Amazonのマーケットプレイスで商品を販売している一部のサードパーティーブランドは、このプラットフォームで運営することが経済的に困難になってきたと語る。この不採算性の大きな原因のひとつは返品だ。
自動車用アクセサリーやDIYの自動車用キットを販売しているある自動車用品ブランドの創設者は今年の夏、自分の会社がAmazonで利益を上げていないという結論に達したため、Amazonでの販売を取り止めたと、米モダンリテールに語った。その主な理由は返品率の高さだ。ときによっては、Amazonでの返品率がShopify(ショッピファイ)での約2倍に達することもあった。同氏はこれが、Amazonの買い物客はShopifyの買い物客に比べて、ブランドにそれほど親しみを抱いていないことが原因だとしている。
このブランドの経緯は、多くのブランドがAmazonで直面し始めている、ますます深刻になりつつある苦境を表すものだ。長年にわたって、Amazonの親切な返品ポリシーは、顧客にとっては、迅速な配送とともに最大のセールスポイントのひとつだった。通常、Amazonで購入した商品は、配達日から30日以内であれば返品することができる。売り手は返品の性質によっては、返品を受け付けないことも、返金を行うこともできる。しかし、返品を処理するためのコストの高さが、あらゆるeコマースビジネスにとって足かせとなっている状況において、一部のブランドはAmazonで事業を行うコストは採算が合わなくなってきたことに気づきはじめている。
2023年5月に、この創設者はAmazonでの事業の廃止を決定する前に、「徹夜で数字を計算していた」と語る。「最初の数字を計算したとき、その結果の悪さに唖然とした」と、同氏は米モダンリテールのインタビューで語った。
2019年に創設されたこのブランドは、主にShopifyストアでのオンライン販売によって年間約400万ドル(約6億円)の収益をあげていた。また、ほとんどは米国外への国際的な販売だが、ごく小規模な卸売ビジネスも行っており、売上の10%未満に相当していた。Amazonは、ピーク時にブランドの売上の15%前後を占めていた。
「大きな売上収益をあげていた。しかし、利益はほとんどなかった。実際のところ、最終的には損失を出していた」と、同氏は述べている。
米モダンリテールの最新の告白(Confessions)シリーズでは、匿名を条件に率直な話をしてもらっている。このAmazon出品者は、Amazonでの販売を止める決定に至った道のりを詳しく説明してくれた。Amazonの広報担当者は、米モダンリテールへのメールでの回答に、「自動車用品は、Amazonストアの独立系出品者にとって、急速に成長している大きなカテゴリーだ。多くの出品者が堅調な成長と持続的な成功を達成している。当社は販売パートナーとともに、返品を減らすための取り組みとして、商品の正確な説明、画像、そのほかの情報により、顧客が十分な情報に基づいて購入の決定を行えるようにしていく」と記している。
以下の対談内容は、簡略化と明確化のため編集を加えている。続きを読む
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
Amazonのマーケットプレイスで商品を販売している一部のサードパーティーブランドは、このプラットフォームで運営することが経済的に困難になってきたと語る。この不採算性の大きな原因のひとつは返品だ。
自動車用アクセサリーやDIYの自動車用キットを販売しているある自動車用品ブランドの創設者は今年の夏、自分の会社がAmazonで利益を上げていないという結論に達したため、Amazonでの販売を取り止めたと、米モダンリテールに語った。その主な理由は返品率の高さだ。ときによっては、Amazonでの返品率がShopify(ショッピファイ)での約2倍に達することもあった。同氏はこれが、Amazonの買い物客はShopifyの買い物客に比べて、ブランドにそれほど親しみを抱いていないことが原因だとしている。
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このブランドの経緯は、多くのブランドがAmazonで直面し始めている、ますます深刻になりつつある苦境を表すものだ。長年にわたって、Amazonの親切な返品ポリシーは、顧客にとっては、迅速な配送とともに最大のセールスポイントのひとつだった。通常、Amazonで購入した商品は、配達日から30日以内であれば返品することができる。売り手は返品の性質によっては、返品を受け付けないことも、返金を行うこともできる。しかし、返品を処理するためのコストの高さが、あらゆるeコマースビジネスにとって足かせとなっている状況において、一部のブランドはAmazonで事業を行うコストは採算が合わなくなってきたことに気づきはじめている。
2023年5月に、この創設者はAmazonでの事業の廃止を決定する前に、「徹夜で数字を計算していた」と語る。「最初の数字を計算したとき、その結果の悪さに唖然とした」と、同氏は米モダンリテールのインタビューで語った。
2019年に創設されたこのブランドは、主にShopifyストアでのオンライン販売によって年間約400万ドル(約6億円)の収益をあげていた。また、ほとんどは米国外への国際的な販売だが、ごく小規模な卸売ビジネスも行っており、売上の10%未満に相当していた。Amazonは、ピーク時にブランドの売上の15%前後を占めていた。
「大きな売上収益をあげていた。しかし、利益はほとんどなかった。実際のところ、最終的には損失を出していた」と、同氏は述べている。
米モダンリテールの最新の告白(Confessions)シリーズでは、匿名を条件に率直な話をしてもらっている。このAmazon出品者は、Amazonでの販売を止める決定に至った道のりを詳しく説明してくれた。Amazonの広報担当者は、米モダンリテールへのメールでの回答に、「自動車用品は、Amazonストアの独立系出品者にとって、急速に成長している大きなカテゴリーだ。多くの出品者が堅調な成長と持続的な成功を達成している。当社は販売パートナーとともに、返品を減らすための取り組みとして、商品の正確な説明、画像、そのほかの情報により、顧客が十分な情報に基づいて購入の決定を行えるようにしていく」と記している。
以下の対談内容は、簡略化と明確化のため編集を加えている。
2020年にAmazonのマーケットプレイスで販売を開始してから、事業はどのような調子だったか?
