RETAIL REVOLUTION

LINEミニアプリ で「効率化」する、日本の飲食企業たち:「ムゲン食堂」と「廚 菓子 くろぎ」の場合

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こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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オペレーション業務における機会損失の回避は、デジタルテクノロジーの得意とするところだ。しかし、費用対効果を鑑みると、これまでは大手企業でしか手に届かない領域だった。それを、中小の飲食企業であっても、気軽に導入できるようにしたのが、LINEミニアプリだ。

LINEミニアプリは、スマホアプリのようにダウンロードをする必要がなく、各種サービスへ気楽にアクセスできるプラットフォーム。飲食店においては、テーブルオーダーや混雑時の順番待ち受け付け、デジタル会員証といったサービスがあり、各企業のニーズに合わせて自由度高く導入できる。顧客がLINEミニアプリ利用時に、その店舗のLINE公式アカウントに友だち追加されるオプションがあるため、来店後も再来店促進のためのメッセージ送信などで顧客とのコミュニケーションを図れる点が好評だ。2020年11月のサービススタート時点での導入企業は131社だったが、2021年10月には850社以上に増えたという。

LINEが2021年11月18日に開催した「LINE LOCAL DAY」では、「順番待ちもテーブルオーダーもLINEで!LINEミニアプリで顧客とつながる、飲食店のDX」と題したセッションで、LINEミニアプリを活用する2社の飲食店が登壇。完全予約制の日本料理屋「くろぎ」を運営する株式会社KUROGIがプロデュースする和菓子カフェ「廚 菓子 くろぎ」の統括責任者である清藤亮佑氏、京都一の繁華街・河原町で中華酒場「ムゲン食堂」を運営する株式会社Glidge社長の谷村昌樹氏はそれぞれ、LINEミニアプリを通じた業務改善やLINE友だちの大幅な増加、また、LINE公式アカウントによる顧客とのコミュニケーション戦略などについて、実例を交えて話した。

順番待ちのシステム化でキャンセル率を大幅削減ーー廚 菓子 くろぎの場合

2020年11月にオープンした「廚 菓子 くろぎ」は、東京・芝大門にある完全予約制の日本料理屋「くろぎ」などを運営する株式会社KUROGIによる和菓子カフェだ。同店舗でLINEミニアプリの順番待ちシステムを導入したのは、夏になると人気のかき氷を求めて100人もの行列ができてしまうことがきっかけだった。紙による記帳を採用していた際は、顧客の案内や行列の整備をするスタッフが必要であったこと、人的ミスが起きてしまうこと、さらに、待ち時間が読めずにキャンセルしてしまう顧客が多かったことなどが課題だった。90組のうち30組がキャンセルする場合もあったという。

同システムは、顧客が店舗前に設置されたタブレットに人数を入力し、QRコード付きの整理券を発券。自身のスマートフォンでQRコードを読み取るとLINEミニアプリが起動し、待ち状況が確認できる。入店できる時間が近づくと、LINEを通じてリマインドを受け取れる仕組みだ。清藤氏は、「カフェのメインターゲットが20〜30代の女性なので、メールやショートメッセージよりも手軽で確実に、しかも無料で通知が送れるLINEは魅力的だった」と話した。

導入後は、キャンセル率が従来の30%から15.8%へと大幅に減少。行列整備に必要だった人手も約0.5人分減らすことができ、「期待以上の効果が見られている」という。

KUROGIの系列店の待ち組数を確認できるサービスも顧客やスタッフに好評だという。清藤氏は「店舗間の待ち組数に差があったが、このサービスが浸透することで平準化してきた。顧客はより空いてる店舗に出向く流れができ、スタッフも空いている店舗へとスムーズに案内できるようになった」と説明した。

顧客の「すみません」が不要にーームゲン食堂の場合

京都・河原町に2020年8月にオープンした中華酒場「ムゲン食堂」が導入したのは、LINEミニアプリのテーブルオーダーシステム。紙のメニュー表についているQRコードを顧客がスマホで読み取ると、メニュー画面が表示されそのままテーブルで注文ができる。「写真付きで見やすく、注文履歴が確認できるところも便利だ」と谷村氏。店舗側にとっても、「メニューの変更や情報更新もスムーズにできる」と評価する。

QRコードを読み取ったりスマホで注文してもらうことに不安もあったが、谷村氏は、「来店客からの拒否反応は思っていたより少なかった。年配の方も『今どきの方法だね』と楽しみながら注文してくれている」という。スタッフが顧客にQRコードを案内するオペレーションも、「学生が多いため私より習得が早く、顧客への説明も上手かった(笑)」。

