小売業者はここ数カ月、有能な人材確保に奔走している。採用プロセス全体を見直す企業も出てきた。化粧品小売業者の ザボディショップ (The Body Shop)は2019年9月、ノースカロライナ州の配送センターで試験的に先着順の新しい公開採用プロセスを試した。このとき同社は208人の季節従業員を雇用できた。
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ここ数カ月、小売業者は、有能な人材確保に奔走している。そのなかで、採用プロセス全体を見直す企業も出てきた。
ある企業では、応募プロセスをより多くの人に開放するという、非常にシンプルな方法で採用活動を行っている。化粧品小売業者のザボディショップ(The Body Shop)は2019年9月、ノースカロライナ州の配送センターで試験的に、先着順の新しい公開採用プロセスを試すことにした。このとき同社は208人の季節従業員を雇用することができた。2020年末までに同社は、米国とカナダの店舗でエントリーレベルの季節雇用を行うため、2回目のテストを実施した。今年の秋には、今後のエントリーレベルの小売店と配送センターの採用全体で、このプログラムを公式に採用した。
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候補者に尋ねるたった3つの質問
労働力の不足から、各小売業者はこのホリデーシーズンに十分な季節従業員を探すために苦労している。ウォルマート(Walmart)や、ターゲット(Target)、コストコ(Costco)は2021年に時給制の最低賃金を増額したり、短期的なボーナスを支給したりするなどして対応している。しかし、ザボディショップなどの小売業者は、採用プロセスを簡素化することで、より多くの応募者を獲得できることに気づいた。
新しい採用プロセスの一環として、同社は身元調査、薬物検査、過去の経験の有無の確認を中止した。また、試験的に、正式な面接を廃止し、履歴書や学歴の確認も行わないことにした。これにより、ホームレスや前科のある人など、採用プロセスで敬遠されがちな多くの人々が職に就ける可能性が増したと、ザボディショップの人事ディレクターのジェニファー・ウェール氏は語る。「当社が候補者に質問するのは、『労働資格があるか?』、『50ポンド(約22.7kg)を持ち上げられるか?』、そして、『8時間立ち続けられるか?』の3つだけだ」。
ウェール氏は、採用プロセスの改革する考えは2018年、同社がBコーポレーションになる準備を行っていたときにはじまったと語る。「当社自身が設置した障壁が、店舗や配送センターに適切な労働者を見つけることを妨害していた」と同氏は述べる。同社は北米にある86店舗と、その配送センターで、2500人を超える店員と倉庫労働者を雇用している。
「タレントプールが大きくなったことで、当社はこれまで、たとえば仕分けや荷積みの技能を持つ、英語を話せない移民などの人々を雇用していなかったということに気づいた」とウェール氏は述べる。2019年にノースカロライナのウェイクフォレスト(Wake Forest)配送センターではじめてオープンな採用を実施して以来、733人の季節従業員を採用してきたという。これらの季節雇用のうち80人は正社員に転換された。そのうち15人は配送センター、65人は店舗で勤務している。
候補者を限定しない
このオープンな採用方法は、コロナウイルスの発生より前にテストされたもので、パンデミックの禍中でも雇用を継続するため役立ったと、ウェール氏は語る。「レストランやホスピタリティなど、パンデミックの影響を激しく受けた業界から転業した多数の労働者を受け入れた」と同氏は述べている。
ウェール氏は、このプログラムが従業員の口コミや、同社の人材派遣会社にも支えられてきたと語っている。「そのため、誰かが当社を去ったときでも、当社のパイプラインには職務を希望する応募者が存在する」と同氏は述べている。
小売企業と協力している採用コンサルティング企業のモダンハイアー(Modern Hire)の最高科学責任者を務めるマイク・ヒューディ氏は、オープン採用は、多くの小売企業で依然として使用されている時代遅れの障壁を打破する助けになると語る。
「候補者を評価するときは、候補者を限定しないよう、職務に関連する能力のみを調べるようにすべきだ」と同氏は説明する。そうすることで、企業が過去数十年間にわたって固執してきた、学歴の要件や身元調査などの制度的な慣習を廃止することができるという。
ホリデー商戦でも人材を十分確保
さらに、労働者の不足が続いていることで、「これまで使われてきた採用手順の構造的な欠陥」が浮き彫りになっているとヒューディ氏は語る。たとえば、履歴書や身元調査は多くの場合、雇用主にとって時間とリソースの無駄でしかない。また、これらの資料は、応募者の潜在的な顧客サービスやフルフィルメントのスキルが反映されているとは限らないとも同氏は語っている。小売業の労働者の離職は記録的な数値に達しており、今年の6月には60万人の従業員がこの分野から離職した。候補者プールを広げることが、これまでになく重要となってきている。
小売業者がホリデーシーズンの販売増加に対応するため季節従業員の採用に走るなか、ザボディショップは十分な人材を確保しているとウェール氏は語る。たとえば米国の店舗において、ブラックフライデーとサイバーマンデーにおける大量の販売に対応できるだけの作業員を採用できたと、同氏は語っている。
「当社は2020年から、オープンな採用によって役職の欠員を100%埋めることができている」と同氏は述べている。
[原文:How The Body Shop’s open hiring program helped fill seasonal positions]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via The Body Shop