カジュアルアパレルの ホリスター (Hollister)はブラックフライデーの11月26日、Snapchatでショッピングができる拡張現実のホリデーマーケットプレイスを開始した。コカコーラ、プライム・ビデオ、アンダーアーマー、ベライゾン、ウォルマートとともに、Snapバーチャルストアを提供している。
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カジュアルアパレルブランドのホリスター(Hollister)は、今年のブラックフライデーである11月26日、Snapchatでショッピングが可能な拡張現実のホリデーマーケットプレイスを開始した。
ホリスターはコカ・コーラ(Coca-Cola)、プライム・ビデオ(Prime Video)、アンダーアーマー(Under Armour)、ベライゾン(Verizon)、ウォルマート(Walmart)とともに、ホリデーシーズン向けのSnapバーチャルストアを提供している。このマーケットプレイスはブラックフライデーに開始され、年末まで継続される。ホリスターは、同社の3ブランドのうちホリスター(Hollister)とソーシャルツーリスト(Social Tourist)の2つのブランドから、快適性に特化したアパレルとギフトのセレクションを、現代的なコンビニエンスストアのような外観のショップで販売している。
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ティーン層にアプローチ
Snapは、ユーザーがSnapchatの写真や動画に適用できる3D効果やオブジェクト、キャラクター、変身などの一連の機能であるARレンズが1日に60億回も使用されていると述べており、ホリスターはこのプラットフォームでアクティブな10代のユーザー層にアピールしたいと考えている。SnapはARコマースを試すブランドを集めることに成功したが、多くのブランドは依然として消費者をこのテクノロジーに引き寄せる方法を見出す必要がある。具体的にはアパレルにおいてARのユースケースは依然として初期段階で、多くのブランドは、たとえば顧客にARでの衣服の試着を試させる方法を生み出すことができていない。
ARによるコマースはSnapにおいてますます優先されるようになってきており、アクティブな広告主は前四半期比でも前年比でも増加している。しかし、このプラットフォームは業績予想については下回っている。同社はその理由のひとつとして、最近のiOS 14のプライバシーポリシーについての懸念を挙げている。コマースの統合への注力を強めているにもかかわらず、Snapの経営陣は、最新の決算発表におけるアプリ内取引の具体的な情報を公表していない。
ホリスターは2000年に、親会社のアバクロンビー&フィッチ(Abercrombie and Fitch)のもとで、サーフィンをイメージしたティーン向けブランドとして設立された。506の実店舗は、主に米国、アジア、南アメリカ、欧州全域のモールに出店している。
同社は長年にわたり、若い顧客層との関係を維持しようと試みてきた。2008年にホリスターは関連サブブランドのギリーヒックス(Gilly Hicks)をリリースし、2019年には、ホリスターのショップ・イン・ショップでブランドを再構築し、ポップアップコンセプトで若い消費者のトレンドへの関心に応えた。そして今年、ホリスターは第2のサブブランドであるソーシャルツーリスト(Social Tourist)のために、Z世代のソーシャルメディア・インフルエンサーであるチャーリー・ダミリオ氏とディキシー・ダミリオ氏の姉妹と提携した。
Snapとの数々の提携
ホリスターのブランドマーケテイング戦略担当シニアディレクターを務めるジャシー・スコーラー氏は、Snapとの提携について、ホリスターによる「コマース主導型AR」への最初の試みと表現している。
スコーラー氏は次のように述べている。「当社は、顧客とつながる新しい方法、つまり、顧客が時間を過ごしている場所や、買い物の行動がどのように進化しているかに常に追従していくことを考えている。そのため、ARのイノベーションには大きな期待を寄せている。この技術は、ソーシャルを新しい店頭として、そして商品を見つけて購入する新しい方法としてとらえる(10代の)若者たちの考え方との相性が非常にいい」。
