アメリカで最大級のCBD商品卸売業者を自称するグローブ(Grove)は、Amazon などのオンラインマーケットプレイスでおもに販売されている商品を買収するための専門部署を立ち上げようとしている。同社の商品のほとんどは店舗への卸売りで、大麻の販売制限があるため、Amazonでは堅調な売上を示していない。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、小売業の変革の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
アメリカで最大級のCBD商品卸売業者を自称するグローブ(Grove)は、Amazonなどのオンラインマーケットプレイスでおもに販売されている商品を買収するための専門部署を立ち上げようとしている。
グローブはCBDブランドのGRNと、CBD入り商品のラインを保有する親会社である。同社の商品のほとんどは店舗への卸売りで、大麻の販売制限があるため、Amazonでは堅調な売上を示していない。しかし同社は現在、健康・ウェルネス分野において事業売却に関心があるAmazonネイティブブランドのためのスピンオフサイト、ユペクシ(Upexi)を立ち上げている。
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Amazonアグリゲーターへの関心が高まっている
このため同社は、自社のビジネスモデルにマーケットプレイスに特化した買収戦略を新たに取り入れている。実績のあるブランドでこのような戦略を実行しているものは今のところ多くはない。もっとも目立つ例として、ドイツを拠点とするベルリンブランドグループ(Berlin Brands Groups)は自社商品を10年以上にわたって製作してきたあとで、この1月にマーケットプレイスに特化した買収戦略のため3億200万ドル(約344億円)を出資した。Amazonで長く活動しているセラーのいくつか、たとえばeBayとAmazonで2009年から販売を行ってきた消費者向け商品メーカーのゴジャ(Goja)はAmazonの小規模なブランドを静かに買い上げてきた。ここにグローブが加わることは、Amazonのアグリゲーターというビジネスモデルへの関心が広がりつつあることを裏付けている。しかし、個々のマーケットプレイス製品を買収しようとする既存企業の数には限界がある。
グローブのCMOであるネイサン・スタブセス氏は、同社は昨年からAmazonアグリゲーターに注意を払っていたと述べている。しかしスタブセス氏は、「マーケットプレイスの企業の多くは単なるD2Cで、当社が保有していたような垂直統合が欠けていた」と語っている。
ロールアップ式の企業は過去1年以上にわたって増加しており、ベンチャーキャピタルとして合計で100億ドル(約1兆1400億円)近くの収益を上げてきた。セラシオ(Thrasio)などの新興企業がけん引力を持ちつつあるが、これらの企業は第一にポートフォリオ企業として機能している。つまり、買収を開始するまでは自社独自のブランドを保有していなかった。現在は、すでにブランドを確立した企業も含め、少数の企業が自社の商品の品揃えを拡充する方法として買収を検討している状況だ。
既存インフラを活用するグローブの場合
グローブは小さな企業で、保有している4つのブランドすべてで報告された2020年の売上は2410万ドル(約27億5000万円)にすぎない。同社の主要な商品はGRNのCBDグミだ。同社の戦略は毎年少数のマーケットプレイスのブランドを買収することだとスタブセス氏は語る。氏によれば、グローブは毎年10件前後の買収を行い、グローブが構築したインフラを使用してそのブランドを成長させるという。
スタブセス氏は、グローブがほかの商品のプロモーションに使用しているマーケティング会社や広告代理店との既存の関係や、ネバダ州にある製造施設などの同社の物理的なインフラを強調している。スタブセス氏は、グローブが自社工場で製造可能な商品を買収したときは、それらの運用を内製化すると述べている(ただし、同社は自社施設の機器ではまだ扱えない商品の買収にも興味を持っているとも氏は語っている)。氏は次のように語っている。「当社の施設と当社の能力によって、商品の生産、製造、市場への投入をより迅速に行うことができる。すべてを自社で行うことで、納期の面で優位に立つことができる」。
これまでのグローブの商品はおもに大麻関係のものだが、同社はそれに代わって健康・ウェルネス分野の全般にわたり、Amazonネイティブのブランドの買収を目指していると氏は語る。氏は、グローブが買収するブランドの規模に明確な制限は設けていないとするが、「当社が締結を目指す契約の多くは、300万から500万ドル(約3億4200万円から5億7000万円)の範囲のものだ」と米モダンリテールに語っている。
このような行動を進めているブランドはグローブだけではない。最初は暖炉を販売していたソロブランド(Solo Brands)は、アパレルメーカーやカヤックメーカーなどほかの3つのブランドを買収し、D2Cの親会社に転向してから株式公開を申請した。一方でゴジャは、2020年に13のブランドを買収したと語っている。
いまだ例外的な存在
しかし依然として、これらのブランドは例外的な存在であることに変わりはない。eコマース投資銀行のグローバルワイヤードアドバイザーズ(Global Wired Advisors)のマネージングパートナーであるジョー・ホッグ氏は、ベルリンブランドグループを除けば、買収活動のほとんどは、ブランドではなく、ロールアップ式の企業に集中していると述べている。これはおもに、規模と適合の問題が混在していることが理由だ。一方で、成功しているブランドは、大きな収益を上げている商品の買収にしか興味を示さない可能性が高い。「一般に(これらの企業は)規模が大きくなり、Amazonの小規模なブランドは自社の収支決算にとって無意味とみなすようになる」と氏は述べている。
また、アグリゲーターは多種多様なブランドを買収することを希望しているが、Amazonにおける買収を希望している既存のブランドは、企業の商品ポートフォリオに含まれるほかの商品との適合性が必要となる可能性が高い。これらの企業は「完全に適合する商品のみを買収する」とホッグ氏は述べている。
例外もいくつか存在する。グローバルワイヤードアドバイザーズは、マーケットプレイスネイティブのブランドを、アグリゲーターやプライベートエクイティのプレイヤーに加え、大手の消費材向けメーカーにも売り込んでいると氏は語る。その結果、取引に成功することもある。「Amazonをベースとするビジネスを組み入れる方法はあると思うが、よほど適合性が高く、極めて緊密でなければならないだろう」と氏は述べている。
言い換えれば、Amazonセラーの買収を調査している実績のある企業の数は、増え続けてはいるものの、当面はそれほど多くならないだろう。当面は、「現在のAmazonをベースとする企業の最高の買い手は、アグリゲーター買い取り会社となっていくだろう」とホッグ氏は述べている。「これらの企業は明らかに、若いAmazonブランドにとって最高の買い手になるだろう」。
[原文:Established brands are eyeing Amazon seller acquisitions]
Michael Waters(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)