Shopify(ショッピファイ)のアグリゲーターであるオープンストア(OpenStore)は、発足から約2年が経過したいま、買収したブランドの規模をどのように拡大してきたか、その詳細を一部明かしはじめた。
同社は現在までに、アパレルから、スキンケア、電子機器まで、幅広い業界にわたって40以上のeコマース新興企業を買収してきた。そのひとつが、2022年3月に獲得した男性向けアスレジャーブランドのジャックアーチャー(Jack Archer)だ。オープンストアの消費者成長責任者を務めるアンドリュー・シラード氏は、同社がジャックアーチャーを獲得した当初、同ブランドの売上は約100万ドル(約1億4000万円)だったが、現在の売上は約1000万ドル(約14億円)に達している。
ジャックアーチャーの売上を増やすため、同社は主に、同ブランドの有料ソーシャル広告戦略の最適化、動画のクリエイティブの実験、自分にぴったりのサイズを見つける方法に関するウェブサイトへのメッセージ追加、いくつかの新商品の立ち上げに取り組んできたとシラード氏は明かした。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトです
Shopify(ショッピファイ)のアグリゲーターであるオープンストア(OpenStore)は、発足から約2年が経過したいま、買収したブランドの規模をどのように拡大してきたか、その詳細を一部明かしはじめた。
同社は現在までに、アパレルから、スキンケア、電子機器まで、幅広い業界にわたって40以上のeコマース新興企業を買収してきた。そのひとつが、2022年3月に獲得した男性向けアスレジャーブランドのジャックアーチャー(Jack Archer)だ。オープンストアの消費者成長責任者を務めるアンドリュー・シラード氏は、同社がジャックアーチャーを獲得した当初、同ブランドの売上は約100万ドル(約1億4000万円)だったが、現在の売上は約1000万ドル(約14億円)に達している。
Advertisement
ジャックアーチャーの売上を増やすため、同社は主に、同ブランドの有料ソーシャル広告戦略の最適化、動画のクリエイティブの実験、自分にぴったりのサイズを見つける方法に関するウェブサイトへのメッセージ追加、いくつかの新商品の立ち上げに取り組んできたとシラード氏は明かした。
技術を強みとしたオープンストア
オープンストアがこのように、アグリゲーターのモデルがどのように機能しているかを検証するようになったのは、インフレや、顧客獲得コストの高騰などの要因によって、D2Cブランドの運用がかつてないほど難しくなっているからだ。同社は現在、若い新興企業の規模拡大を支援するリソースをがあるという売り込みで、より多くの創業者に、自分たちに事業のかじ取りを任せるよう説得を試みている。しかし、同社がどれだけ多くの新興企業をうまく事業拡大させることができるかはまだわかっていない。
2021年に創設されたオープンストアは、共同創業者にキース・ラボイス氏やジャック・アブラハム氏のような連続投資家やエグゼクティブが名を連ねている。9月には評価額が9億7000万ドル(約1360億円)に達し、合計1億5000万ドル(約210億円)を超える自己資本を調達したことを報じられた。
オープンストアは差別化要因として訴求したのが、技術だ。ほかの多くのアグリゲーターはShopifyやAmazonのブランドを買収することに特化しているのに対し、同社はeコマース新興企業を成長させるオファーをほんの数日間で生成して締結できるアルゴリズムを開発した。これは、D2C創設者がほかのアグリゲーターではなくオープンストアを選ベば、妥当なオファーをすぐに受けられるという構想だ。
ジャックアーチャーの買収
しかし、それから同社が提供するものはさらに進化した。3月にはオープンストアドライブ(OpenStore Drive)という新商品を発表した。これによりブランドの創業者は、所有権を手放すことなしに、自社ブランドの日常業務をオープンストアに引き渡すことができるようになった。これは、多くの創業者が、自社のビジネスをアグリゲーター、特にオープンストアのようにいまだ実績が定まっていないアグリゲーターに事業を売却するつもりはないということを、暗黙の了解として認めたものだ。
シラード氏は3月、グローブコラボレーティブ(Grove Collaborative)からオープンストアに転職し、オープンストアのブランドのポートフォリオを増やすこと、そしてオープンストアのデータチームとともに「大手ブランドや、ジャックアーチャーのような成長中の小規模ブランドを洗練させるためのルールと商品を生み出すこと」が自分の使命だと宣言した。
