RETAIL REVOLUTION

ボディケアのサボン、 LINE公式アカウント でブランド革新:店頭での上質な購買体験を再現

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この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、小売業の変革の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]の記事です。

LINE公式アカウントでも、店頭での上質な購買体験を再現できる。イスラエル発のボディケアブランド、サボン(SABON)はそれを体現したブランドのひとつだ。

サボンといえば、イスラエルで取れた死海の塩のミネラルや植物オイルを豊富に含んだボディスクラブやバスソルト、シャワーオイルなどを主力とするボディケアブランド。実店舗の店内には、クラシカルな石造りのウォータースタンドが置かれ、プロダクトを実際に試すことができる。ウォータースタンドはいまやサボンの店舗のシンボルともいえ、同ブランドも、顧客が香りやテクスチャーを体感し、心地のいい時間を過ごすといった実店舗での体験を、接客や購買のフックとしてきた。

こうした店頭体験を重視してきたサボンが、デジタルマーケティングに本腰を入れはじめたのが2018年だ。当時、店舗には多くの顧客が足を運んでいたが、そのデータをしっかり収集できていなかったことに課題を感じたと、サボンジャパンでEC&デジタルマーケティングマネージャーを務める西裕美子氏は語る。「お客様のロイヤルティを高めるには、カスタマーデータを収集し、それに基づいた最適なアプローチが欠かせないと考えた」。

サボンはそれ以来、「世界感あふれぬくもりのある店頭体験」とともに、「デジタルの積極活用」をマーケティング戦略の軸とした。LINE公式アカウントを中心に、「顧客の高いロイヤルティを保ちながら、適切なアプローチを取ることで、サボンブランドを革新する」ことを目指しているという。

量と質を両立したファンづくり

西氏は、LINEが2021年8月24・25日に開催した「LINE BIZ DAY BREAKOUT BRAND & DIRECT」に登壇。「SABONが実践する、LINE公式アカウントを軸としたファンと売上拡大を推進するデジタルマーケティング」と題したセッションで、同ブランドのLINE公式アカウントの活用術について語った。本稿では、その内容をサマライズして、お届けする。

LINE公式アカウントの導入を決めた理由について、同氏は、「1つめは、オフラインとオンライン含めて顧客データを一元管理して扱えること。2つめは、お客様とデータに基づいた適切なコミュニケーションがとれること。適切なタイミングに1to1でお客様に寄り添うコミュニケーションを取ることができるのは、サボンの成長にも非常に重要なポイントだ」と説明。自社アプリの製作も検討したが、利用者が多いLINEであれば、顧客にもより気軽に利用してもらえそうだという点が決め手になった。

LINE公式アカウントを開設した2019年4月から2年超で、友だち登録者数は140万人(2021年8月時点)に達した。現在も月間5万人ペースで増えているというが(実際、セッションが行われた8月25日当日は146万人にまで増加していた)、その劇的な増加を支えているのが、店頭のビューティーアドバイザーの存在だ。LINEのターゲティング広告と併せ、今後のロイヤルカスタマーになるような、アクティブで良質な顧客の獲得に貢献している。それをわかりやすく示しているのが、サボンのアカウントに対するブロック率の低さ。明確な数値は明かさなかったが、コスメ業界におけるブロック率の平均値が60〜70%であるのに対し、西氏によると、「非常に低い」という。

本会員化にもLINEが寄与

サボンが、LINE公式アカウントを活用するのにあたり重視していることは4つ。1つめは、LINE友だちからサボン本会員(サボン・カスタマーメンバーシップへの登録)になってもらうこと。2つめは、顧客情報の一元管理。3つめは、顧客のステータスに合わせたコミュニケーション。そして4つめが、店頭またはオンラインストアへの誘導だ。この4つの施策を運用し、サボンが目指す「顧客に上質な購買体験を提供することで、サボンのファンを醸成し、ロイヤル化を実現する」には、1つめの本会員化は欠かせない。そのためサボンでも、本会員化をLINE公式アカウントを運用する上でのKPIに据えている。

仮会員(LINEでサボンを友だち追加した後、LINEアカウントとサボン会員のIDを連携させた状態)から本会員になるには、住所や誕生日といった詳細情報を入力しなければならない。顧客に手間や時間を取らせてしまう点で、アクションのハードルが高くなるが、これについても、ビューティーアドバイザーの接客の力が寄与している。西氏は、「誕生日ギフトの贈呈や、顧客とともにサステナブルな未来を目指す『ネイチャーマイレージクラブ』でのポイント付与など、本会員でなければ得られない特典やベネフィットがある。これを店頭のビューティーアドバイザー一人ひとりが丁寧に説明することで本会員化へ繋げている」という。さらに同氏は、「本会員になっていただくことで、顧客にはより上質なブランド体験や購買体験を提供できる。毎月開く店長会や、エリアマネージャーとの緻密なコミュニケーションを通し、ビューティーアドバイザーにもこうした理解や意識が浸透している」と明かした。

LINEのコンテンツ配信においても本会員登録のベネフィットを訴求しており、1回の配信で対象者の約半数が本会員に登録しているという。その結果、本会員数は友だち登録者数と同様のペースで増え、この半年で約2倍に増えるなど、店頭での地道なアクションと、LINEを通じたデジタル施策が功を奏している形だ。

欠かせないタッチポイント

LINE経由のEC売上は、サボンのEC売上全体の約30%を占める。西氏は、「サボンにとってLINEは、顧客との欠かせないタッチポイント」であるといい、それが数値的効果としてもあらわれているという。

たとえば、オンラインストアで買い物かごに商品が残っている場合のフォローアップとして、セグメント配信機能でかご落ちメールを送っているが、同氏は、「EC全体のコンバージョン平均の約15〜20倍という非常に高い効果を出すことができている」という。また、メッセージツールとしてeDMも活用しているが、eDMを経由した売り上げに比べ、LINEを経由した売り上げはその5倍。LINE活用の費用対効果については1000%という驚異的な効果が得られている。同氏は、「顧客に適切なタイミングでメッセージが届けることができ、LINE活用の効果を最大限に発揮できている」と見る。

さらに、LINEの公式アカウントに表示されるリッチメニューを経由したEC売上は、LINE経由のEC売上全体の半数を占めており、その視認性の高さにも注目している。コロナ禍において他ブランドと同様、オンライン集客への軸足転換が求められるなか、サボンは今年に入り、オンライン接客(1月)とバーチャルストア(4月)を導入した。それぞれリッチメニューから簡単にアクセスできるようにしたが、メッセージ配信をした日はオンライン接客経由のEC売上が、メッセージ配信をしなかった日の約300%に伸長している。また、バーチャルストアの売り上げも、ローンチ当初に比べて2倍で推移しているのだという。

LINEが擁するポテンシャル

LINEを活用したデジタル施策が成果を見せており、西氏は、「現状は非常に満足」しているというが、同時に、「サボンはこれからも飛躍するブランド。まだまだLINEを活用できる部分があり、今後もLINEとともに成長していきたい」とも話した。具体的には、サボンにとってポテンシャルの高い顧客のLINE友だち追加とサボンの本会員化、上質なブランド体験を促せるようなコンテンツ配信、そして、セグメント配信の強化の3点。今後の展望について、「LINEの会員は年齢層も幅広い。サボンのポテンシャルカスタマーになり得ていない方に対してもアプローチを広げていきたい」と語った。

Written by 戸田美子
Photo from SABON(TOP画像)、LINE(本文中)