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Shopify アプリストアは、巨大なビジネスエコシステムに:「もはや単なるeコマースプラットフォームではない」

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この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、小売業の変革の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]の記事です。

Shopify(ショッピファイ)が行ったアプリのレベニューシェアモデルの変更は、同社のソフトウェアプラットフォーム拡大のための英断として歓迎されている。SaaSスタートアップへの投資が盛んに行われていることもあり、開発者が参加するための強い動機付けとなっている。

Shopifyはこの1年、アプリ開発者向けの条件を大幅に変更した。このeコマースプラットフォームはこれまで、アプリにより1年間に生み出される売上の20%を受け取っていた。8月から、開発者はプラットフォームでの売上のうち最初の100万ドル(約1億1200万円)をすべて自分のものにできるようになった(この基準は毎年リセットされる)。基準額を超えるアプリについても、Shopifyは「基準額を超えた」売上の15%に受取額を減らした。eコマースソフトウェア投資家であるフマユン・ラシッド氏によれば、この影響は直ちに現れた。

ラシッド氏は次のように述べている。「私は、この条件に興味を持ち、アプリの構築について当社と協力を希望するクライアントと何十件もの対話を行ってきた」。氏は、Shopify向けのソフトウェアとアプリを作成しているネッサ(Nessa)のニューヨーク拠点の共同設立者兼CEOでもある。

Shopifyは何年にもわたり、Appleと同様の手法で成長してきた。Shopifyは企業がオンライン販売を行うための基本ツールを提供しているが、同社のアプリストアはより統一されたエコシステムを作り上げ、小売業者と開発者を結び付けることが可能だ。ベンダーは無料ソフトウェアとプレミアムソフトウェアをダウンロードして自社のクイックブックス(QuickBooks)アカウントに接続し、商品が入ったまま放棄されているショッピングカートをチェックするよう顧客に通知し、Amazonでの残在庫数を表示し、WhatsAppのボタンやインスタグラムのフィードを追加できる。Shopifyによれば、小売業者は自社ビジネスの運営に平均6つのアプリを使用する。

アプリストア、急成長後の停滞

オンラインショッピングが前例のない成長を示した年のあと、180万近くの小売業者がShopifyのソフトウェアを使用するようになり、同社はeコマースで存在感を高めた。しかし、同社のアプリのエコシステムはこの急成長のあとで停滞しつつある。

昨年には、同社のプラットフォームで2300の新しいアプリが誕生した。これは、それ以前の3年間に追加されたアプリの総数に匹敵する。しかし今年になってShopifyのアプリストアに追加されたアプリケーションは600にすぎない。サードパーティデータベースであるShopifyアプリストアインデックス(The Shopify App Store Index)によれば、これによりアプリの総数は約6600、開発者数は約5700となる。Shopifyは、アプリ開発パートナーが2020年に得た金額は2億3300万ドル(約261億円)で、2018年と2019年の合計額を超えるとしている。

Shopifyのスポークスパーソンは、米モダンリテールに書面で次のように述べている。「当社のエコシステムを成長させ、同時に開発者と小売業者の信頼を維持するのは、当社の業務の中心である。この理由から、当社はShopifyアプリストアの効果的なキュレーションやモデレーションを行うため、各種ソリューションの改良と探求を続けていく」。

アップロードの低迷を受け、Shopifyはこの夏に開催されたユナイト2021コンファレンス(Unite 2021 Conference)で、アプリの新しいビジネスモデルとテーマストアを公開した。一部の開発者と代理店の責任者のなかには、Shopifyがレベニューシェアの手数料を引き下げることで、より多くの人がShopifyのアプリを立ち上げるきっかけになると読み取る人もいる。

「Shopifyアプリの価値が20%増大した」

これはShopifyにとって賭けだったが、成功した。eコマース専門家によれば、この変更によりアプリストアの大半を占める新しい小規模な開発者のあいだでShopifyへの関心が一気に高まることになった。

Shopify、マジェント(Magento)、ビッグコマース(BigCommerce)などのeコマースプラットフォームに特化した代理店であるネタリコ・コマース(Netalico Commerce)の創設者でCTOでもあるマーク・ウィリアム・ルイス氏は次のように述べている。「この業界に新たに参入する業者にとって、顧客からの売上をすべて自社のものにできるというのは非常に大きな利点だ」。

ジョージア州アトランタに拠点を置くShopifyプラス(Shopify Plus)開発代理店であるザ・タップルーム(The Taproom)の創設者でCEOのケリー・ボーン氏は次のように述べている。「この最初の100万ドルを手中にするため、最初のShopifyアプリを構築することにただちに関心を抱く新しい開発者は数多く存在するだろう」。

Shopifyでアプリを構築するのが以前より簡単になったこともこの傾向を後押ししていると、ラシッド氏は述べている。「Shopifyには大量のドキュメント、オープンなAPI、開発者サポートツールがあり、優れたコミュニティも存在する」。

レベニューシェアモデルの変更は、Shopifyソフトウェア業界の両面に影響を及ぼした。開発者はShopifyアプリを作成する、より大きな財務的な動機を持つようになった。ラシッド氏は「これにより開発者は追加のキャッシュフローを得られ、そのキャッシュをさらにビジネスに再投資できるようになる」と述べている。一方で投資家は、Shopifyのプラットフォームで構築されたeコマースアプリを取得するため、多くの金額を支払うことが必要になった。