厳しい状況だった。最初のうちは、これが必要な戦略だと考えていた。eコマースブランドならAmazonで販売しなければならないという認識があったからだ。みんな不可欠だといっている。しかし、Amazonでの販売がどれだけ利益にならないかは知らないんだ。したがって、Amazonは必要だが、多くの点についてAmazonに文句をいうことはできない。Amazonはいつでも変化を加えることができる。Amazonのプラットフォームが悪いわけではないが、eコマースやD2Cブランドが本当に成功するのが難しいようにできていると思う。
最初の1年間には数十万ドルの収益をあげたと思うが、大きな利益はあげられていなかった。Amazonのラインを構築している段階だったため、すぐに収益があがらなくても問題なかった。
Amazonが徴収していた割合は問題ではなかった。Amazonの配送価格は、正直なところ高すぎたわけではなかったからだ。UPSの料率は非常に高く、同社の配送は非現実的だ。一方で、本当に困ったのは返品の問題だ。
返品が問題になる理由は何か?
返品の割合が問題にされることが多いが、返品された品物がどうなるかについては語られない。返品の割合は平均で5%から15%まで変動し、業界によって異なる。Shopifyを使用している当社のD2Cサイトよりも、Amazonのほうがはるかに返品率が高い。少なくとも2倍だ。週によってはAmazonでの返品率が30%くらいに達したこともあり、これは異常な高さだ。
しかし、もっと厄介なのは、顧客から返品された商品が多くの場合、再販売できないことだ。Amazonでは、返品された商品のうちかなりの量が、まったく再販売不可能なものだ。たとえば、顧客が使わなかったものを全部詰め込んで返送してくることがある。それを見ると、どれも使い物にならないためゴミとして捨てるしかない。そうなると、COGS(売上原価)、配送料、労働費用がすべて損失になってしまう。これらのコストはすべて我々の負担になる。あとからきちんと計算すると、これほど働いてこれだけしか稼げないのでは割に合わなかった。
Amazonの顧客の水準と質は、通常のeコマースブランドから購入する顧客とは少し異なる。通常のeコマースブランドでの購入顧客の方が、ブランドにもっと関心を持っている。これに対して、Amazonではブランドと顧客との関係はないに等しい。購入の決定がほとんど価格によって決定されるような関係は極めて冷淡なものだと思う。今でも、Amazonで買い物をする人は、おそらくAmazonをよく利用していると思う。しかし、そのプラットフォームで何を購入したかを忘れてしまうことが多い。
Amazonで販売するときにほかの課題に直面したか?
当社にはベンチャーキャピタルがない。また、完全なブートストラップ企業だ。親企業やプライベートエクイティのところに行って、Amazonでの販売で資金が尽きたとか、新たに1000万ドル(約15億円)を調達したとか、そういう話をする必要はない。
そのため、利益を上げていない場合は、人々を雇用したり、継続的に雇用したりする能力に影響を与える事になる。したがって、事業は打ち切る必要があった。これについてはGM(ジェネラルマネージャー)と十分に話し合った。私は「このような数字が得られたが、確認できるか?」とGMに話し、それをGMは確認した上で、数字は正しいと答えた。そこで私は、「この事業はもうたくさんだ、打ち切ろう」と思った。そしてすべて引き上げた。在庫をすべて引き上げ、できるだけ多くを投げ売りした。まだAmazonにプレゼンスはあると思うが、現在ではほとんどないも同じだ。
Amazonでの販売を再検討する可能性はあるか?
Amazonで販売を行うことには、いくつかの利点がある。私はAmazonを、有機的な検索エンジンと考えている。ある種、Googleと同じようなものだ。自社商品をAmazonで販売していれば、多くのバックリンクが張られ、SEO(検索エンジン最適化)の観点から見れば、これらのバックリンクは非常に強力だ。Amazonで販売を行うことにより、自社のウェブサイトへのトラフィックも増えるということになる。
そのため、優れた戦略があるなら、Amazonでの販売には十分な利益があると思う。私はAmazonに戻るだろうが、戦略は丸ごと変える予定だ。それほど返品されないことがわかっている、別のタイプの商品を発売するかもしれない。そして、トラフィックが自社のウェブサイトに向かうようなページを作る。Amazonに戻るなら、大きく異なった戦略をとる必要があるだろう。
Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)