D2Cブランドはこのホリデーシーズンに、他社の商品を売りたがっている。
この数年間で、eコマースブランドは顧客獲得コストを削減し、互いのオーディエンスにクロスプロモーションを行うために、コラボレーションをはじめた。これらのコラボレーションには、商品のプレゼントキャンペーンから、共同ブランドの商品まで、あらゆるものを含むことができる。
しかし、ホリデーシーズンが近づくにつれ、自社ウェブサイトでキュレーションされた商品のマーケットプレイスを開こうとする新興企業が増えている。自社の商品だけでなく、ギフトに最適だと判断した他社ブランドの商品をオンラインで販売することで、AOV(平均注文金額)を増加させる機会を狙っているのだ。マーケットプレイスを持つ企業は、他社ブランドが保有している既存のオーディエンスとつながることで、ウェブサイトへの訪問者を増やすことができるという考えだ。率先して買い物をする一部の買い物客にとって、ホリデーシーズンはすでにはじまっており、これらの企業によると、初期の数字では、顧客がマーケットプレイスのセット商品に引き寄せられ、その結果、トラフィックとカートサイズが増加していることがわかるという。続きを読む
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
D2Cブランドはこのホリデーシーズンに、他社の商品を売りたがっている。
この数年間で、eコマースブランドは顧客獲得コストを削減し、互いのオーディエンスにクロスプロモーションを行うために、コラボレーションをはじめた。これらのコラボレーションには、商品のプレゼントキャンペーンから、共同ブランドの商品まで、あらゆるものを含むことができる。
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しかし、ホリデーシーズンが近づくにつれ、自社ウェブサイトでキュレーションされた商品のマーケットプレイスを開こうとする新興企業が増えている。自社の商品だけでなく、ギフトに最適だと判断した他社ブランドの商品をオンラインで販売することで、AOV(平均注文金額)を増加させる機会を狙っているのだ。マーケットプレイスを持つ企業は、他社ブランドが保有している既存のオーディエンスとつながることで、ウェブサイトへの訪問者を増やすことができるという考えだ。率先して買い物をする一部の買い物客にとって、ホリデーシーズンはすでにはじまっており、これらの企業によると、初期の数字では、顧客がマーケットプレイスのセット商品に引き寄せられ、その結果、トラフィックとカートサイズが増加していることがわかるという。
他社ブランドとのセット商品を提案
パズルを企画販売するピースワークパズルズ(Piecework Puzzles)は9月末、ほかのブランドから卸売原価で仕入れた150点の厳選された商品を集めたマーケットプレイスの運用を開始した。同社はより合理化されたフルフィルメントを提供し、顧客がさまざまなブランドの商品を購入したとしても、すべて同じピースワークの注文として受け取れるよう、商品を卸売ベースで仕入れることにした。選ばれた企業には、アクセサリーと装飾品のメーカーのシェファニー(Chefanie)やウェイドセラミックス(Wade Ceramics)などの独立系ブランドがある。
共同創業者のジーナ・ウルフ氏は、今年は自社ウェブサイトで、ほかのブランドからの商品を扱うギフトショップを試してみることにしたと、米モダンリテールに語った。同社の商品はギフト用に購入されることが多いため、年末はもっとも忙しい時期となる。
ウルフ氏と共同創業者のレイチェル・ホックハウザー氏は、過去に自分たちが購入したブランドからギフトを厳選し、価格帯が50ドル(約7500円)以下の商品を選ぼうとした。「一般的に、このタイプのギフトに払いたいと考える価格はこれくらいだ」と、ホックハウザー氏は述べる。
「我々自身が、自社のパズルを、ワインボトルやキャンドルなどのアイテムと組み合わせてギフトとして贈るのが好きだ」と、ウルフ氏は述べる。さらに、同ブランドのパズルの多くは、デザインにテーマがあり、セット商品に適している。「ギフトのラッピングやメッセージカードをカートに追加する人が多かった。それが、パズルの役割を拡大し、当社を『ギフトを買う場所』に変えるクリエイティブなきっかけとなった」と同氏は付け加えた。このマーケットプレイスによりD2CチャネルのAOVが増加し、全体的に収益の数字が増えることを期待していたという。「これは、収益性のためによいだけでなく、顧客向けの品揃えを拡充するためにもよいことだ」。
マーケットプレイスのローンチを支援するため、「ウェブサイトのデザインを一新し、パズルやテーマ別のギフト購入に対応するよう、マーケットプレイスの商品をコンテキスト化した」と、ホックハウザー氏は語る。たとえば、マーケットプレイスはジ・イタリー・エディット(The Italy Edit)やザ・ブランチ・エディット(The Brunch Edit)のようなセクションで構成されている。それぞれのリストでは、サードパーティーブランドの商品について、創業者のひとりがその商品をギフトショップに選んだ理由を説明している。例として、イタリアをテーマにしたセクションにはピースワークで人気があるラ・ドルス・ビタ(La Dolce Vita)パズル、スキャンドルズ(Scandles)のエアルームトマトキャンドル、ザ・パスタ・タロット(The Pasta Tarot)のタロットカードのデッキなどが載っている。
