後払い( BNPL )サービスがeコマース全体で当たり前のものとなった今、広告が新しい収益源として期待されている。後払い決済サービス大手のアフターペイは先週、アフターペイ・アドという独自の広告ネットワークを開始すると発表した。各ブランドはアフターペイのアプリ内の広告を購入し、キャンペーンや商品を宣伝できる。
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後払い(BNPL)サービスがeコマース全体で当たり前のものとなった今、広告が新しい収益源として期待されている。
後払い決済サービス大手のアフターペイ(Afterpay)は先週、アフターペイ・アド(Afterpay Ads)という独自の広告ネットワークを開始すると発表した。各ブランドはアフターペイのアプリ内の広告を購入し、キャンペーンや商品を宣伝できる。広告がビジネスの次の段階で重要になると予想しているBNPL会社は、アフターペイだけではない。クラーナ(Klarna)などほかの会社も同様のサービスへの投資を始めている。広告、より広くいえばブランドの有料配信は、ひっそりと、より大きな収益上の問題を解決する一手になりつつある。
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Amazon広告をお手本に
BNPLは過去数年間に急成長したが、その後、急速に資金を失いつつある。アファーム(Affirm)とアフターペイはどちらも、前の四半期にそれぞれ2億4700万ドル(約270億円)と1億5900万ドル(約175億円)の損失を計上した。また、クラーナは2018年までは収益率が高かったが、海外への展開にともなって多くの資金を焦げつかせている。これらの会社にとって、広告はよそでの損失を回収する手段であると同時に、自社のサービスを利用する小売業者により多くの金額を支払ってもらう手段でもある。BNPLが自社の広告ネットワークへのアクセスをサービスに組み込む準備はできている。
現在のところ、広告プログラムを公式に開始したのはアフターペイとクラーナの2社である。しかし、ほかの会社も参入を検討している。セズル(Sezzle)は、アプリ内広告システムの構築を「検討中」であると、米モダンリテール(Modern Retail)にメールで回答した。また、アファームは、ブランドが同社のアプリ内で特別な扱いを受けることができる有料サービスをすでに提供していると述べた。
この動きは実績のあるシナリオに従ったものだ。クラーナのCMOであるデビッド・サンドストローム氏は、Amazonが自社のショッピングアプリを強力な広告プラットフォームに転換し、今ではAmazonのビジネスでもっとも利益を上げている部門のひとつに成長させたことに言及して、「私たちは、Amazonが何をしたかを見てきた」と述べている。前四半期にAmazonの広告販売額は前年比で87%近くも増大し、79億ドル(約8700億円)に達した。
クラーナは、すでに1年以上にわたって、自社のネットワークであるクラーナ・メディア(Klarna Media)を通じてアプリ内での有料配信をテストしている。サンドストローム氏は、ブランドが購入した従来型の広告枠を並べて表示する形から、アプリ内のライブショッピングチャンネルの枠をブランドに有料で提供する(または、ブランドで独自のチャンネルを作成している場合、そのチャンネルを消費者にプロモーションする)形まであると述べている。
同氏は次のようにも述べている。「(Amazonと同様に)当社のおもな顧客は、購入の意思がある消費者だ。結果的に当社は、その消費者に適した関連商品を予測できるだけの十分なデータを持つようになった」(クラーナの米国での顧客数は約2000万人)。
消費者が発見する場として
BNPLにとって、広告への移行は特に驚くべきことではない。広告の販売は、何らかの形で、すべての主要なショッピングアプリにおいて既定の方針となっている。ドラッグストア大手のウォルグリーン(Walgreens)、買い物代行サービス会社のインスタカート(Instacart)、デリバリーサービス会社のゴーパフ(GoPuff)など、さまざまな会社が自社のアプリ内広告ネットワークの構築に投資しているが、これは、消費者からの需要が増えている配送など利益率が低いサービスを支える手段とみなしているためである。
しかし、BNPLが今広告に移行している理由のひとつは、その方式で採算がとれる十分な数の消費者を獲得したためだ。アフターペイは、クラーナと同様に、米国でこれまで2000万人の消費者が同社のサービスにサインアップしたと米モダンリテールに語っている。
アフターペイ北米のゼネラルマネージャーであるザーヒル・ホージャ氏は、米モダンリテールへのメールで次のように語っている。「アフターペイの広告ソリューションで、アフターペイプラットフォームの収益化は一歩前進する」。ホージャ氏は、買い物客がBNPLアプリを「単なる支払手段ではなく、ブランドや商品を見つける場でもある」とみなしはじめており、これによってBNPLはブランドのマーケティングチャンネルとしての地位を固めつつあるとしている。
優良顧客の確保がカギ
ほとんどのBNPLでは、原則として、消費者はBNPLにサービスの対価を支払っていない。現在のところ、クラーナなど多くのBNPLでは、小売業者がサービスのコストを支払っているためだ。BNPLが請求する加盟店手数料は通常、購入価格の2%から8%だが、これは多くの場合、収益を上げるには不十分だ。特に、大規模な取引でそういえるのだが、アファームは先週、AmazonのBNPLサービスになることを公表した。投資会社のベインキャピタルベンチャーズ(Bain Capital Ventures)のパートナーであるマット・ハリス氏は、この取引はおそらく、何よりもユーザー数を増やすためのものだろうとプロトコル(Protocol)に語った。
つまり、BNPLは小売業者により多く支払ってもらう方法を見つけなければならない。サンドストローム氏は次のように述べている。「誰かが財布を出す必要がある。問題は、誰が出すかだ。(小売業者からのフィードバックに基づいた見解として)別の収益源が必要で、そのひとつが広告だと考えている」。
BNPLは広告というツールを使用することで、損失を出しながら獲得した消費者すべてを収益化し、自社が提供する広範なサービスにアクセスするために、小売業者により多く支払ってもらえるようになる。同氏は次のように述べている。「BNPL各社は特に、ブランドが自社と提携する理由をさらに生み出す必要がある」。
サンドストローム氏は、この手法、すなわちクラーナが小売業者の提携パートナーとなり、提携の見返りにサービスを提供することが、BNPLの未来になるだろうと述べている。同氏は、クラーナのアプリに、小売業者からのライブストリームコンテンツ、商品が値下げされたときのプッシュ通知、荷物の追跡など、顧客向けのサービスを多数組み込もうと目論んでいる。
また、ロイヤルティの高いユーザーをアプリで育てられれば、小売業者はその顧客ベースにアクセスするために喜んで料金を支払うだろうとも語っている。「大きな会社に対抗するにはどうしたらいいか。今から1年か2年後に、どこにチャンスがあるか。それを知り、小売業者としてビジネスを成長させるために、クラーナがパートナーとして必要になることを目指している」。
[原文:Feeling a profit crunch, buy now pay later services bet on advertising]
Michael Waters(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)