スニーカー小売の フットロッカー は、衣服カテゴリへの進出に打って出た。第2四半期は、同社のアパレル事業が、前年比で2ケタ成長した。これにより同社は独自のプライベートブランドとコレクションを立ち上げるとともに、買収によって自社のアパレル事業をさらに成長させようとしている。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、小売業の変革の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
スニーカー小売大手のフットロッカー(Foot Locker)は、ロイヤルティプログラムのデータ、超地域密着型のマーチャンダイジング、戦略的な買収を活用して、アパレル分野での拡大を目指している。
フットロッカーは、スニーカーを主力商品としているが、衣料品にも成長の兆しが見られることから、衣服カテゴリへの進出に打って出た。第2四半期の収支報告で、フットロッカーは同社のアパレル事業が、メンズ、ウィメンズ、キッズの各分野において20%を超える伸びを示し、前年比で2ケタ成長したと述べた。これにより同社は独自のプライベートブランドとコレクションを立ち上げるとともに、買収によって自社のアパレル事業をさらに成長させようとしている。
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フットロッカーはホリデーシーズンに向け、約3年ぶりとなるプライベートブランド、LCKRをリリースする。このアパレルラインはパーカーやスウェットパンツなどの快適なベーシックアイテムを特徴とする。これらはパンデミックのあいだに多くの人々にとってステイホームの必須アイテムとなったものだ。LCKRは、フットロッカーがアパレル製品の拡充に向けて行っている取り組みのひとつとなる。そのほかにも、カプセルコレクションや、コミュニティを重視したキュレーション、データに基づいたマーチャンダイジングなどの取り組みを行っていると、シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのブライオン・ミルバーン氏は米モダンリテールに語っている。
「当社は戦略を検討した結果、プライベートラインを立ち上げるには今が最良の時期だと判断した。当社はさまざまな顧客にアピールし、より本物でインクルーシブでありたいと考えている」と氏は述べている。
自社ブランドとコレクションへの特化
フットロッカーは過去1年間にわたり、アパレルの販売を拡大してきた。第2四半期には、同社初の女性クリエイティブディレクターであるメロディー・エサニ氏による、バスケットボールのコートにインスパイアされたカプセルコレクションをリリースした。同社は現在、氏のコレクションをさらにふたつ、年末にリリースするため準備している。ミルバーン氏は、エサニ氏のデビュー作が「信じられないほどの売れ行き」だったといい、「彼女は当社にとって非常に重要な人材だ」と付け加えている。
フットロッカーは、10月20日に最初にリリースしたLCKRコレクションを強化することも考えている。このプライベートブランドを拡大し、女性向けの各種商品を第4四半期に提供するという計画だ。同社のアパレルへの注力は、子会社であるイーストベイ(Eastbay)によるプライベートブランドのリリースに続くもので、これは親会社の各種のバナー広告やオンラインを通して販売される。
フットロッカーは、独自のアパレル事業を展開するにあたり、衣服品の販売戦略を作り上げるため消費者インサイトを活用しようとしている。これには、同社のロイヤルティプログラム、FLXに登録している2500万人の会員から得られたデータが含まれる。同社は以前、これらの会員は、非会員よりも平均注文金額が約10%高く、合計購入額は75%を上回る額で多いと公表している。同社は社内データとともに、FLXからも大量の情報を得ていると、ミルバーン氏は述べている。さらに同社はスニーカーヘッズ(スニーカー狂)たちとのフォーラムを主催し、彼らから最新の商品について専門的なフィードバックを得ている。
ガートナー(Gartner)の小売アナリストであるチェルシー・グロス氏によれば、自社ブランドは小売業界においては実績のある方式である。「これはマージンをめぐる戦略だ。小売業者はマーケティングにそれほど多くの額を支払わず、サプライチェーン全体をコントロールできる」。最初の印象から、グロス氏はLCKRの商品範囲は「深みに欠けている」が、価格設定は適切かもしれないとしている。カーゴパンツやトラックジャケットも含むこれらの商品の価格は、40ドル(約4560円)から75ドル(約8550円)である。
同社のサードパーティへの依存は、長期的にプライベートブランド商品を開発するための妨げとはならないだろうと、グロス氏は付け加えている。ライバルのJDスポーツ(JD Sports)は、女性向けのピンクソーダ(Pink Soda)のトレーニングウェアや、男性向けのサプライアンドデマンド(Supply & Demand)など、傘下に数十の自社ブランドを持っている。同社は2019年にほかの小売業者へ卸売りを開始し、それが「少数のアスレチックベンダーに過剰に依存しない」ための助けになっていると主張している。
買収と提携による成長
フットロッカーの買収と新興企業への出資は、アパレル分野活性化にもひと役買っている。同社は8月、ショッピングモール外やアジアへの進出を拡大するため、ふたつの靴の小売業者を11億ドル(約1254億円)で買収する計画を発表した。そのうちのひとつは、日本のスニーカー小売のアトモス(Atmos)で、売上の約60%をオンラインで生み出している。これによりフットロッカーは、ストリートウエアを支配している地域のマーケットについて、さらに多くのデータにアクセス可能になる。アトモスは女性向けに、定評のあるブランドと新興ブランドの両方を含むアパレルとフットウェアのプレミアム商品範囲を提供する。フットロッカーは同時にシューズ小売のWSSも買収し、ヒスパニック系顧客に焦点を当てて強力なビジネスを構築したと付け加えている。
フットロッカーは、ストリートウェアの再販マーケットプレイスであるゴート(GOAT)やライブストリーミングショッピングアプリのNTWRKなどの新興企業に投資することで、それぞれトレンドとなっているスニーカーを知るきっかけになり、ブランド立ち上げの助けにもなると、ミルバーン氏は語っている。同社はNTWRKが一部の商品キャンペーンをプロデュースできるよう支援しているとも氏は付け加えている。
近い将来には、主要なベンダーであるナイキ(Nike)やアディダス(Adidas)、プーマ(Puma)、バンズ(Vans)と引き続き協力し、季節的な観点からザ・ノース・フェイス(The North Face)などのアウトドア向けアパレルブランドと提携することが計画されている。また、フットロッカーは新しいカテゴリに進出を拡大するため、下着メーカーのエシカ(Ethika)のような新しいブランドも取り入れている。
「現代社会はカジュアル化してきた」とミルバーン氏は言う。日常生活の多くの側面にコンフォートウェアの影響が忍び寄っていることを指摘する。「私たちの使命は、消費者の興味を引き、ベーシックであれ、より最新のトレンドに合わせた商品であれ、新しい提供をすることだ」。
[原文:Foot Locker’s renewed focus on apparel is driven by data]
Saqib Shah(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Foot Locker