デジタル注文の激増と、全国的な労働力不足から、従来型の店内注文に対応するためだけでも従業員は不足している。さらにこれらのレストランは、利用者にアプリから注文を行うよう働きかけているため、一部のレストラン従業員は現在、次々と舞い込む、際限のない要求に対応し続けることが不可能に近いと感じるようになっている。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります
モバイルオーダーの使用が激増するにつれ、ファストフードの従業員は店頭とオンラインの注文を両立させるため苦闘している。
ファストフードチェーンは2021年に大盛況で、特にデジタル注文がその成長を推進した。チポトレ(Chipotle)は2021年の第3四半期に過去最高の売上と収益の成長を達成。デジタル注文はチポトレの2021年における注文の50%を占め、2018年の第4四半期にわずか12%だったところから急増した。一方マクドナルド(McDonald’s)では2021年前半のデジタル売上は、前年同期間から70%増加し、総売上は80億ドル(約9120億円)に達した。しかし、レストランのエグゼクティブがモバイルオーダーによる新しい収益源を歓迎している一方で、レストランの労働者は苦闘を強いられている。
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デジタル注文の激増と、全国的な労働力不足から、従来型の店内注文に対応するためだけでも従業員は不足している。さらにこれらのレストランは、利用者にアプリから注文を行うよう働きかけているため、一部のレストラン従業員は現在、次々と舞い込む、際限のない要求に対応し続けることが不可能に近いと感じるようになっている。
米モダンリテールは、マクドナルド、スターバックス(Starbucks)、ワッタバーガー(Whataburger)、ソニック(Sonic)の現行の従業員および元従業員4人から、匿名を条件に聞き取りを行った。これらの企業のいずれも、米モダンリテールからのコメントの要請に返答していない。これらの従業員はデジタルの急増にともなう在庫切れ、店舗面積の最適化不足、忙しい夕食の時間帯における膨大なオンライン注文などの課題について語ってくれた。回答の一部には明瞭化と簡素化のため編集を加えている。
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「余分に働いても給料は増えなかった」
スターバックスの多くの店舗はパンデミックのあいだは閉店していたため、多くの人々が特定の店舗で注文し始めた。私の店がその1つだった。稀に4人の従業員が勤務していたとき、私はレジを担当し、温めとドリップのあいだに入ってくるオンライン注文のすべてに対処しながら、店に行列を作っている20人の顧客、店の外にいる10人、その列に加わるさらに大勢の顧客にも対応する必要があった。私はレジで忙殺されており、バーも同じ状態だった。バーにはモバイルオーダー用に専用の機械があったが、その機械の注文も20分から40分遅延していた。私たちはそこでできる限りのことを行ったが、目に入るのはイライラして落ち着かない様子の顧客たちの顔だった。
2021年と2020年のモバイルオーダーは従業員にとって地獄だった。ストレスが多く過労で、余分に働いても給料は増えなかった。毎日の膨大なモバイルオーダーをどのように処理したかって? しなかった。いや、正確にはできなかった。私たちは労働者として、モバイルオーダーが30分遅れになっても中止する権限はなかった。機械がシャットダウンした瞬間から、会社は支払いボーナスの資金を失うことになるからだ。
– トロントにあるスターバックス店舗の元従業員、8月に退職
「商品の在庫切れや機械の故障は最悪だ」
私たちは通常、店頭での注文10回ごとに、オンラインで1回の注文を受けている。1時間に60から70の注文を受ける日には、これが重大な問題となる。ほとんどのオンライン注文は大量で、しかもキャンセルの方法がない。システムは依然としてこれらのオンライン注文を優先するため、私たちは忙殺され、疲れきるまで働かなければいけなかった。このとき、ドライブスルー時間はしばしば約10分に達する。顧客に私たちの声が聞こえなくなると、私たちはお互いに、ボスに、そして自分たち自身に叫ぶことになった。この3時間から4時間の悪夢をやわらげる方法は何もない。私たちがここで全員ある種の友人関係なのは幸いだ。そうでなければ、私たちは誰も正気でいられないだろう。
商品の在庫切れや機械の故障は最悪だ。注文に対応できなくなると、私たちは顧客が到着するまで待ってから、かわりに何を注文するかをたずねなくてはならない。運が良ければ、顧客は多少失望するが、ほかの商品に切り替えることに合意してくれる。しかし運が悪かった場合の例として、私は顧客に対して希望する種類のシェークを提供できなかったためにソーダを投げつけられたことがあり、その顧客は腹を立ててクルマで帰って行った。誰もができる限りの努力を行っており、バナナが品切れであっても顧客個人に対する侮辱ではないということを忘れているのではないかと感じることが多い。
– ニュージャージーにあるソニックの従業員
「今までとは別の注文方法に対応する機器が店舗にはない」
私たちは何度も、顧客が間違った店舗に注文を行った例を見てきた。そして多くの場合、顧客はその間違いを認めることを拒否する。このような顧客は、自分たちが間違った店舗に注文したことは認めるが、「この店でも注文に応じられるだろう?」というような態度をとる。私たちには、その顧客が別の街の店舗に何を注文したのか知る方法がない。このような場合、顧客はさらに長く待つことになり、不満を持ち、会社について悪いレビューを残す。その悪い評判は結局私たちに帰ってくる。
もうひとつの大きな問題は、このオンライン注文機能が追加された時期だ。この機能はパンデミックの前に追加され、パンデミックが起きたときにうまく適応できた。しかし、今までとは別の注文方法に対応する機器が店舗にはない。ロビー用にグリルやハンバーガーを作るテーブルがあり、ドライブスルー用のものもある。しかし、オンライン注文用のものはない。ラッシュ時間に店内が満席で、ドライブスルーレーンの両方に長い列ができているとき、さらに6つの注文が来ても、それに対応できる容量はない。
– テキサスにあるワッタバーガーの従業員
「膨大な量の注文は、チェックしなくてもオンライン注文だと、だいたいわかった」
会社からのメッセージは、作業はこれまでと変化しないということだった。しかし、実際には私たちの業務は急に4倍にも増加した。オンラインでの注文は、ドライブスルーでの注文とは大きく異なっていた。膨大な量の注文は、チェックしなくてもオンライン注文だとだいたいわかった。私は調理、行列の対応、テーブルでの作業を担当していた。そこで突然、オンラインでハンバーガー20個の注文が来る。これは冗談で言っているのではない。
私たちは基本的に、画面に表示された順序で注文を処理するので、店外のドライブスルーから注文を受けた後で、画面にオンライン注文が表示されると、そのオンライン注文の対応に私たちが没頭しているあいだ、何台もの車が注文したまま待たされるのが常だった。
– ケンタッキーにあるマクドナルドの元従業員、6月に退職
[原文:‘Hell for employees’: Fast food workers say mobile orders are getting harder to keep up with]
Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)