大手小売店や百貨店はホリデー期間を前に、オンライン購入・店舗で受け取る機能( BOPIS )、カーブサイドで受け取る機能をアップグレードしている。2019年から2021年はじめにかけ、カーブサイトでの受け取りを採用した小売業者は4%から58%に、BOPISの採用は66%から76%に増加した。
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大手小売店や百貨店はホリデーシーズンを前に、オンラインで購入して店舗で受け取る機能(BOPIS)、またはカーブサイドで受け取る機能のアップグレードを行っている。
フィットフォーコマース(FitForCommerce)が掲載したオムニチャネル・リテール・インデックスによれば、2019年から2021年はじめにかけて、カーブサイドでの受け取りを採用している小売業者は4%から58%に、BOPISの採用は66%から76%に増加した。即日受け取りサービスの需要は増え続けている。たとえばターゲット(Target)のCEOを務めるブライアン・コーネル氏は、同社の最新の第3四半期決算発表で、集配サービスによる売上高は、過去2年間で400%、すなわち20億ドル(約2280億円)も増加したと述べた。
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2020年、一部の州が屋内ショッピングを閉鎖するなか、小売業者は自社ビジネスの運営を維持するため、たとえ急ごしらえのものであってもカーブサイドピックアップのサービスを提供しようと一斉に動いた。2021年の今、ターゲットやコールズ(Kohl’s)などの小売業者は、過去18カ月間の受け取りサービスによる収益増大に動機づけされ、商品の代替やセルフピックアップなどの新しいサービスや機能を追加し、自社のサービスを競合他社のものと差別化することに重点を置いている。
BOPISを構築する小売業者
最近のプレスリリースによれば、コールズは過去数カ月にわたり店舗受け取りサービスへの投資を増やし続けている。そのなかには、特定の店舗にピックアップ用の駐車場を追加したり、ホリデーシーズンに合わせて臨時の店舗内ピックアップ場所を追加したりといった投資も含まれる。コールズはその裏で、店員がオンラインの注文により迅速に対応できるよう、店舗内のフルフィルメントと処理テクノロジーをアップグレードするとともに、「オムニパワーセンター」、すなわち全国に散在する300の店舗のミニフルフィルメント・ハブの在庫量も増やしてもいる。コールズは、これらの投資を何店舗で行っているかという質問には回答していない。
さらに、コールズはセルフピックアップを100カ所の拠点でテストしている。ここでは顧客がオンラインで購入した商品を受け取り、コードをスキャンして、販売員と対面することなく帰宅できる。
CEOのミシェル・ガス氏は、同社の先週の決算発表で次のように述べている。「当社は、オンラインとオフライン両方のチャネルが互いを補強していることに勇気づけられ続けている。店舗での売上は2ケタの成長を見せ、今も新しい顧客を獲得するための主要なチャネルだ。そして、オムニチャネルの顧客も大幅に増加しており、これらはもっとも生産的な顧客であるため、当社は大きな期待を寄せている」。
これまでのところ、この投資は実を結んでいるようだ。プレスリリースによれば、コールズの1週間におよぶブラックフライデーウィーク・セール(11月21〜26日)の期間中、顧客は同社のカーブサイドとBOPISのサービスで100万回をこえる注文を行った。残りのホリデーシーズンを通してチャネルのさらなる成長を促すため、コールズはオンラインで購入し店舗で受け取るオンライン注文に対して5ドル(約570円)の割引を行っている。
ターゲットも、最高店舗責任者のマーク・シンデール氏が最近のプレスリリースで「このホリデーシーズンにおいて、これらのオプションをさらに柔軟にする」と述べたように、即日対応機能を強化する予定だ。
ホリデーシーズンを前に、ターゲットは専用のカーブサイドスペースを1万8000カ所増やし、当日集荷・配達用の新しいアプリとサイトの機能に投資した。たとえば、ピックアップをする顧客は、指定された「ショッピングパートナー」を派遣して、注文した品を受け取りに行かせたり、発注のあとで商品を追加しても同時に受け取れたり、在庫切れに備えてバックアップの飲食品を指定することができる。
ほかの小売業者も、第4四半期の販売ラッシュの前に自社の受け取りオプションを強化する方法を模索している。たとえばウォルマート(Walmart)は国外における受け取りの拡大に注力している。同社は最近、米国の即日配送技術をほかの地域の店舗に統合し、カナダでの食料品ピックアップを全国の店舗に拡大した。
カーブサイドの競合の激化
パンデミックによりBOPISとカーブサイドピックアップが普及したことを目にして、ニールセンアイキュー(NielsenIQ)のシニアバイスプレジデントを務めるハービー・マー氏は、このサービスが「トレンド」から「ニューノーマル」に移行していくと考えている。
グローバルデータリテール(GlobalData Retail)のマネージングディレクターを務めるネイル・サンダース氏は、顧客は何よりも最初にBOPISやカーブサイドピックアップによって得られる「速さと効率性」に関心を寄せていると語っている。サンダース氏は次のように述べている。「オンラインで購入し、店舗内やカーブサイドで受け取るオムニチャネル・フルフィルメントは、今年28.6%成長する見通しだ。これはオンライン全体の成長を上回る。ホリデーシーズンが近づき、消費者が多忙になるにつれ、店舗でのフルフィルメントはますます重要になるだろう」。
これらの種類のフルフィルメントサービスが主流になるにつれ、小売業者は競合力を維持するために機能を追加しようと模索している。たとえばターゲットの食料品交換機能は、食料品店の競合他社であるインスタカート(Instacart)やウォルマートが現在提供している機能を反映したものだ。サンダース氏によると、小売業者が自社の受け取りサービスによく追加する機能は、在庫切れの商品の代替機能や、発注後に注文内容を変更できる機能だという。
「今では店舗でのフルフィルメントオプションを提供する小売業者が増えているため、これらの小売企業が競合力を維持するにはイテレーション(反復しながら開発を進める)を行うのが重要だ」とサンダース氏は述べている。
[原文:‘New normal’: Retailers like Target and Kohl’s are giving in-store pickup a facelift ]
Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Walmart