようにすると発表している。そのため、今回の発表は、「再度告知しただけだと思う」という見解を述べた。「Shopifyは、この新機能を世界に再度周知しようとしているのだろう」。
同氏は、過去にShopifyを検討したことがあっても、採用に至らなかった大企業のCIOやCTOに働きかけ、Shopifyを統合できる新たな方法を紹介したいと付け加えた。
それに関して、Shopifyもまた、グローバルな企業向け決済プラットフォームであるアディエン(Adyen)と提携し、エンタープライズ規模のクライアント企業を獲得するとともに、既存の統合を強化し、企業向けの接続性と機能性を海外で加速させると語っている。
このアディエンとのパートナーシップ拡大により、Shopifyを利用しているエンタープライズ規模のマーチャントは、クレジットカード、Apple PayやGoogle Payなどのウォレット、オランダのイデアル(iDEAL)やフランスのカルテバンケール(Cartes Bancaires)などの国際的な決済方法を含め、全世界の市場で多種多様な決済に対応できるようになる。この統合は今年後半に開始される予定だと、Shopifyはプレスリリースで述べている。
ネジャシャン氏は、「アディエンとShopifyは、Shopifyの決済上でアディエンが非常にうまく機能するように統合された。アディエンを好むマーチャントにとっては、非常に自然で使いやすく感じられるだろう」と、は述べている。
技術的サポートの必要性
しかし、ラシッド氏は、多くのマーチャントがShop Payを利用できるようになることで、より多くの技術的サポートが必要になる可能性があると警告した。「Shopifyは、Shop Payに依存する多くの大手小売企業をサポートするため、エンジニアリングの規模を拡大する必要に迫られるだろう」と同氏は述べる。
結局のところ、「我々が今年行おうとしていることのひとつは、エンタープライズ規模の小売企業が希望するスタックを選べるようにすることだ」と、ネジャシャン氏は述べている。
[原文:Shopify is making Shop Pay available to enterprise retailers]
Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Shopify