多くのブランドがAppleの iOS14 アップデートと格闘するなか、マーケターはFacebookの枠にとらわれない考え方を探っている。小売ブランドはダイレクトメールやGoogle検索のような広告媒体やTikTok、Snapchat、Pinterestのような実験的なプラットフォームに予算をシフトしている。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、小売業の変革の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
Appleの最近のiOSアップデートによりFacebookの広告パフォーマンスが低下し続けているため、D2Cブランドは新たなマーケティングチャネルの採用を急速に進めている。
多くのブランドが4月に公表されたAppleの最新のiOS14.5アップデートと格闘しているなか、マーケターはFacebookの枠にとらわれない考え方を探っている。小売ブランドは、今度はダイレクトメールやGoogle検索のような広告媒体や、TikTok、Snapchat、Pinterestのような実験的なプラットフォームに予算をシフトしている。
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マーケティング企業ベラルディウォン(Belardi Wong)のプレジデントのポーリー・ウォン氏は、これらの要因により、「より安定した」チャネルに広告費を割り当てる若いブランドが増えていると語る。「CPMの上昇とAppleのIDFAによりFacebookから遠ざかるブランドが増えている」とウォン氏は説明する。実際に、eコマースプラットフォームのスカイ(Skai)の8月のデータによると、ソーシャルメディアの1000クリックあたりのコスト(CPM)は2019年に比べて約12%上昇している。
今夏は、顧客獲得のためにFacebookとインスタグラムに長年頼ってきたスタートアップブランドにとって特に厳しいものとなった。今年のはじめに公開されたAppleのiOS 14のアップデートにより、iPhoneユーザーは、IDFA識別子をブロックすることで、アプリによるウェブ全体のアクティビティの追跡をオプトアウトできるようになった。Facebookは主要な広告プラットフォームのひとつであるため、アップデートによりブランド広告モデルは大きな影響を受けた。ウォン氏によると、同チャネルにおけるeコマースの前月比パフォーマンスは7月から8月にかけて急激に低下したという。ファッションブランドのアンタックイット(Untuckit)とビルケンシュトック(Birkenstock)を含む同エージェンシーの顧客は、コンバージョンが9%低下したことによりFacebookからの売上が5%低下したのを目の当たりにした。
一方、有料検索は、Facebookが抱える課題もなく、ほとんどのブランドにとって確かな業績を上げ続けていると、ウォン氏は語る。「(顧客には)新しいチャネルを試すために、予算の10%から20%を残すように助言している」とウォン氏は言う。
この進行中の問題に対して、万能の解決法はない。以下は、3つの異なるDTCブランドがiOSの変更に対応して、自社のFacebook広告戦略を適応させた方法である。
新しいチャネルとキャンペーンの試み
アパレルブランドであるアウターノウン(Outerknown)のチーフマーケティングオフィサーであるマックス・リシャンスキー氏によると、会社を2015年に立ち上げた際には、新たな顧客を見つけるためにFacebookにかなり頼っていたという。しかし、ブランドのモバイルトラフィックの大部分、約75%がiOSデバイスから来ているため、iOS14のアップデートによってアウターノウンの収益は大きく妨げられている。
Facebookにおけるブランドの広告の費用対効果(ROAS)は約25%下がっている。この減少に対処するため、アウターノウンはより多様なキャンペーンを、より積極的にFacebookで試そうとしているとリシャンスキー氏は語る。
アウターノウンは、eコマース広告ターゲティングベンダーであるクリテオ(Criteo)、Google検索、Googleショッピングのようなほかのチャネルにも広告費を割り当てることを検討している。また、これを機に物理的な床面積を拡大する。具体的には、今月中にカリフォルニア州マリブに新店舗をオープンする。
「今までダイレクトメール、ラジオ、ポッドキャストを軽く試してきたが、これからはそれらを強化する」とリシャンスキー氏は言う。「トップオブファネルトラフィックのためにPinterestも試している」。とはいえ、リシャンスキー氏によると、アトリビューションがどんどん不明確になってきているため、これらの試みは「段階的」に行っているという。「誰もが売上を自分の手柄にしようとしている」。
Facebookが不安定になったためブランドは「居心地の良い場所から飛び出す」ことを強いられているものの、リシャンスキー氏によるとFacebookは依然としてアウターノウンのデジタル部門のかなりの部分を占めるという。「結局のところ、コンバージョン率はほかのプラットフォームよりも何年も進んでいる」とリシャンスキー氏は話す。
適応への模索
女性ファッションブランドであるフランシスヴァレンタイン(Frances Valentine)のeコマース担当VPであるベスティ・シール氏は、ブランド認知のためにはダイレクトメール、コネクテッドTV、YouTubeへの投資を増やし、「Pinterestにも少し」投資しているという。
卸売り中心のブランドとしてはじまった同ブランドは、Facebookとインスタグラムを使ってD2Cビジネスを成長させてきた。「今夏はFacebookの役割とは何か考え直させられるような衝撃的な低下があった」とシール氏は言う。同氏によると、特にFacebook広告のコストダウンを活用した昨年と比べてROASが低下することはある程度予想していたという。「今でも良い結果は出ているが、新たな顧客を獲得する新しい方法を探している」と同氏は話す。
シール氏によると、同ブランドは、Facebookでは自社が所有するデータを用いてより的確に顧客をターゲティングするためにキャンペーンや画像を微調整しているという。たとえば、最新の広告は、顧客が最近カートに追加した特定のカテゴリーやアイテムに基づいて顧客をターゲティングしている。
一方で、実店舗もまた別の主要な投資先である。シール氏によると、実店舗はブランドロイヤルティに貢献しているという。同社は最近4店舗目となる実店舗をヒューストンにオープンした。「最近ロイヤルティプログラムにSMSマーケティングを取り入れた。これはビジネスの大きな柱となってきている」とシール氏は言う。
Facebookの力に立ち向かう
一方、美容ブランドであるドーラッシェズ(Doe Lashes)は新しいデジタルチャネルを試すことに焦点をあてている。創設者であるジェーソン・ウォン氏によると、同社は若い顧客を獲得するためにインスタグラムのリールやYouTubeショートを試しているという。「Pinterest、Snapchat、Discord(ディスコード)も試しており、そこにブランドを中心としたコミュニティを構築しようとしている」と同氏は語る。
ウォン氏は、ブランドのデジタルマーケティング予算の大部分をオーガニックコンテンツに割いていると言う。現在、ドーラッシェズのデジタル広告予算の内訳は、Facebookが25%、Googleが25%、TikTokが10%、Pinterestが10%、Snapchatが10%であり、残りはオーガニックコンテンツの作成である。
どのブランドにも合うような特定のやり方があるわけではないが、「Facebookのオーディエンスと関連性を持ち続けるために画像やキャンペーンを微調整している」とウォン氏は話す。「たとえば、インスタグラムでは面白いコンテンツが好評なため、コメディタッチの寸劇を作っている」。その一方で、同プラットフォームはいまだにリールにおける広告を許可していないため、よりオーガニックなフォーマットになっていると同氏は語る。
ウォン氏によると、マーケティングチャネルを多様化させることは長期的には優れた戦略ではあるが、Facebookの広告が長年にわたり行ってきたように顧客をコンバージョンできるようになるのはまだまだ先のことだという。どんな良いものでも同じだが、Facebookもまた飽和状態となり高価になりすぎている。「しかし、我々は勝てるところで戦わなければならない」。
[原文:How 3 DTC brands are reallocating their advertising spend after Apple’s iOS 14 update]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)