マーケットプレイスを開設して1カ月ほどが経過し、「AOVが劇的に増加し、ギフトの注文は100%も向上した」と同社は述べている。これらの注文には、ギフトカードやギフトラッピングとセットになったパズルなどの商品が含まれている。さらに、ギフトの数量も過去数年間のホリデーシーズンと並ぶものになった。
ホリデー戦略に大きく貢献
一方、赤ちゃんの睡眠や呼吸をトラッキングするスマートモニターブランド、ナニット(Nanit)は、今年の初めにローンチしたマルチブランドのマーケットプレイスに賭けている。ベビー用スキンケア企業のエラオラ(EllaOla)や、D2Cのおむつ新興企業のコテリー(Coterie)などは、ナニットのマーケットプレイスで人気のあるブランドの一部だ。
パイロットテストをはじめたことで、マーケットプレイスの売上は昨年に比べて108%も成長した。「しかし、売上がもっとも伸びるのはこれから、第4四半期だと思っている」と、ナニットのブランド担当バイスプレジデントを務めるクゥイン・ダン氏は述べ、サードパーティーブランドのマーケットプレイスはサイトに常設されることになったと認めた。
「マーケットプレイスはホリデー戦略の大きな部分を占め、実質的にはホリデーギフトのガイドとして、サードパーティーの商品を紹介し、当社が通常なら顧客に紹介できないようなギフトのサブカテゴリーを生み出している」とダン氏は述べる。これは、ナニットの品揃えが中核のテック商品やアクセサリーに限られているためだ。このマーケットプレイスは最初、ルーキーヒューマンズ(Rookie Humans)や、ミランアンドミラン(Milan & Milan)など少数の新興企業とともにテストされたが、現在ではディフューザーメーカーのビトルビー(Vitruvi)や、ステートバッグス(State bags)など16ブランドの商品を載せている。
「いくつかのクリエイターやパートナーに、我々のマーケットプレイスから選んでもらい、自身のセット商品を作る取り組みも行っている」と、同氏は述べる。それぞれのブランドパートナーとのあいだにはクロスプロモーションの活動もあり、シーズンを通して選択した商品を各ブランドのチャネル上で共有してもらっている。
ナニットのマーケットプレイスは1年が経過し、サイトの訪問者のあいだでも人気になってきた。「マーケットプレイスは新しい顧客をサイトに引き入れ続けており、トラフィックの80%は新規顧客のものだ」とダン氏は述べ、これらの顧客によるリピート訪問や購入も起きていると付け加えた。「ナニットの買い物客では、23%がリピート顧客であるのに対して、マーケットプレイスの買い物客の32%がリピート顧客だ」と、同氏は述べている。
互いの資産を活用する共同ブランディング
ある意味これらのマーケットプレイスは、D2C新興企業が卸売小売業者の戦略を、より精選された方法で模倣するものでもある。大手の小売業者にとっては、季節限定のマーケットプレイスを開設することで、新しいカテゴリーをテストしたり、大きな販売が見込める期間の売上をより増やすことができる。例として、ペトコ(Petco)は10月初頭にオンラインのホリデーショップの運用を開始した。ペットケアの小売業者である同社は今年、ハロウィーンショップも開設した。
同社によれば、このホリデーショップはアパレルやおもちゃ、おやつなど、500点以上のギフト用ペット商品を取り揃え、ほとんどの商品の価格は20ドル(約3000円)以下だ。このシーズンは、ペトコの自社ブランドの冬用商品に加え、ベアフットドリームズ(Barefoot Dreams)、ケイトスペード(Kate Spade)、ラムウルフコレクティブ(Lambwolf Collective)とのコラボレーションによる新しいコレクションも取り揃えている。
サンタクララ大学(Santa Clara University)のリービースクールオブビジネス(Leavey School of Business)でマーケティング実践の教授を務めるチャック・バイヤーズ氏は、共同ブランドのマーケットプレイスは、何十年も前から、さまざまな形式で存在していたと語る。
「マーケティングの世界では、このことを共同ブランディングと呼ぶ。消費者向けに新たなレベルのの体験を提供し、お互いのブランドの資産を活用することが本当の目的だ」と、同氏は述べている。
これらの投資が成功するかどうかは、どのような商品を取り揃えるか、そしてその時点で顧客が何を探し求めているかに大きく左右される。今日の厳しい経済状況において、オンラインで特売を探している顧客の注目を集めるのは困難かもしれないと、バイヤーズ氏は述べる。「ほかのブランドとのセット商品を販売できるなら、目立つことができるだろう」と、同氏は述べている。
[原文:More startups are launching multi-brand marketplaces to drive holiday sales]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu