ソーシャルコマースは発展途上ではあるがその重要性は増大しつつある。Facebook、Google、Snap、Twitterの各社はAppleの基本的なプライバシー変更に対応するにあたり、より多くのファーストパーティデータを集積し、最大の広告主である小売業者からの売上を増やす方法としてeコマースに移行しつつある。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、小売業の変革の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
ソーシャルコマースはいまだ発展途上ではあるが、その重要性は増大しつつある。
これは業界のリーダーであるFacebook、Google、スナップ(Snap)、Twitterから、最新の決算発表で公表された所感だ。各社はAppleの基本的なプライバシー変更に対応するにあたって、より多くのファーストパーティデータを集積し、最大の広告主である小売業者からの売上を増やす方法として、eコマースに移行しつつある。
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10月25日に開催されたFacebookの第3四半期決算発表で、COOのシェリル・サンドバーグ氏は「当社はほかのモバイルショッピングおよびウェブショッピング環境に追いつきつつある」と認めている。
ソーシャルメディア各社が自社のコンテンツクリエイターやそのコミュニティを活用してAmazonやeBayからシェアを奪えるかどうかは、各社が今後数カ月から数年に展開されるeコマースツールによって決まるだろう。これらのツールの一部は各社の決算発表において詳しく説明されている。そのなかには、Facebookがライブストリームショッピング(そして、将来の「メタバース」)に注力していることや、Googleがオムニチャネルショッピング機能への注力を強化していることなどが含まれており、各社の取り組みには差がある。
- Facebookのデジタルストアは「ショップ」と呼ばれ、近日中に、限定ギフトの販売や送料無料サービスを提供するようになる。Facebookはeコマース商品の拡大に伴い、さらに多くの機能を導入することを計画している。3月の時点で、Facebookとインスタグラム全体で100万のショップがあり、毎月2億5000万人のユーザーがショップを訪問している。
- Facebookは、経済が再開していくとともにeコマースの需要が減少していき、同時にサプライチェーンと労働力の問題から在庫不足も発生するだろうと警告している。COOのシェリル・サンドバーグ氏は、この困難な取引の環境から、業界では「消費者からの需要を生み出す」意欲が減退し、結果的に広告への出資に悪影響を及ぼしていると述べている。
- Facebookの小売業者は、11月中、毎日ライブストリームのショッピングイベントを開催する。この1カ月にわたるライブ動画のショーケースには、ウォルマート(Walmart)やメイシーズ(Macy’s)から、美容商品ブランドのベネフィットコスメティックス(Benefit Cosmetics)やペイントボックスネイルズ(Paintbox Nails)まで、さまざまな企業が参加する。
- Facebookは「メタバース」、つまり仮想空間における相互に接続された体験で構成される将来のインターネットにより、数千億ドル規模のデジタル商品の市場が確立されることを予測している。同社の仮想現実や拡張現実への投資により、2021年の営業利益は100億ドル(約1兆1400億円)減少し、今後同社が「新しいコンピューティングプラットフォーム」の構築を続けるなかで、今後数年間にさらに減少することが見込まれている。
- Googleは、地域の店舗の営業時間を検索する人々の数が4倍に増加したことを受けて、オムニチャネルの広告ツールに投資している。その結果、広告ビジネスにもっとも貢献している小売業者は、検索広告に店舗内販売やサービス情報(カーサイドピックアップや非接触型配送など)を追加することが多くなっている。オムニチャネル広告の採用は過去1年間に2倍近くに増大したと、Googleは述べている。
- Googleの最近のオムニチャネル機能には、現在どの商品の在庫があるか、いつ受け取り可能かを示すローカル在庫広告、検索とショッピング全体での送料無料や簡単な返品についての注記、拡張現実での試着、画像認識ツールのGoogleレンズ(Google Lens)で購入可能な画像が含まれている。また、240億の商品リストを含むショッピンググラフを活用した、検索における新しいビジュアルブラウジング体験が導入されている。
- ウェブの巨大企業である同社は、YouTubeでのショッピングを可能にする作業が依然として「初期段階」だと語っている。同社は短期的には、ウォルマート、サムスン(Samsung)、セフォラ(Sephora)などのブランドとともに10月に開催した1週間の試験的イベントのような、ライブストリームのeコマースイベントをさらに開催することを予定している。
- Googleは、ID検証機能に特化して、デジタル決済の円滑に取り組んでいる。同社のデジタルウォレット、Google Payは世界40カ国で1億5000万人に使用されている。アメリカでは加盟店と提携し、Google Pay内で決済カードと連動したクーポンやキャンペーンを展開している。またインドでは、GoogleのAndroidが主要なモバイルOSであることから、セツ(Setu)というフィンテック企業と協力し、Google Payから直接定期預金口座を開設できるようにしている。
スナップ
- Snapchatは同社のブランド化された拡張現実ショッピングレンズに賭けている。これには従来、ラルフローレン(Ralph Lauren)や、マックコスメティックス(MAC Cosmetics)、ジョーダンブランド(Jordan Brand)、アメリカンイーグル(American Eagle)のバーチャル試着が含まれていた。スナップ(Snap)は、あらゆる規模の企業が自社のレンズとストーリーを操作できる公開プロフィールに「投資をはじめている」と述べている。
- スナップは7月、より多くの企業を取り込むため、ブランドによる3D ARグッズの開発を支援するバータブレイ(Vertebrae)を買収したことを発表した。バータブレイのチームは、スナップがデジタルアパレルやアセットの作成をサービスとして提供できるようにするためのバックエンドプラットフォームを作成していると、スナップは決算発表時に説明している。目標は「各ブランドがSnapchatでARショッピング環境を簡単に行えるようにすること」である。
- ブランドコンテンツを重視する施策の一環として、スナップは9月、広告大手のWPPとの提携を発表した。これによりWPPは、ARの使用法やクリエイティブ制作の教育クラス、トレンドに関するデータ測定ツールなど、同社のテクノロジーを利用できるようになる。
- スナップが新たに設立したARスタジオ「アルカディア(Arcadia)」は、各ブランドや代理店のパートナー向けに新しいAR環境を提供する作業に取り組んでいる。このコンテンツは「プラットフォームに依存しない」もので、ウェブやモバイルアプリからもアクセスできる。
- Facebookやスナップに続き、Twitterは10月初めにビジネスプロフィールを導入した。これには「ショップ」が含まれ、開店時間などの情報が記載され、ウェブサイトへのリンクも含まれている。同社が7月に12のブランドと共同でショッピングカルーセルを試験運用し、ユーザーがプラットフォームを離れることなく、これらのプロフィールから商品を購入できるようにした。Twitterは、この機能により第3四半期のクリック率は前年比で20%改善されたと述べている。
- Twitterのコマースへの取り組みは現在、小規模ビジネスに集中している。大規模な小売業者は、自社の在庫が従来型システムと結び付いていることから、新しいショッピングプラットフォームを採用するのに時間がかかるのが一般的だと、同社は決算発表で述べている。目標は「タップまたはワンクリック」で企業が自社のカタログをTwitterにアップロードできるようにすることだ。
- またTwitterは、チケット制のスペース(入場者が料金を支払うオーディオルーム)やニュースレター、特定のアカウントを対象としたチップジャーを実験的に導入している。同社はこれらの機能の累積的な価値について、スペースを利用して商品を販売し、ニュースレターをフォロワーに配信してイベントへの再参加を促すことができると述べている。「これらはすべての機能が相互に補強し合い、まったく新しい方法で消費者にリーチできるようにする」と、CEOのジャック・ドーシー氏は決算説明会で語っている。
[原文:How social media giants are playing e-commerce catch up]
Saqib Shah(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu