ソーシャルコマースマーケットプレイスのBasic.Space(ベーシックスペース)はアーティスト、ブランド向けの招待制プラットフォームとして2018年に設立され、プロテニス選手の大坂なおみ氏などの有名人を引き付けてきた。同社は現在、商品ドロップを実験的に行っているが、これもまた排他的なアプローチを取っている。
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ソーシャルコマースマーケットプレイスのBasic.Space(ベーシックスペース)は排他性に基づいて設立された。同社はアーティスト、クリエイター、ブランド向けの招待制プラットフォームとして2018年に設立され、プロテニス選手の大坂なおみ氏などの有名人を引き付けてきた。同社は現在、商品ドロップを実験的に行っているが、これもまた排他的なアプローチを取っている。
Basic.Spaceは11月10日、セレクトトデー(Select Day)イベントを開始した。これは、さまざまなクリエイターによる一点ものの商品ドロップを、オンラインでの「体験」と結びつけて行うものであると、Basic.SpaceのCEOで創設者のジェシー・リー氏は語る。セレクトデーでは、Basic.Spaceの販売者8社が、商品ドロップに合わせて独自のデジタル体験を提供した。Basic.Spaceのロイヤルティプログラム会員は、最初の一連のドロップにアクセスすることができる。
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デジタルのドロップモデルは、ブランド、小売業者、マーケットプレイスが話題を集める方法として流行っており、クッキー販売の新興企業からジュエリーブランドまでさまざまな企業に採用されている。しかしこれは同時に、ドロップが人目を引くためには、単にユニークな商品であるだけでは足りないということも意味する。Basic.Spaceが採用している方法は、ドロップをホストとするとともに、アーティストや高級品ブランドが自社商品の背後にあるクラフツマンシップを披露する機会を設け、このドロップモデルに賛同してもらうことに期待している。
IRLでの感覚を提供する
Basic.Spaceは現在、243人の招待制販売者が参加している。そのなかにはオフホワイト(Off-White)のCEO兼ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)のクリエイティブディレクターであるヴァージル・アブロー氏から、ファッションと音楽のレーベルであるメゾンキツネ(Maison Kitsune)までが含まれている。同ブランドは、手数料や取り分のパーセンテージの仕組みについて詳細を公開していない。
リー氏は次のように述べている。「私たちは、従来VIPやタレントだけが参加できた特別イベントへのアクセスを可能にしたいと考えている。どうすればオンラインのデジタル空間でも、実店舗に行ってデザイナーや商品を発見するような、IRLでの(現実世界での)体験型感覚を得られるだろうか? 私たちは、多少のコンテキストと、もう少し質感のあるショッピング体験を(ドロップ用に)提供することを望んでいる」。
セレクトデーのドロップでは、クリエイターやアーティストが、オーディオや映像、ライブストリーミングのテクノロジーを自社のブランドページや商品ページに組み込むことができる。ある販売者は、衣料品を販売するジュリエット・ジョンストン氏が、ソファにハンドペイントをしている様子を公開した。一方、高級デザインハウスのヌオバ(Nuova)はニューボッテガ(New Bottega)やデザイナーのスタジオテンプ(Studio Temp)と提携した。ヌオバはスタジオテンプとともに、エスプレッソコーヒーのセットを発売し、そのセットに込められたクラフツマンシップを自社の「体験」として披露した。
ストリートウェアブランド、プーアル(Puer)の創設者であるノエル・ブロンソン氏が、イベント前に米モダンリテールに語ったところによると、自分のセレクトデーのドロップでは、商品制作のプロセスをドラマ化し、自身のジャマイカ系アメリカ人としてのアイデンティティを強調するつもりだという。氏はビスポークのエアフォース・ワン(Bespoke Air Force 1)スニーカーを販売したが、商品ページではレゲエミュージシャンのオーディス・パブロ氏の音楽と、ジャマイカの映像作家であるジョン・ポール氏による解説ナレーションを聞くことができる。
「このドロップは教育的でインスピレーションを与えるものを目指しているが、少なくとも、とにかく楽しいものにしたい」とブロンソン氏は述べている。
プラットフォーマーたちによるドロップの採用
スニーカー愛好家たちはかつて、シュプリーム(Supreme)など人気のストリートウェアのブランドの店舗の外で、最新かつ最高のスタイルを売り切れる前に入手するため、何時間も行列に並んだ。ナイキ(Nike)はオンラインのドロップ分野のパイオニアで、2015年にはドロップに特化したSNKRSアプリを立ち上げたが、その後、ほかのストリートウェアやスニーカーのブランド、たとえばリーボック(Reebok)も追随するようになった。ドロップは何年も前からオンラインに移行しているが、プラットフォームはより多くのブランドや視聴者を引き寄せるため、ドロップに独自性を打ち出しすようになっている。
ピンタレスト(Pinterest)は11月1日、ライブストリームのショッピングプラットフォームとしてピンタレストTVを開始した。毎週金曜日、オールバーズ(All Birds)、クラウンアフェア(Crown Affair)、アウトドアボイス(Outdoor Voices)などのブランドから商品がドロップされる。ショッピング可能なストリームを見ているユーザーは、商品のことを最初に知り、ブランドの独占割引にアクセスできる。一方で、プラットフォームを使用しているブランドは、カウントダウン・クロックを取れ入れたり、残りの商品数を表示したりすることができる。
コンプレックスネットワーク(Complex Networks)は、11月6・7日開催のコンテンツとコマースのイベントであるコンプレックスコン(ComplexCon)において、ARの統合を行った。スナップAR(SnapAR)とのパートナーシップにより、フェスティバルの直接参加者は、このカンファレンスの仮想マップを引き出し、特定のドロップがどこで得られるかを知ることができる。参加者が会場の正しい場所に物理的に到着すると、ドロップの購入コードが解除される。オンラインのみの参加で会場に行かないスナップチャッターたちは、コンプレックスコンのギフトショップの商品を、ARにアクセスして「試着」し、割り当てられた特定のドロップ時刻に購入できる。
コンプレックスネットワークの地域担当シニアバイスプレジデントであるマイク・トレスバント氏は次のように述べている。「スナップチャットARのレンズは、友だち、そして全世界と共有できるよう設計されている。これは文化的なつながりに根ざしたドロップの文化、仲間意識、競合の起源に立ち返ったものといえるだろう」。
コンプレックスは長期的に、自社のショッピングエコシステムにスナップARを統合する予定だとトレスバント氏は語る。このメディアネットワークには独自のデジタルショップ、より大きなコンプレックスショップのハブ、そして毎年恒例のコンプレックスコン・フェスティバルがあり、複数の刊行物が存在する。
デジタルドロップモデルの成熟につれ、ストリートウェア分野以外の多くのブランドがこのモデルを採用するようになるだろうと、Basic.Spaceのリー氏は語る。
「私たちはいまだ、このドロップモデルをIRLショッピング環境からデジタルに移行する過程の初期段階にあると考える」とリー氏は述べている。
[原文: How Basic.Space is trying to attract artists and luxury brands with drops ]
Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)