オープンストアは、ジャックアーチャーを創業者のミゲール・ファカッセ氏から、非公開の金額で買い取った。インスタグラムでオープンストアについて知ったファカッセ氏がオープンストアにコンタクトを取た後、オープンストアは最終的に独自のアルゴリズムを使ってジャックアーチャーを評価し、買収した。ファカッセ氏は2021年にジャックアーチャーを立ち上げたばかりで、ジェットセッター(Jetsetter)パンツがもっとも売れている商品だった。「彼は、ハイエンドのアスレジャーの特徴を持ち、よりテクニカルなファブリックを使用し、あらゆる場面に適応できるようなブランドを作り上げる機会を見いだしたのだと思う」とシラード氏は話した。
メッセージングの見直し
オープンストアがジャックアーチャーを獲得してから最初に行ったのは、広告、特に動画クリエイティブのメッセージに関する実験だった。シラード氏によると、オープンストアはこれまで600以上の広告のイテレーションを行っており、実験の結果を踏まえ、ジャックアーチャーに最適なメッセージ形式を決定した。同時に、人々がこのブランドについて何が好きなのか、より多くのインサイトを得るためにレビューの調査も行った。ジャックアーチャーはこれまでの広告キャンペーンで、自社商品の技術的な優位性を示すことを重視してきたが、「この商品を着用するとどのように感じられるか、また、この商品を着用するとなぜ見た目に自信が持てるのか」といったメッセージがもっとも効果的であることを発見したという。
オープンストアがもうひとつ行ったのは、ウェブサイトにサイズガイドを追加し、各商品の着用感を詳しく説明することだ。たとえば、スリムパンツの着用感は、「椅子に座っていてもスリムだが、きつくない」といった具合だ。これによって、ジャックアーチャーのコンバージョン率が引き上げられ、返品が減ったと、シラード氏は述べる。これらは、アパレルブランドにとっては特に大きな問題となるものだ。また、オープンストアはジャックアーチャー用のアプリを立ち上げ、Tシャツやジェットセッターパンツの新色など、多くの新商品を紹介した。
しかし、シラード氏は、自分にとってもっとも重要だったのは、オープンストアがこれらすべての変更を9カ月以内で行うことができたという点だと話す。単独の創業者が独自でこれを行うことは困難だ。
「万能のプレイブックは存在しない」
だが、急速な変化にはそれなりの課題も伴う。ジャックアーチャーは90日間、ジェットセッターパンツのうちの25%のサイズが品切れになってしまったのだ。インスタグラムでは、商品を購入できないという顧客からの苦情が相次いだ。
この在庫切れによって「顧客体験が当社の標準を満たさないレベルに低下した」とシラード氏は語る。オープンストアは顧客からの不満に対応するためにAIへの投資を増やしており、その結果、顧客満足度を85%以上に保ちながら、ポートフォリオ全体にわたって顧客サービスの量を35%削減することができたと同氏は付け加えた。
しかし、インサイダーインテリジェンスで小売およびeコマースのプリンシパルアナリストを務めるアンドリュー・リプスマン氏は、オープンストアのようなアグリゲーターにとって鍵となる課題は、1ブランド以上の事業を拡大させることができると証明することだと語る。
「ここでの疑問は、オープンソースの秘伝のメソッドは、次の裁定取引を有利に進めるものなのだろうか、ということだ。多くの場合、いつでも有用で、かつ特定の見返りを生み出せるような万能のプレイブックは存在しない」と同氏は述べる。
顧客維持率を向上させられるか
たとえば、オープンストアのプレイブックは、セラシオ(Thrasio)や、パーチ(Perch)、ヘイデイ(Heyday)などのAmazonアグリゲーターがすでに行ってきたものとほぼ同じだと同氏は指摘する。これらのアグリゲーターの多くにとって、裁定取引の機会はAmazonでの広告にある。しかし、大手のCPG(消費者向けパッケージ商品)ブランドがAmazonでより多くの広告を出すようにり、それらのアグリゲーターがAmazon広告の効率性を見いだすことが困難になった。その結果、多くのアグリゲーターは、当初考えていたよりも、簡単に規模を拡大できる質の高いAmazonセラーが少ないことに気づき、買収するブランドの数を絞るようになってきた。
シラード氏は、オープンストアが多くのブランドを運営し始めてからまだ1年程度しか経っていないため、同社のプレイブックがどのようなものかを正確に把握するのに苦労していることを認めている。同社がさらに試行錯誤を始めていることのひとつは、複数のブランドから買い物をしてもらうことで、顧客維持率を向上させられるかどうかということだ。同社は最近、このクロスショッピングを勧めるためのオンラインストアを開設した。
「ブランドを増やし、より多くの機能を拡大する過程で、我々は多くを学んでいる」と、シラード氏は述べている。
[原文:How DTC aggregator OpenStore scaled one of its brands from $1M to $10M in sales]
Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via OpenStore