セレナ・アドバニ氏は、「ゼロウェイスト(廃棄物ゼロ)」のスキンケアブランドを立ち上げようとしたとき、簡単にリサイクルできるパッケージを作らなければならないことはわかっていた。使い捨てのプラスチックは、たとえ軽量で安価であっても、選択肢に入らなかった。ガラスは色がついていたり、商品の痕跡が残っていたりすると、リサイクルされないことがある。アルミニウムはリサイクルに適しているが、美容品の消費者のうち、空になった商品を実際にリサイクルしているのは5人に1人もいないことが判明した。
「リサイクル施設において、汚染がもっとも少ない材料は紙だ」と同氏は述べる。「そして、紙をラグジュアリーと感じられるようにし、商品を実際に保持できるなら、その方法を採用したいと思った」。
何回かの試行錯誤を繰り返したのち、アドバニ氏はシードロップ(Seadrop)という洗顔料を思いついた。シードロップは最初、粉砕可能な小さなビーズ状になったパウダーで、水と混ぜるとフォーム状の洗顔料に変化する。初回購入時には、最大60粒のビーズが入る詰め替え用ガラス瓶が付属する。ビーズは、大豆由来のインクでラベリングされたリサイクル可能な紙のカップに入っている。買い物客は、数カ月ごとに詰め替えを注文し、ガラス瓶に補充する仕組みだ。
「ゼロウェイスト」を模索する起業家たち
「ゼロウェイスト」に貢献する商品とパッケージを作り出す新しい方法を模索している起業家は増え続けており、アドバニ氏もそのひとりだ。ゼロウェイストという用語には、生産中に廃棄物を生み出さないという意味から、完全にリサイクル可能な商品まで、いくつかの意味があるが、シードロップのようなブランドにとっては、よりクリーンな新商品を売り込むためのキャッチーな方法となっている。今年前半に行われたマッキンゼー(McKinsey)とニールセンIQ(NielsenIQ)による調査では、2018年から2019年にかけて、ESG(環境、社会、ガバナンス)に関することをうたう商品のCAGR(年平均成長率)が6.4%で、そのようなことをうたわない商品の4.7%を超えている。続きを読む
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
セレナ・アドバニ氏は、「ゼロウェイスト(廃棄物ゼロ)」のスキンケアブランドを立ち上げようとしたとき、簡単にリサイクルできるパッケージを作らなければならないことはわかっていた。使い捨てのプラスチックは、たとえ軽量で安価であっても、選択肢に入らなかった。ガラスは色がついていたり、商品の痕跡が残っていたりすると、リサイクルされないことがある。アルミニウムはリサイクルに適しているが、美容品の消費者のうち、空になった商品を実際にリサイクルしているのは5人に1人もいないことが判明した。
「リサイクル施設において、汚染がもっとも少ない材料は紙だ」と同氏は述べる。「そして、紙をラグジュアリーと感じられるようにし、商品を実際に保持できるなら、その方法を採用したいと思った」。
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何回かの試行錯誤を繰り返したのち、アドバニ氏はシードロップ(Seadrop)という洗顔料を思いついた。シードロップは最初、粉砕可能な小さなビーズ状になったパウダーで、水と混ぜるとフォーム状の洗顔料に変化する。初回購入時には、最大60粒のビーズが入る詰め替え用ガラス瓶が付属する。ビーズは、大豆由来のインクでラベリングされたリサイクル可能な紙のカップに入っている。買い物客は、数カ月ごとに詰め替えを注文し、ガラス瓶に補充する仕組みだ。
「ゼロウェイスト」を模索する起業家たち
「ゼロウェイスト」に貢献する商品とパッケージを作り出す新しい方法を模索している起業家は増え続けており、アドバニ氏もそのひとりだ。ゼロウェイストという用語には、生産中に廃棄物を生み出さないという意味から、完全にリサイクル可能な商品まで、いくつかの意味があるが、シードロップのようなブランドにとっては、よりクリーンな新商品を売り込むためのキャッチーな方法となっている。今年前半に行われたマッキンゼー(McKinsey)とニールセンIQ(NielsenIQ)による調査では、2018年から2019年にかけて、ESG(環境、社会、ガバナンス)に関することをうたう商品のCAGR(年平均成長率)が6.4%で、そのようなことをうたわない商品の4.7%を超えている。
しかし、「ゼロウェイスト」のような絶対的な主張を裏付けるには、プロセスに新しいサプライチェーンを構築する必要がある。
