スニーカー新興企業のアトムズ(Atoms)は、新商品のためにシューズ分野以外のパートナーとのコラボレーションを続けている。
今年前半に初の子ども向けシューズを発売した同社は11月9日、ユーチューバーでテックのレビューを行うマルケス・ブラウンリー氏と新しいスニーカーを発売した。このモデルはM251.1と呼ばれ、アトムズとブラウンリー氏が4月に共同開発したモデルの第2弾である。顧客はM251.1をアトムズのウェブサイトで189ドル(約2万8700円)注文できる。
2019年に創設されたアトムズは、シドラ・カーシム氏とワカス・アリ氏の夫婦が高品質で快適なスニーカーを限定数量で製造したいと考えたことから生まれたものだ。初期にサプライチェーンの課題があったものの、2022年の第4四半期には黒字化を達成し、、現在ではスニーカーヘッズ(スニーカー愛好家)のコミュニティ以外にもリーチを広げる商品を開発するために必要な資金を獲得した。ブラウンリー氏との協業以外にも、Netflixの人気リアリティ番組「クィア・アイ(Queer Eye)」のスターであるタン・フランス氏や、人権財団(Human Rights Foundation)とのコラボシューズも発売した。また、漫画家のライザ・ドネリー氏、ドキュメンタリー作家のニューヨーク・ニコ氏、美術家のアエロシン=ノウユアライツキャンプ(Know Your Rights Camp)にマスクを送り、ブラックライブズマター(Black Lives Matter)のデモ参加者を支援した。続きを読む
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
スニーカー新興企業のアトムズ(Atoms)は、新商品のためにシューズ分野以外のパートナーとのコラボレーションを続けている。
今年前半に初の子ども向けシューズを発売した同社は11月9日、ユーチューバーでテックのレビューを行うマルケス・ブラウンリー氏と新しいスニーカーを発売した。このモデルはM251.1と呼ばれ、アトムズとブラウンリー氏が4月に共同開発したモデルの第2弾である。顧客はM251.1をアトムズのウェブサイトで189ドル(約2万8700円)注文できる。
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2019年に創設されたアトムズは、シドラ・カーシム氏とワカス・アリ氏の夫婦が高品質で快適なスニーカーを限定数量で製造したいと考えたことから生まれたものだ。初期にサプライチェーンの課題があったものの、2022年の第4四半期には黒字化を達成し、、現在ではスニーカーヘッズ(スニーカー愛好家)のコミュニティ以外にもリーチを広げる商品を開発するために必要な資金を獲得した。ブラウンリー氏との協業以外にも、Netflixの人気リアリティ番組「クィア・アイ(Queer Eye)」のスターであるタン・フランス氏や、人権財団(Human Rights Foundation)とのコラボシューズも発売した。また、漫画家のライザ・ドネリー氏、ドキュメンタリー作家のニューヨーク・ニコ氏、美術家のアエロシン=ノウユアライツキャンプ(Know Your Rights Camp)にマスクを送り、ブラックライブズマター(Black Lives Matter)のデモ参加者を支援した。
コラボパートナーとの「価値観の一致」を重視
アトムズとブラウンリー氏(職業的にはMKBHDの別名でも知られている)とのパートナーシップは、今日までもっとも長く続いているものだ。同ブランドは2020年、ユーチューバーであるブラウンリー氏がアトムズに注文したいくつかのフェイスマスクを称賛したことがきっかけで、同氏に接触した。両者は共同でスニーカーを製造することになり、シューズのデザインや材質について、ブラウンリー氏が対等な立場で発言できるようにした。最終的に完成したモデル「M251」はアトムズ初のハイトップで、開発に2年以上を要した。この名前は、ブラウンリー氏の最初のテック動画の長さが2分51秒だったことに由来する。