ホリスターは、2016年にプラットフォーム上で春休みライブのテイクオーバーを後援したことや、2018年にビットモジ(Bitmoji)のファッションラインをリリースするなど、この数年間でSnapと数多くの提携を結んできた。「当社の顧客はSnapchatに多くの時間を費やしている」とスコーラー氏は述べている。
今回のARエクスペリエンスでは、「モダンでエッジの効いた」コンビニエンスストアの外観を模したオンライン店舗で、ホリスターとソーシャルツーリストのラウンジウェアやパーティウエア、ギフトなどが紹介されているとスコーラー氏は説明する。たとえばコンビニエンスストアの冷蔵庫に似たバーチャルガラスケース内に商品が陳列され、同社のアパレル製品の「手にとって、すぐ買える」特長を強調している。
ホリデーマーケットでは、参加するすべてのブランドの店舗が展示されており、Snapレンズ・カルーセルや、Snapレンズ・エクスプローラー・フォー・ユー・ページ、および各参加ブランドのSnapchatプロフィールでプロモーションされる。消費者がいずれかのブランドの店舗で商品を購入しようとした場合、Snapはアプリ内での決済の支援を行う。
ARコマースに期待するブランドたち
Snapは最近になって拡張現実への投資を倍増し、ARアセット作成スタジオ、AR代理店、ARクリエイターとブランドをつなぐマーケットプレイスを展開している。
コンプレックス(Complex)は、今月はじめのコンプレックスコン(ComplexCon)イベントで、このテクノロジーを使って、IRL(現実世界)の商品発売をオンラインでシミュレートしたが、近日のホリデーマーケットではほかのブランドも同様に、このプラットフォームでクリエイティブな手法を採用するだろう。コカ・コーラもSnapのテクノロジーを使用して、モールでのサンタとの交流イベントを再現し、これにコカ・コーラブランド独自の要素を付け加えた。一方ベライゾンは消費者向けの宝探しイベントを開催する。消費者が制限時間内に宝を見つけると、電話、ゲーム、音楽テクノロジーで割引を受けられるというものだ。
「SnapchatのARレンズが当社コミュニティで1日60億回以上も再生されるようになったことで、1年のなかでも重要なこの時期に、各ブランドがARプラットフォームを取り入れるようになったことは非常に期待できる」と、Snapの米国広告主ソリューション担当バイスプレジデントのルーク・カリス氏はメールで述べた。
アパレルでのAR導入には複雑な課題が
Snapは、Snapchatを毎日使用するユーザーは3億600万人、毎月使用するユーザーは5億人にのぼると報告している。同社は、ユーザーが1日に平均30回アプリを開くと語る。さらに、毎日使用するアクティブなユーザー数は、4四半期続けて前年比で20%以上も増加している。しかし、米モダンリテールと対談した専門家たちは、ARが売上を推進する能力については懐疑的であった。
イーマーケター(eMarketer)のeコマースアナリストであるアンドリュー・リスプマン氏は以前に、「ARに関する過大な宣伝」があったものの、多くのユースケースは特定の製品カテゴリにのみ適用可能な「特別な例」にすぎないと、米モダンリテールに語った。
特にアパレルにおいて、ARは困難を極める可能性がある。アルタ(Ulta)などのブランドは拡張現実によるお試しを使用し、ウェイフェア(Wayfair)は自宅での家具の視覚化を行っているが、サイズのガイダンスを示したり、服を着たときにどのように見えるかを正確に示したりするのはもっと複雑である。実際にホリスターとSnapとのパートナーシップではバーチャル試着は行わず、商品を探すのと、店舗で商品を見る体験を自宅でシミュレートすることに集中している。
スコーラー氏は次のように述べている。「我々は、当社ブランドのAR化を開始したばかりだ。当社は現在、試着、アバター、仮想現実空間で数多くのものを探求しているが、まだ提供する準備が整っているとはいえない。当社の顧客がこの空間へさらに移動するようになるのはいつかという点については、注目しておく必要がある」。
[原文:Hollister is partnering with Snap for an augmented reality holiday marketplace]
Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Hollister x Snap