Shopifyアプリに投資家も注目

実際に、Shopifyアプリはより大きな買収対象となりつつある。VC、エンジェル、事業家などの投資家とスタートアップ企業とを結びつける市場であるマイクロアクワイア(MicroAcquire)のCEOであるアンドリュー・ガデッキー氏は、「Shopifyアプリの価値は20%増大した」と述べている。

また、氏は次のようにも述べている。「当社は、ShopifyのSaaSアプリが、過去12カ月の利益の5倍から6倍の価格で売られるのを見ている」。マスクアクワイアは現在、年間売上が4ケタから8ケタの企業が提供する50本のShopifyのSaaSアプリを売却用にリストしている。

ガデッキー氏によれば、投資家はShopifyアプリの管理が比較的が容易であることに魅力を感じている。氏は「バグの修正が簡単で、必要な分析がすぐ利用でき、売上に結び付く」と付け加えている。氏はさらに次のように述べている。「アプリで毎年120万ドル(約1億3400万円)を売り上げ、60万ドル(約6700万円)の利益を生み出せるなら、これは良いビジネスだ」。

スタートアップ企業は、未公開株購入者、ほかのスタートアップ企業、実績のある株式会社など、マイクロアクワイア社のあらゆる種類のユーザーに興味を持たれている。ガデッキー氏は次のように注釈している。「当社は多くのロールアップ、つまりある会社が複数の会社を取得して、すべての会社のものを合わせたひとつのポートフォリオを作成するのも目にしている」。

成熟していくビジネスのエコシステム

これらの傾向の一部は、Shopifyがアプリストアの収益化ポリシーを見直す前に始まった。パンデミック中のオンラインショッピングの急増は、すでにeコマースソフトウェア企業のVCゴールドラッシュを生み出している。ボーン氏によれば、投資機関はより小規模で、早いステージのShopifyスタートアップに目を付けるようになってきている。

もともとShopifyで構築されていたアプリは、今年の時点ですでに大きな投資ラウンドを固めている。メールおよびSMSマーケティングソフトウェアプラットフォームであるクラビヨ(Klaviyo)は、5月にシリーズDラウンドで3億2000万ドル(約358億円)を調達し、時価は91億5000万ドル(約1024億円)に達した。これに続いて、ループリターンズ(Loop Returns)のシリーズB財務ラウンドが6500万ドル(約73億円)で終結し、時価が3億4000万ドル(約380億円)に達したことが7月に発表された。このコロンバスのスタートアップ企業は、eコマース小売業者の返品プロセスの処理を支援する。8月には、顧客レビュー管理を支援するShopifyアプリを主な製品としているオケンド(Okendo)がインデックス・ベンチャーズ(Index Ventures)により主導されたシードラウンドで530万ドル(約5億9300万円)を調達した。

投資活動の増加は、さらに多くのライフスタイル開発者、すなわちアプリをフルタイムで実行している開発者に対して出口戦略を検討するよう促すことになった。ボーン氏は次のように述べている。「私の友人の多くは、Shopifyアプリを開始しただけで、数百万から数千万のエグジットを得ることになった」。

求められるアプリストアの環境整備

運用の観点から見れば、Shopifyアプリの最近の成長による副産物として、同社はモデレーションやキュレーションにより多く投資することを迫られるかもしれない。

米モダンリテールと対話したShopifyのパートナーや代理店の代表者は、クローンアプリや、大量の権限を要求して業者のデータを奪い取るよう設計された「うさんくさい」ソフトウェア、偽造のアプリのレビューを目にしてきたと語っている。アプリの一般的なカテゴリ、たとえばウイッシュリストや製品レビューを提供するものなどには過飽和のリスクがあるという意見もある。

これらの事実について質問を受けたShopifyのスポークスパーソンは、同社の利用条件とパートナープログラム契約を示し、開発者は顧客と業者のデータを保護するため特定の方式に従うことを義務付けられていると指摘した。このスポークスパーソンは書面で次のように述べている。「開発者が当社のアプリ標準を満たさず、問題点を解決するための行動を起こせなければ、当社のパートナーガバナンスチームはそのアプリをアプリストアのリストから削除し、場合によってはプラットフォームからも削除する」。

偽造レビューについての質問に対して、スポークスパーソンは次のように記している。「顧客に対して好意的なレビューを記載するよう圧力をかける、偽造のレビューを作成する、またはレビューを記載することに褒賞を与えるのは、当社の利用条件とパートナープログラム契約により明示的に禁止されている」。さらに、「レビューの違反を理由として削除されたアプリの数は明かせないが、当社は最近、品質の低い、または疑わしいアプリのレビューを防止および抑止し、アプリストアの環境をより信頼性の高いものにする、さらに自動化された方式のために出資している」と続けている。

最終的に、同社の戦略は適切に機能しているように思える。ラシッド氏は次のように述べている。「業者だけなく開発者も含め、より多くの人々がShopifyを使用してビジネスを構築するようになっていくだろう」。

さらに、氏は続けている。「Shopifyは、もはや単なるeコマースプラットフォームではない。その結果として指数的な成長を達成していくだろう」。

[原文:‘No longer a purely e-commerce platform’: After a major update, Shopify’s app store is becoming a big business ecosystem]

Saqib Shah(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

※記事公開後、一部表現を修正しております。