M251シューズは限定版で、4月にアトムズのウェブサイトに登場してから48時間以内に売り切れた。この需要を受けて、アトムズは第2弾を受注生産した。同社が製造したM251シューズは全部で8500足ほどだ。新しいモデルのM251.1は限定版ではないのだが、その大きな理由は最初の顧客の反応にある。今回は、ユーザーからのフィードバックに基づいて多少の変更が加えられている。たとえば、新しいシューズは防水性と耐候性に優れている。アトムズとブラウンリー氏のパートナーシップは2025年前半まで続き、来年はさらに2つのモデルのシューズを生産する予定だ。
アトムズのパートナーシップの一部は、すでにアトムズの商品を使用している有名人とのものだ。たとえばタン・フランス氏は、アトムズのシューズを履いている姿が写真に撮られていた。しかし、カーシム氏は、アトムズにとってもっとも重要なのは、その人の「価値観との一致」だと米モダンリテールに語った。アトムズは自社の少量生産の商品が「単なるスタイルではなく、どのような価値を与えるかが重要だ」とし、それと同様に、テック、カルチャー、アドボカシー、あるいはそれ以外の分野であれ、自分たちの貢献が 「社会に何かを与えるもの」と考えるパートナーと協力したいと同氏は語っている。この理由から、アトムズはパートナーシップの要請をいくつかを見送ったこともあるという。
たとえば、アトムズの「会社紹介」ページ用に動画を制作したドキュメンタリー作家でソーシャルメディアのパーソナリティのニューヨーク・ニコ氏との協業のように、実際の商品を伴わないパートナーシップであっても、アトムズはファッション分野以外の人々との仕事を熱望している。「人々がアートやクリエイティビティを通じて自己を表現する様子をアトムズのブランドから発信したいと強く思っている。課題は、ライフスタイルブランドとして、それをどのようにシューズを通じて行うかだと思う。そこで、こうした人々とパートナーシップを組むことで、我々はそのような視点から自分たちを表現しようとしているのだ」とカーシム氏は述べている。
話題性やブランド認知度を高める
今日ではアトムズのように、異業種との提携やコラボレーションによって新しいオーディエンスとつながろうとしているブランドは多い。顧客獲得コストが上昇していることが、その傾向に拍車をかけている。たとえばパックサン(Pacsun)やプーマ(Puma)はF1(Formula One)とアパレルコレクションを発売し、ユニクロ(Uniqlo)や、バンズ(Vans)、スウォッチ(Swatch)は全世界の美術館とコレクションを発表した。NFL(ナショナルフットボールリーグ)はファッションブランドからヒントを得て、オーボ(OVO)やキス(Kith)と限定版のストリートウェアをリリースした。
予期しないコラボレーションは、正しく行えば「注目を集めることができる」と、サカーナ(Circana)のファッションおよびアクセサリーアナリストを務めるベス・ゴールドシュタイン氏は米モダンリテールに語った。特に、異業種のブランドにとって、コラボレーションは「消費者の生活に複数の面から触れるというアプローチで、消費者とつながることができる」と、同氏は付け加えている。
しかし、ブランドが理想のパートナーについて考えるときには考慮すべき点がいくつかあると、ゴールドシュタイン氏は述べる。たとえば、そのパートナーシップによってブランドに新しい目が向けられるのか、それとも、既存の顧客に新しい何かがもたらされるのか、といったことだ。コラボレーションは売上につながる可能性はあるが、「ほとんどのコラボレーションの目的は数量ではない。これらは、話題性やブランド認知度を高めることを目的としたブランドのマーケティング戦略の一環で、これもまた重要なものだ」と、同氏は述べている。
アトムズは、数量と過剰生産を重要視しないようにしているが、認知のことは念頭に置いている。アトムズがまだ新しく小規模なブランドであるため、特定のカテゴリーのパートナーシップに「全力投入」することは望んでいないと、カーシム氏は説明する。その代わりに、「我々にとって、パーソナリティや人、その人が支持するものについて、一致しているものがあるなら、パートナーシップを結びにいく」と、同氏は述べている。
[原文:From YouTubers to artists, sneaker startup Atoms is ramping up its partnerships]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Atoms