モバイルオーダー導入後の1番の効果は、「顧客の『すみません』という言葉が不要になったということ」と谷村氏。「我々の店舗は2階層なので、特に口頭注文だと、顧客が『すみません』というタイミングを聞き逃さないようスタッフがスタンバイし、顧客が注文に迷っている時もテーブルで待つ必要があった。モバイルオーダーだと、顧客が都合のいいタイミングで注文でき、スタッフの待ち時間もない」。注文受付業務が大幅に効率化できたことから、配置スタッフ数も従来の6人から4〜5人に減らすことができた。

LINEミニアプリの第2の効果

LINEミニアプリを取り入れたことで、副次的な効果も生まれている。顧客がLINEミニアプリを開いたとき、LINE公式アカウントを友だち追加するオプションを表示することができるため、2社ともLINE友だちの獲得数が急速に伸びている。

清藤氏は、「カフェのオープン時に開設したLINE公式アカウントが好調だったので、順番待ちシステムはそのブーストになればと考えた」と話す。「顧客がQRコードを登録したタイミングでLINE公式アカウントに友だち追加してくれるため、顧客との接点が自然な流れで生まれている」。7月にLINEミニアプリを導入してからは、LINE友だちの月間平均獲得数が約3.65倍と飛躍的に伸長。LINE友だちは、公式アカウントを開設してから10カ月ほどで1万人超を達成した。

LINE公式アカウントを通じた来店促進で成果

2社は、LINE公式アカウントを活用した来店促進施策の効果についても触れた。「廚 菓子 くろぎ」のLINE公式アカウントではおもに新商品の案内を行っているが、現在は開封率が84.7%、クリック率が31.4%と高い効果が出ている。清藤氏は、「新商品の写真からInstagramに遷移できるのだが、アカウントを立ち上げてから(Instagramの)いいね!数やビュー数が格段に上がった。また、新商品の写真に「メニューの詳細はこちら」というテキストリンクをつけたところ、開封率は2倍に伸びた」と話す。

ショップカードも来店客の大半が利用しているといい、「現時点で8227人に累計7万スタンプ以上を付与した」と清藤氏。1000円で1ポイント・全20ポイントで1枚が完了するが、140人の顧客がすでに5枚目に突入しており、「ロイヤルカスタマーの増加を実感している」という。

ムゲン食堂では、メッセージ配信の開封率7割を目指し、より効果的なオーディエンス設計とメッセージ作成に気を配っているという。前回開封した人と新規登録した人を対象に、「定型文にならないよう、カジュアルな言葉や絵文字を使い、読む人のテンションが上がるようなメッセージを意識している」と谷村氏は話す。

ショップカードやクーポン配信なども運用しているが、いずれも順調に効果が見えているという。特にショップカードのポイント特典利用率は48.6%と高い数字が出ており、谷村氏は、「特典の有効期限前にLINEからリマインドを送る機能があるため、それが利用率の高さに繋がっている」という。また、クーポンの配信を行ったところ、多いときで配信対象者の21%のが来店したといい、「こうした機能は今後も上手く活用していきたい」と話した。

デジタル活用でより上質な顧客体験を

今後のLINE活用について、清藤氏は、「たとえば来店前の事前発券で、よりスムーズな入店を実現したい。キャンセル率が減ったとはいえ、待ち時間が長く来店できない人も多くいるので、特典を付与したりフォローアップのメッセージ配信もしていきたい」という。モバイルオーダーについては現在他社のものを採用しているが、「LINEのシステムを導入すれば、LINEの別サービスと連携し、顧客の来店頻度やメニューの志向といったデータを収集できるようになるだろう」と語った。

もともと同店舗でデジタルサービスを導入したのは、「効率化できるところをしっかりと効率化し、おもてなしをする余白をより多く生み出せるようにしたい」と考えたことがきっかけだった。清藤氏は、「それができれば、KUROGIの接客コンセプトである『一客一亭のもてなし』を「廚 菓子 くろぎ」のような大衆店舗でも実現できる」と期待を寄せた。

ムゲン食堂でも、「顧客にとってより便利な店舗体験や店舗運営をしていきたい」と谷村氏は話す。「LINEを通じて顧客と店舗が繋がることができたので、顧客との距離が縮まるような密なコミュニケーションをとっていきたい。たとえば過去の来店回数やサービスの利用状況に応じてメッセージの出し分けができるような来店促進機能も運用してみたい」。

さらに谷村氏は、テーブルでのモバイルオーダーの際に、顧客の来店頻度や購買履歴によって特典を変えられるような機能や、LINEがリリース予定だというQRコードを使わずにLINEミニアプリが立ち上がる機能など、より質の高い顧客体験ができるサービスがあれば、積極的に導入していきたいという意向を示した。

Written by 戸田美子
Image via LINE/KUROGI/Glidge