パウダーの洗顔料は、市場でシードロップがはじめてではない。詰め替え式の洗浄剤ブランドであるブルーランド(Blueland)は昨年、スキンケア商品に参入した。パウダーのタブレットを再利用可能なボトルに入れ、水を輸送する環境コストを省くというモデルだ。一方で、クリニーク(Clinique)には、使い捨てのパケットで販売しているパウダーベースのビタミンC洗顔料があるが、この発売は、活性化された新鮮な原料を摂取する方法として販売されており、詰め替えする部分はない。
新興企業として、アドバニ氏は高級から安価まで、方針が異なるさまざまなパッケージング企業を探す必要があった。これには、マイクロプラスチックを使わない化粧品製造会社や、ビーズを保存するためのリサイクル可能な乾燥剤まで、さまざまなものがあった。
「FSC(森林管理協議会)認定を受けた紙で作られた、生分解性の乾燥剤を探さなければならなかった。これは、どのようなスキンケア、美容品、薬剤の製造施設でも、なかなか手に入らないものだった。そのため、我々とともに創意工夫してくれるサプライヤーを探した。また、『プラスチックのパッケージに入ったシリカしかない』などと考えるのではなく、独自の調査を行う必要があった。それ以外の解決策もあるはずだからだ」と、アドバニ氏は述べている。
「ゼロウェイスト」を主導する新興企業やD2Cブランド
そして、「ゼロウェイスト」はコストの上昇も意味していた。紙のカップのコストは未使用プラスチックの3倍にのぼる。
「これらの問題について、純粋にビジネスの観点から考えるなら、もっとも安価なものを選ぶべきだろう。しかし、それでは自社商品が世界に及ぼす負の影響を無視することになり、まったく理解できない」と、アドバニ氏は述べる。
使い捨てプラスチックの廃止をめざし、再利用可能な商品を推奨する非営利団体アップストリーム(Upstream)のCEOを務めるクリスタル・ドライスバッハ氏は、この分野で革新的な活動を行うのは、多くの場合、物事をゼロからはじめることができる新興企業やD2Cブランドだと語る。同氏は例として、20年ほど前に最初のBPA(ビスフェノールA)フリーの再利用可能なステンレススチールの水筒を発売したクリーンカンティーン(Klean Kanteen)を挙げている。今日では、このような商品がAmazonやウォルマート(Walmart)のような大手小売業者で普通に販売されている。
「大手ブランドは対応が遅れている。この分野で成功しているのは、先駆者となったブランドであり、今後も消費者向けパッケージ商品の再利用を拡大するため尽力するだろう」と、同氏は述べている。
しかし、商品によって生成される廃棄物の量に大きな変化を与えるには、そのような変化を大規模にもたらせる大手企業や小売業者の参加が必要だと、ドライスバッハ氏は述べる。
「よく見かけるのは、再利用への切り替えは、消費者からの需要によって決定する必要がある、という誤認識だ。ブランドが主導し、供給する必要がある。それが解決への一番の近道だ」と同氏は述べている。
変化するテクノロジーへの対応
小規模産業においても、サプライヤーや製造業者、デザイナーが、ゼロウェイストのパッケージ、プラスチックを使用しない商品、過剰在庫の排除を達成する方法を考え出している。たとえばポートランドを拠点とする企業ヒロス(Hilos)は、3Dプリント技術を使用してフットウェアを製造している。また、米のミシガンやカリフォルニア、ドイツ、メキシコに生産パートナーがあり、消費者にできる限り近い、オーダーメイドで完全にリサイクル可能なフットウェアを生産している。
ヒロスは今年前半に500万ドル(約7億5000万円)を調達し、その技術を利用して、各ブランドに対してゼロウェイストの実践に向けた「助走路」を提供しようとしていると、共同創設者でCEOを務めるイライアス・シュタール氏は語る。初のブランドコラボレーションは、2021年後半に開始した男性向けフットウェア企業のヘルム(Helm)とのものだった。それ以来、いくつかのD2Cの女性向けスタイルも発売し、今冬の発表に向けていくつかのパートナーシップが進行中だ。
「新しいブランドならば、この変化をリードし、利用可能なもののアーリーアダプターになることができる。しかし、変化するテクノロジーを自社のビジネスモデルにどれだけ真剣に組み入れるのかは、それぞれのブランドが決めることができると思う」と、シュタール氏は述べている。
[原文:How ‘zero-waste’ brands like Seadrop cut new production pathways]
Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Seadrop